『他人の顔』

安部公房の作品。


自分の顔が事故で失われてしまうと考えただけで恐ろしい。顔というのは自分らしさの大部分を占めているものだと考える。

「ブラックジャック」で顔を変える手術をする話を思い出した。

事故によって妻からの愛を失ってしまうというのは辛いと思った。


印象に残っている文

まったくの話、この世のすべての人間が、一瞬にして眼球を失うか、光の存在を忘れてしまうかしてくれたら、どんなにか素晴らしいことだろう。

しかし、現に光がある以上、闇はせいぜい期限つきの執行猶予にしかすぎない。

はじめて一人で汽車に乗ることを許された子供のように、期待と不安で、胸をときめかせていた。

人はしばしば、自由の貯蔵を人生の目的であるかのように振舞うが、けっきょく自由の慢性的欠乏からくる錯覚にすぎないのではあるまいか。

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