『4TEEN』

石田衣良さんの作品。4年前に読んだことがあったが、面白かったのでもう一度読んでみた。

月島に住む14歳の少年4人の話である。主人公のテツロー、頭の良いジュン、太っているダイ、病気持ちのナオト。4人とその周りで友情や性、家庭の問題などが起こる。

中学生の頃にしか分からなかった感覚が文章で表現されていて、石田さんはすごいと思った。

「大華火の夜に」と「空色の自転車」がとても印象的だ。「大華火の夜に」では、ナオトの行動に心を動かされた。自分の望む形で最期を迎えられて良かったと思う。「空色の自転車」では、ダイを取り戻すために3人が立ち向かうシーンがかっこいいと思った。4人の中ではジュンが一番好きだ。ジュンのように周りから頼られるような人になりたいと思った。

印象に残っている文

ぼくたち三人の若さを三分の一ずつ集めて、プレゼントできればいいのに。そうすればぼくも中学生をすぐにやめられる。

東京に住んでいると、今日は新宿、明日は原宿なんていうふうに遊んでいると思うかもしれないけど、実際の東京っ子は地元と近くの繁華街くらいしかいかない。

でも彼女の目は嫌いな親戚の見舞いにでもきているように、ひどくつまらなそうだった。

「私たちってあの月みたいなものかもしれないね。太陽と同じで光っているのは大人たち。私たちはおこぼれをもらっているだけ。自分ではなにもできないし、なにも決められない。」

たいていの中学生は将来に不安をもっている。受験戦争だってあるし、実社会なんて牢獄のようなところに決まっている。

梅雨にはいる直前の一週間は、空のサーモスタットが壊れてしまったようにいきなり暑くなることがある。

つぎの日必ず会うに決まってる友人とさよならをするのは、ちょっとセンチメンタルで悪くないものだ。

誰かが真剣になると、こんなふうに「マジすぎるのはカッコ悪い」回路が働いて話の調子はいつものバランスをとりもどすのだった。流されかけたナオトへの冗談の形をした救命ボートだ。

うちのクラスは一日中薄い氷のうえで授業を受けているようだった。誰かの不用意なひと言で教室の底が抜けて、全員が氷の海に沈むかもしれない。

「なんだか繁華街っておもしろいよな。みんな、自分はいかに自由に時間がつかえて、どれだけ金もちかってことを見せびらかしてるみたいだ」

つぎの日にまた会うに決まっている友達にさよならをいうのは、いつだってなかなかたのしいものだ。

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