『海の底』

有川ひろさんの作品。

自衛隊三部作の一つ。


巨大化したエビの大群が現れ、人を襲い始める。潜水艦に逃げ込んだ2人の海上自衛隊員と、13人の子どもたちの物語。


艦長が殺されてしまうシーンのインパクトがかなり強かった。

町内会でのヒエラルキーや、緊急事態の際の生理の問題についても触れられていた。

圭介がメディアの取材を受けたことに対して、「余計なことをしないでくれ」と思ってしまった。

事件後に時を経て、夏木と望が再会したシーンがとても良かった。


印象に残っている文

「何だこれ!」誰も答えてくれるわけでもないのにそれを言ってしまうのは人の常らしい。

ベストを尽くした結果死んでも叩く奴がいる。それが自衛隊に務めるということだ。

近年の百円均一ショップの定着は潜水艦乗りに快哉を叫ばれている。ろくに風呂に入れない、洗濯もできない密閉空間の男所帯という環境で溜め込まれた下着や着替えは一種の生物兵器だ。

「大人の荷物なんか子供は気にしなくていいんだ。俺らだってお前らの頃は子供だったぞ」

名誉の負傷などとは言っても、現実問題として公傷者のハンデは同僚が分担することになる。苛酷な職場で同僚に負担を掛けることに耐えきれず、自ら辞す者が多いのだ。公傷者の精神的なハンデを克服できる制度は未だない。

ーー子供であるということは一体何て楽なんだろう。馬鹿なことをしてもその理由を追及されない。子供は馬鹿なんだから仕方ないと馬鹿であることを前提に馬鹿な行いを許されるのだ。

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