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空気抵抗 -湿度-

まず湿度は高ければ高いほど、空気密度は軽くなり空気抵抗の減少=打球は飛びやすくなる。
とは言え湿度0%と湿度100%の差では約91.44cmほどの差しかないので空気中を飛ぶ打球の飛距離としてはあまり差はないのかもしれませんが。
ただしボールやバットはこの湿度の影響を受けやすいのである。
それは湿度の高い環境で長時間放置していると、水分を吸い込み重たくなり反発力も低下してしまうからである。
野球選手が試合前の練習の時にバットを干している光景もそれが理由であり
MLBでは、全球場で同一条件の加湿処理で管理し品質管理されている。(※1)
ただ湿度に関しては、湿度が高い状態では打球の伸びは1mも変わらない。

しかし湿度はピッチングにおいてとても重要となる。

さて前回の記事で紹介させていただいたクアーズフィールド。ここでノーノーを成し遂げた投手が一人だけいる。それがあの野茂英雄選手である。

クアーズフィールドは元々高地で空気が薄いためスタミナの消耗が早く、球場が広くない上にボールも飛びやすい「打者天国」として知られており野茂選手自身も相性は良くなかった。(過去僅か2回の登板経験ながら防御率11.17)
ノーノーを達成した9月17日、雨で開始が2時間遅れたため試合は21時過ぎに開始しその時点で気温は5度まで下がっていた。
真上から振り下ろすオーバースローから平均球速約138-145km/h、最速約152.9km/hの伸びのあるフォーシームと約124-132km/hのフォークボールを武器としていたが、この日途中3回からこのトルネードを封印しセットポジションに終始した投球でノーヒッターを達成した。

どうして野茂選手がこの日ノーヒッターを達成することが出来たのか。理由の一つがここにあるのではないかと思う。

湿度が高いとボールが指にかかるようになる。リリースポイントでしっかり指にかかるためボールにスピンを加えやすくなり、ストレートなら伸びのある球を、変化球ならブレーキの効いた鋭い変化をつけやすくなるためこれらのスピンをかける系のボールの威力はアップしやすい。

寒い日や乾燥した日にはチェンジアップやフォークなどは上手く抜けて落ちやすく、逆に湿度が高い日にはスライダーやカーブなどのスピンをかけるボールが活きる。この日の野茂英雄選手のように気候によって変化球の使い分けをすることはとても大事な事なのかもしれない。

(勿論、自分のボールを毎回きっちり投げ込みたい!という人はロージンバッグを使い常に指先の状態を一定に保つことも大切ですけどね笑)

※1……野茂英雄選手がノーヒッターを達成した日、ボールが湿っていたことにヒントを得てロッキーズは2002年に無許可で加湿器を使用し加湿処理したことによってMLB機構の調査を受けた。その後、2007年シーズンより試合球はすべての球場で同条件で管理するようになり今に至る。

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