『推し燃ゆ』


宇佐見りんさんの作品。宇佐見さんの作品は初めて読む。
作品の冒頭部が衝撃的だった。
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」

推しに愛情を注ぐ熱狂的なファンの物語だと思っていたが、思ったよりも暗い内容の話だった。推しが炎上したことで、主人公のあかりの生活はどんどん変化していく。高校を中退して、アルバイトを辞めて一人暮らしをするあかり。最後に綿棒を拾うシーンがとても印象的だった。

印象に残っている文

アイドルとのかかわり方は十人十色で、推しのすべての行動を信奉する人もいれば、善し悪しがわからないとファンとは言えないと批評する人もいる。推しを恋愛的に好きで作品には興味がない人、そういった感情はないが推しにリプライを送るなど積極的に触れ合う人、逆に作品だけが好きでスキャンダルなどに一切興味を示さない人、お金を使うことに集中する人、ファン同士の交流が好きな人。

愚問だった。理由なんてあるはずがない。存在が好きだから、顔、踊り、歌、口調、性格、身のこなし、推しにまつわる諸々が好きになってくる。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、の逆だ。

あたしは推しの存在を愛でること自体が幸せなわけで、それはそれで成立するんだからとやかく言わないでほしい。

父や、他の大人たちが言うことは、すべてわかり切っていることで、あたしがすでに何度も自分に問いかけたことだった。


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