『シュンスケ!』

門井慶喜さんの作品。

伊藤博文が利助、俊輔と呼ばれていた頃からの物語である。


来原良蔵という人物のことを全然知らなかった。来原がいつでも裸足で過ごす理由がとてもかっこいいと感じた。

俊輔が攘夷決行の夜に女と性行為をしているのが面白かった。

伊藤俊輔と呼ばれていた頃の話が中心となっているため、伊藤博文となってからの話も見たいと一読者として感じた。

印象に残っている文

「うんではない。武士の返事は『はい』だぞ」

この世には長い目で見れば運のいいやつと悪いやつの二種類がいて、それはもう太線を引いたように截然とわかれているのだ。ふだんの仕事ぶりとか、愛嬌とか、世間智とか、背すじののばしかたとかが微妙に作用するのだと思われるが、いずれにしろ、運のいいやつには未来がある。悪いやつにはない。若者ならなおさらだ。

「あせる気持ちはわかりますが、伊藤君、組織というのは海とおなじです。むりに泳いだら波にのまれる。そもそも手付の制度は若者の教育のためにあるわけではありません。ここでじっくり本を読むことです」

人間をしんから疑うにはあまりにも陽気で、あまりにも楽天的でありすぎる。よくもわるくも人間を信頼しすぎるのが伊藤俊輔という男だった。

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