2023年税制改正 生前贈与の課税範囲拡大へ
この度、与党が2023年度税制改正大綱をまとました。
不動産関連税制は以下など。
相続空家の譲渡所得から3000万円を控除する特例を2027年までに延長、適用要件も緩和
新型コロナ対応の固定資産税軽減措置を終了
マンションの相続税評価のあり方を2023年にも見直す
昨年の「住宅ローン減税の改悪」のようなインパクトのある見直しはありませんでした。
しかし、個人的には今回の税制改正大綱の中で注目したいものが2つあります。
1つ目が投資分野である「新NISA」での大幅な改革。
2つ目が相続税・贈与税分野の「生前贈与の課税範囲見直し」です。
今回は、この2つのうち2つ目の「生前贈与の課税範囲見直し」についてまとめました。
住宅購入検討者の方々は非常に関心のある内容ではないでしょうか。
相続税・贈与税の改正ポイント
相続税の対象に加わる生前贈与を相続開始前7年間に延長
相続税精算課税制度の利用時に年110万円までの贈与が非課税に
教育資金の一括贈与の非課税を2026年3月末
結婚・子育ての一括贈与の非課税を2025年3月末まで延長 など
この改正ポイントのうち、特に①と②について詳しく解説していきます。
①生前贈与課税期間が3年から7年に拡大
今までの制度では、相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象でした。
しかし、今回の改正によってこの3年以内という加算対象期間が7年以内となります。
この改正は過度な「駆け込み節税」を抑止することが目的だと思われます。
ただし、延長される4年分の総額から100万円を控除できる措置も設けられました。
相続時精算課税制度の見直し
「相続時精算課税制度」の現行制度は、父母・祖父母から子・孫への贈与が合計2500万円以内であれば何度贈与したとしても贈与税は非課税として取り扱う、というものです。
この制度を利用する場合は、少額の贈与であっても税務署への申告が必要となります。
また、2500万円以内で実行された贈与は相続時に相続財産として加算し、相続税の申告をしなければいけません。
さらに、「相続時精算課税制度」を一度選択すると通常の「年間110万円までの基礎控除」に選択し直すことはできなくなります。
このように現行制度は使い勝手の悪さがありました。
しかし、今回の改正によってかなり使い勝手が良くなります。
改正後に「相続時精算課税制度」を利用すると年110万円まで申告不要となり、非課税枠内での利用を強く促す制度となります。
これらの改正は、2024年1月1日以降の贈与・相続に関して適用される見込みです。
今回の制度改正をきっかけに生前贈与を検討してみては?
今回の政府の税制改正の目論みは、「お金のある親・祖父母から早期に子・孫へ資金の振り替えをし、実体経済に生きたお金を循環させたい」ということです。
この改正をきっかけに、70歳以上の親を持つ方などは一度「生前贈与」についての検討をしてみると良いかもしれません。
私は不動産業界に25年在籍しているのですが、実は20年前の私は「親からの贈与」はどちらかというと反対の立場でした。
しかし、ここ15年前あたりからは住宅購入するお客様には「なるべく親に相談して生前贈与を貰ってみたらどうですか?」とアドバイスしています。
経験上、この話を持ち掛けた約5割のお客様はそれなりの援助を受けており、お客様自身も喜んでくださっています。
日本ではここ数十年、世代間の資産格差が拡大し続けていますよね。
以下のグラフから分かるように高齢者世帯に資産が偏っており、若年層は貯蓄などが出来づらい状態です。
ここ数十年、日本の賃金は増加していませんし、貯蓄したところで利子はゼロ同然。
さらに、所得税や社会保障費の増加などがあり、給与手取りは減少しています。
こういった世相変化も鑑みると、「親からの生前贈与」は親・子お互いにとって有効な財産移転ではないでしょうか。
ただし、相続税対策としてこの「生前贈与」や「相続時精算課税制度」を利用ない方法が良い場合もあります。
例えば、子世帯が住宅取得する際に親が相続税課税される世帯などはこの特例を適用せず、贈与予定分をあえて親名義で子の住宅取得の建物名義持ち分とすることで、相続評価額を約3分の1程度に圧縮する手法などがあります。
適切な資金移動方法は家族それぞれですので、これから住宅購入を検討されている方はこの改正内容を把握していただき、住宅購入を機に有効な「生前贈与」をそれぞれのご両親とぜひ検討してみてください。
もしかしたら思いがけないような資金援助があるかもしれませんよ。
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