『マルセイユ・ルーレット』


本城雅人さんの作品。

タイトルはフランスの名手ジダンが得意としたフェイントの名前である。
試合中に八百長をするよう命令された日本人サッカー選手と、八百長を阻止するために奔走するユーロポール。

サッカーの八百長と聞くと、わざとミスをすることやオウンゴールをすることといったイメージがある。しかし、八百長の中でも「得点数が◯点以上か予想する」「前半◯分にボールがラインの外に出るかどうか」といったことも賭けの対象になることを知った。
一部の選手の八百長のために試合が無効になったら、何も知らずに一生懸命頑張っている選手がとても可哀想だと思った。
ラストの展開は衝撃だった。

印象に残っている文

「ヨーロッパのブックメーカーでは試合中止で賭けは不成立になるが、アジアのブックメーカーは試合が中止された段階でのスコアで払い戻しになる。」

だがサッカーという競技は難しい体勢でのシュートより、簡単な局面の方が外してしまうことがままある。余裕という「間」ができることで、リズムが崩れてしまうのだ。

だが人間というのは危険の中にいる時より、そこから脱した後に命が惜しくなるものだ。

「戦争ってそういうものでしょ。奪うものは領土だけじゃない。民族の誇りと血を奪うのよ。そのために利用されるのが女性よ」

「人間の動きというのは、一連の動きが繋がって記憶に刻み込まれている。その動きを一つずつ切って頭で考えようとすると、体は動かなくなる」

「だから一部分だけを修正しようとしてもそれは逆効果だ。修正したければ一連の動きから蹴った後のボールの行方まで繋げてイメージしろ。そうすりゃ、元の動きに戻れる」

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