『新選組の料理人』

門井慶喜さんの作品。

新選組の炊き出しに並んだ鉢四郎は、原田左之助に誘われて新選組のまかない専門になる。


江戸時代も現代も富を持つ者が転売して儲けるという構造は、変わらないのだと感じた。

鉢四郎が妻のおこうの消息を聞いた時、相当ショックだったと思う。

龍馬と近藤勇の面会、斎藤一と原田左之助の一対一の場面は、読んでいてとても緊張した。


印象に残っている文

新選組をあくまでも最強の警察組織であらしめたい土方と、その近年とみに高まる名声を利して国事にくいこんで行きたい近藤と。どちらが正しいというよりは、これはもう、性分というより仕方がなかった。

「わ、私はこれまで、いなかに生まれ、四男に生まれて、世間から注意を向けられたことなく……」「新選組は、みんなそうさ」

近藤勇、土方歳三のような幹部はともかく、平隊士となると鉢四郎の知るかぎり誰も妻帯していない。隊規で禁じられているわけではないのだが、しかし新選組というのは元来が、次男、三男以下の集団である。長男はたいてい継ぐべき家があり、命大事にされるから、こんな修羅場には来ないのだ。

婚姻というものに必要なのは、当人どうしの合意ではない。当人の父親どうしの合意なのである。

すうっと目じりの切れあがった、冬の満月をおもわせる肌。


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