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ADDressで家守をやってみて体験した変化

新型コロナウイルス感染が拡大する中で再発令された緊急事態宣言下で迎えた3連休初日。多拠点コリビングサービス「ADDress」で二子玉川邸滞在中の新規会員さんと近所の蕎麦屋「宇奈根 山中」(※画像下)に、閉店間際の13時過ぎに暖簾をくぐりました。

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マスク姿のマスターと奥さんが忙しなくカウンターで調理をし、先客が隅の席に陣取って、贅沢な空間の中で静かに蕎麦を啜っていました。普段の何気ない一コマでしたが、お互いに気を配りながらの会話。それでもなお、居心地の良さを感じながらランチを楽しみ、お店を後に。

「来て良かった。おいしかった」と会員さん。この非常事態の最中ではありますが、ほんのちょっとの楽しい時間を共有できたことに嬉しさを感じました。

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ADDress二子玉川邸の家守を兼務して、かれこれ1年半が過ぎました。これまで延べ300名以上の会員を受け入れてきました。学生からシニア層まで、年齢も職種や属性、家族構成もさまざまな人たちです。

シェアハウス経験ゼロ&初めて住む地域での家守業

私自身は二子玉川邸で住み込み家守をする直前は、東急目黒線「不動前」駅近くの品川区のマンションに約5年ほど住んでいました。シェアハウスも含めて家族や近しい人以外との共同生活をした経験が皆無だったので、正直なところ不安しかありませんでした。※画像下=二子玉川邸リビング

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自分自身がかなり細かい性格ということもあり、他人の行動が気になってストレスを感じるのではないか。他方、私自身が気づかぬうちに他人様へ迷惑をかけて、会員さんに愛想を尽かされ出て行かれてしまうのではないか。

そんな不安で頭の中がいっぱいでしたが、ADDressというサービスを立ち上げた以上、自ら経験することで学ばせてもらう良い機会になると自分に言い聞かせ、引っ越しを決意。これまで大きなトラブルも無く、来る人が皆良い人ばかりで、常に助けられながらの生活を送っています。幸せか?と問われれば、不動前での生活よりも何十倍も今が楽しい、と一択回答です。

ADDressは地域をよく知る方を「家守」として任命し、会員同士の交流のみならず、地域情報の発信や地域の人・モノ・コトを繋ぐ役目をお願いしています。地域コミュニティ・マネジャーという位置付けです。ADDressには、地域に根付いた家守の方々がほとんどで、その活動や対応に対して会員からも感謝や信頼の声が寄せられています。

反面、私は二子玉川邸の立地する世田谷エリアに住んだのは初めての経験で、地域に全く根付いていない人間でした。不動前の5年間の生活を振り返ってみても、「地域に根付いた人」ではなかったと思います。飲み歩いていたので、エリアの店舗やイベント情報については詳しくなりましたが、同じマンションに住む住民や近所の方々と親しくなることはありませんでした。

朝から晩まで働き詰めの仕事人間で、地元の人たちと交流する機会は無し。両隣の住民の名前すら分からない状況でした。都会の単身世帯なら、かつての私のような境遇の人がほとんどではないでしょうか。そんな自分が「家守」をやるわけですから、ただでさえ共同生活をしたことがないのに、いつまで続くか・・という心境でした。

1点だけ、私にとってラッキーだったのは、物件オーナーさんが近所に住んでいたこと。近隣住民への挨拶に同行してくれたり、地域のルールやマナーを教えてくれたりしました。
毎日の犬の散歩のついでに立ち寄って、庭木の手入れについても教えてくれました。時には一緒に草刈りをしたり、掃除をしたりしてくれます。

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家の管理(家事全般含む)は、不動前時代からやって来ていることなので慣れてはいましたが、地元についてさほど詳しくないのがネックでした。何とか地域の人と仲良くなって、いろんな情報を入手しなければ・・いや、入手して自分自身でも体験してみたい!体験しないと誰にも勧められない、というジレンマです。

東京での生活で初めて隣近所との交流が芽生える

そこで、趣味を生かして地元のランニングクラブに入りました。週末に多摩川沿いを走ります。現状はコロナの影響でなかなか参加ができないものの、入部当初は毎週走りに行きました。私の住まいを伝えると、「オーロールスミレっていうパン屋が美味しいよ。あそこは地元の人の行きつけの店舗」などという地元情報を教えてもらう度に、早速通い詰めました。恐らく「家守」をやっていなければ、そこまで関心を持って情報収集をしたり、地元の人と話そうとしたりすることもなかったかもしれません。

