『笑うマトリョーシカ』

早見和真さんの作品。

松山の名門高校に通う清家と鈴木は、やがて政治家と秘書の関係になった。

清家の自叙伝の発売の際にインタビューを行った記者の道上は、ふとしたことをきっかけに清家の過去を調べ始める。


表には出てこないが、今まであらゆる政治家のブレーンがいた中で、その人たちの話を聞いてみたいと思った。

清家が生徒会長選挙で勝ち上がる場面がとても面白かった。

ヒトラーの演説指南役としてハヌッセンという人物がいたことを、初めて知った。

ラストが衝撃だった。


印象に残っている文

「未来を思い描くこと。大いなる理想を抱いて、でも絶対に予断を持たず、常に未来を想像し続けること。それが政治家という人間に課せられた唯一の仕事」

「私たちもう十九歳ですよ。あまりサブカルっぽいことを言いたくないですけど、若くして死んでる人たちがいっぱいいるじゃないですか。ジム・モリソンに、ジャニス・ジョプリン、ジミヘン、バスキアだって二十七歳で死んでるんです。あの人たちもまだ十九歳ってのんびりしていたんですかね。みんな自分が生きた証を残したくて、焦ってたんじゃないですかね。私たちだって、あと八年しか残されてないかもしれないじゃないですか」

「はっ! 学生の分際で名刺持ってるようなヤツの方が信頼できねぇよ」「良かったです。僕も学生の分際で名刺を持っている人間を信用していないので」

本題を明かす前に質問をぶつけてくるのは、記者という人種特有のやり方だ。

出世する政治家に必要な特性を一つだけ挙げろと言われたら、地盤や金ではなく、カリスマ性や政策立案能力でもなくて、私は「体力」と答えるだろう。

和田島は政治家を演じている。もっと言えば、和田島芳孝という人間を演じている。それもカメラの前に立つ他の政治家たちのように演じようとして演じているのではなく、和田島は演じていないと生きていけない。人生のどこかのタイミングで、ひょっとしたら生まれながらにして笑顔の仮面をかぶっている。

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