浮気は、させない。
今日は久しぶりのお出かけDay。
高校時代の友人が吉祥寺でライブをするというので、夫とふたりで出かけることに。
お昼過ぎに出かけるため、11時くらいから外出の準備をしはじめたのだが、フッと横を見ると、傍らにりんこが座っていて、ジーっと私を見ている。
「あんたたち、まさかお出かけするんじゃないでしょうね」
とでも言わんばかりの疑いの眼差し。
「ごめんねりんこ、今日、ちょっとお出かけしてくるからお留守番よろしくね。おいしいお土産買ってくるからね」
そう話しかけると、お出かけすることが伝わったのか、いきなりふてくされ始める。フン!何よ!と言わんばかりに、段ボールの爪とぎをバリバリとヒステリックにむしり始め、挙句、和室のカーペットにかぶせてあるカバーと格闘し、きちんと敷いてあったカバーをぐしゃぐしゃにしたと思ったら、プイッとどこかへ消えてしまった。このところ私がずっと在宅していたので、家にいるのが当たり前とでも思っていたのだろう。
「そんなに怒らないでよ~」
と2Fへ駆けあがっていったりんこを追いかけて抱き上げ、ナデナデしてかわいがる。そして、りんこの大好物の無一物(カツオ味)を特別にあげた。飼い主に似てすこぶる食いしん坊なりんこは、食べ物につられやすいのだ。
無一物を食べはじめたりんこを横目にしながら、「シメシメ」とばかりに着替えをし、お出かけの支度を整えたのだった。
しばらくして、「じゃぁ行ってくるね」と声をかけると、すでに満足したのか、りんこはキャットロビックスの定位置で毛づくろいをしはじめていた。
「なんかまた粗相とかされそうじゃない?」
車を運転する夫にそう言うと、
「かなりご機嫌とったから、さすがに大丈夫でしょうよ。これ以上どうしろってねぇ」
と苦笑していた。
車を走らせてから1時間くらいしたころだろうか。
天気も良く気温が高かったので、車内が暑くなったため、窓を開けた。
ついでに、着ていたコートを脱いだ。
その瞬間である。
車内に、ツンとした臭いが立ち込めたのだ。一気に背筋が凍り付く。
「…いまりんこの〇シッコの臭いがしなかった?」
おそるおそる私がつぶやくと、
「…なんかしたよね…でも、窓開けてたから、その辺の外の臭いが入ってきちゃったんじゃないの?俺は一瞬だけだったかなぁ」
と、夫は大したことないよとかえしてきた。
ちょうど窓の外をみやると、大きなペットショップの前を通っていたので、そういう影響だったのかなと、気にするのをやめたのであった。
それからどれくらい走っただろうか。
途中でコンビニに寄り、飲み物を買いに出たときだ。
助手席から外へと降りた瞬間、やはりまた、りんこのあの臭いがフッとしてきたのだ。とまどいつつも、何かの間違いだろうとやり過ごした。
しかし、しかしである。
セブンイレブンに入り、お菓子売り場でチョコかポテチかで迷い、売り場を行きつ戻りつしたその瞬間、やっぱりまた微妙だが例の臭いがしたのだ!!!!
その香り方と言ったら、まるで香水の残香のごとし。これじゃあまるで、恋人に浮気をさせないように自分の愛用している香水を相手の洋服にふりかけるのと同じではないか…。
「パパ…大変…私の洋服にりんこの〇シッコがついてるに違いない…」
もはや半べそである。せっかくのお出かけ日。しかも、高校卒業以来のお久しぶりとなるスペシャルな日に、お気に入りのセーター、しかもこの日のために洗っておいた服から、ネコション臭がするのだから(泣)。
「あたしを忘れてお出かけなんかさせないワヨ」
「思い知りなさい、24時間、あたしがそばにいるってことを」
そんな『念』がりんこから送られてきているに違いない、そう確信した日曜の午後であった。