『母性』

湊かなえさんの作品。

自殺未遂をした少女とその母親。

「愛能う限り」という言葉がとても印象に残っている。

最後の方になって母親が娘の名前をやっと言った場面は、少しぞっとした。母は母で娘のためにと思ってしていることが、娘にとっては違った風に捉えられている。人によって見方が異なる怖さを感じた。母性というのは本当にあるのかないのか分からない。母親から受けた愛がその人の人生に大きく影響を与えるのは間違いないと感じた。


印象に残っている文

「わたしはこの世に何も残せなくても、わたしの子どもは何か残すことになるかもしれない。その子が残せなくても、その子が産んだ子が何かを残すことになるかもしれない。でもそうなるのは、わたしという存在があったから。」

例えば、母の頭の中に大切な一枚の絵があるとする。それは、わたしの肖像画ではなく、庭に花の咲き乱れる美しい家で、幸せそうに過ごす親子三人を描いたものではないだろうか。

高校生の母親、と一括りにするのは難しく、電話一本を例に挙げても、体調不良による欠席の連絡といった簡単なことから、学校は我が子を根本的に改造してくれる特殊組織だと勘違いしているような的はずれなことまで、母親から語られる用件は様々だ。

言っていればよかったのだ。父も、わたしも。母にどれほど感謝し、愛しているのかを。

時は流れる。流れるからこそ、母への思いも変化する。それでも愛を求めようとするのが娘であり、自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか。

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