自分自身が確実に変化しているという実感が出てきました。

ある日、庭の手入れをしていると、近所の老紳士が通りがかりに声を掛けてきました。その時私は、隣の空き地が売りに出されることになり、仕切りとなっている柵に絡ませている植木を全て取り除く作業をしていたのです。オーナーさんが10年以上かけて育てられた植木の枝葉は立派なもので、剪定バサミでも容易に切ることができず苦戦していました。その老紳士は「俺が手伝ってやるよ!待ってろよ」と頼もしく宣言し、自宅から植木道具を持って来て、丸2日がかりで一緒に作業をしてくれたのです。大きなごみ収集用のビニール袋20個以上の植木でした。それらも「俺が処分してやるから」とリアカーに積んで回収してくれました。※画像下=庭の作業を手伝ってくれた近所の老紳士(この柵いっぱいに草木が絡まっていました)

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この植木作業を機に、外で会うと立ち話をするようになりました。しばらく勘違いされて、「奥さん!」と呼ばれ続けていましたが、この複雑なADDressのサービスについて少しずつ説明をすることで、「なーんだ、家族で住んでるんじゃないんかー!」と笑いながら、仕組みを理解してくれたものです。それ以来、気軽に挨拶を交わす関係になりました。こんな出会いは長年東京に住んで初めての経験でした。

ADDress会員に教わった地域情報とご縁の数々

家守として地域情報を収集しないと!という思いに駆られる生活でしたが、仕事もなかなか多忙で、1年目は満足に会員さんへ情報提供することができませんでした。むしろ、会員さんから教わることの方が多かったです。

冒頭で触れた近所の蕎麦屋さんも同様でした。家で自炊生活が中心だったこともあり、引っ越してきて1年近くも知らなかったお店です。ある日、会員さんから「私は蕎麦好きで各地の蕎麦を食べ歩いているけど、その中でも指折りのお店でした」というレビューを聞いて初めて知り、体験しに行ったという次第。確かに舌鼓を打つ名店で、蕎麦はもちろん天ぷらも美味で、それからというものは1週間に1度、足繁く通うようになりました。しかしながら、仕事の合間でささっと食べに行く程度で、ゆっくり会話をしながら味わう機会はありませんでした。

それがある日、マスターから「ADDressの桜井さんですよね?」と話し掛けられたことで、会話を交わすようになりました。これまで数え切れないほどADDress会員さんが入れ替わり立ち替わり食べに来ていたとのことで、彼らがADDressの話を地元の人たちに説明してくれていたのです。だから、お店の人はADDressについてとても詳しく、私が微に入り細に穿つ説明をせずとも、よくご存知でした。

本来であれば私が店舗でADDressの話をして会員さんに案内する、というのが定番ですが、その逆の体験をしたのです。会員さんから地元を教わるという初のパターン。このような事例をいくつか体験し、地元との交流にはさまざまな形があるものだなあと感嘆しました。

ADDress会員さんが繋いでくれる地元とのご縁。これは二子玉川邸に引っ越す時には、考えもしませんでした。おかげさまで、外に出て地元の人との気軽な交流に楽しみを感じるようになっています。※画像下=二子玉川邸すぐの多摩川土手

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ところで、二子玉川邸は多摩川が近いので、ランニングや散歩には最適な環境です。天気の良い日は毎朝走っていますが、近所の方々に「今日は何キロ走ったのー?」と遠くから声を掛けられることもしばしば。また、「こないだ土手ですれ違ったけど、真剣な顔で走ってるから話し掛けられなかったよー」と言われることも。ランニングコースとなっている「喜多見 氷川神社」では、毎朝100メートル以上の長い長い参道を綺麗に清掃している宮司や神職の方々がいます。彼らとも挨拶を交わすのが日課となりました。美しい神社で、お参りの度に心が一新されます。

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二子玉川邸には全国各地からADDress会員がやって来ます。特に立地柄、地方から東京への出張の際に来られる方が多数を占めます。ADDressは「#全国創生」を掲げているので、隣近所との交流が希薄になりがちな都市部の課題にも取り組んでいます。共同生活を通して、近隣に人が流れて交流が交わされる生活の中で、地域との距離感を縮めていきたいと思っています。私が実際に体験したように。

一方で、東京でもそう遠くない将来、地方が現在抱える課題に直面することになることは、人口動態予測を見ても明らかです。現に、二子玉川邸のある世田谷は、東京23区内の都心部ではありますが、以外にも空き家は5万戸もあり、都内で最多となっています。

都市の課題、地方の課題。空き家による治安の悪化で外部不経済に陥り、ますます人が離れていくような社会を変えたいという大きなビジョンを描いていますが、家守の私に気付きと新鮮な体験を与えてくれるADDress会員さんとの当たり前の共同生活こそが、目標へ近づくための確実な一歩だということを改めて実感しました。

二子玉川邸の近隣には、美味しい店舗が住宅街に佇んでいますので、お越しの際はぜひ散策してみてください。ADDress二子玉川家守・桜井より。

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