『英雄の条件』

本城雅人さんの作品。

大リーグ球団のチームドクターが失踪し、彼の家から一冊のノートが見つかった。過去にメジャーリーグで活躍して引退した日本人選手に、禁止薬物使用の疑惑が持ち上がる。


野球はドーピングの抜き打ち検査の頻度が少ないということが本文の記述に書かれていた。

今はどのくらいの頻度で行われているのか気になった。

1回使用してしまったら、もう元には戻れなくなると感じた。

ドーピングに対してここまで切り込んだ作品は、本城さんにしか書けないと感じた。


印象に残っている文

クライメイトゲート、スパイゲート、ベンガジゲート……一九七二年のウォーターゲート事件以降、アメリカメディアは話題性のある政治事件には〈ゲート〉とつける。

「武藤さん、あんた三振制って知ってるか」「ああ」武藤は小さく頷いた。二〇〇六年に設けられたメジャーリーグのドーピング違反者への罰則規定で、一度目は五十日の出場停止だったが今は八十日に延長された。二度目は一年間、そして三度目で永久追放になる。

「エイミーはEPOって知ってるか」「エドガーのことよね」

エリスロポエチンという赤血球促進剤のことだ。作家のエドガー・アラン・ポーから選手たちは陰でそう呼んでいたそうだ。

ーーアスリートの体は、一度興奮状態に達すると、なかなか元には戻らない。優秀なマラソンランナーは完走したらしばらく眠れなくなるからと、そのままプールにいって全身の熱を取る。

彼のように複数回の脳震盪を経験した者は「セカンドインパクト症候群」と呼ばれ、次第に脳循環障害が進んでいく。手足の震え、パーキンソン症候群や認知機能障害や記憶障害などアルツハイマー病と類似した症状が出る危険性が高く、自殺者も後を絶たない。

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