『木暮荘物語』

三浦しをんさんの作品。


木暮荘を中心に物語が展開していく。

「柱の実り」「穴」「嘘の味」が個人的に面白かった。


「柱の実り」は、ホームに生えた謎のキノコから出会う男女の物語。

前田さんが3年後戻ってきたときのお話を読みたいと思った。


「穴」は、折原一さんの作品にも出てきそうなお話だった。

赤の他人から生活を覗かれたら誰でも嫌だと思う。それでも許してくれる光子はとても寛大な心を持っているなと感じた。


「嘘の味」は、ニジコさんと並木の物語。

「嘘をついているときは砂の味。浮気をしているときは泥の味」がするというニジコ。

嘘がわかるというのは便利だとは思うが、それが食事に影響を及ぼすと考えると、嫌である。


この地上で一番きれいだと思う風景を、この部屋に残していこう。並木はきっと、そう思ったにちがいない。
取り残され、あぶれていく。しかたがない。それが年を取るということだ。
給食に苦手な酢豚が出たのだが、苦手だと先生に言うことができず、昼休みも教室に残っていつまでも銀色の食器を睨んでいる小学生みたいな顔だった。
男は花束をとおして、自身の力をアピールしようとする。金銭や自分の存在の大きさといったものを。でも女は、受け取った花束から相手の気づかいや対話の意志を読み取ろうとする。どれだけ自分の好みを知ってくれているか、どれだけ細やかな思いを注いでくれているかを。
彼女はきっと、俺が寝こけているまに、ひそかに簡単な化粧をして朝を迎えていたのだろう。男のまえでは少しでもきれいな姿でいたいという女心から。


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