見出し画像

ミスサイゴン 4月30日~365日の香水


悪いお父さん
ベトナム戦争をテーマに米兵と現地女性との間に生まれた子どもたちのその後を追うドキュメンタリーを見たことがかなり前だけれどある。
支援団体などの尽力で戦後、父親が判明しアメリカに引き取られる子供たちもいた。半分敵国の血を引くとしてホーチミン政権下で虐げられた子どもたちだったという。
今でも覚えているけれど、その中の一人は母親の行方もわからず、ある農家に拾われて確か14〜5歳になっていた。
父親がわかり引き取ってもらえることになった、明日がアメリカへの旅立ちという夜に、養父母は十数年の間養育した娘のために祈る。

「お父さんは悪いお父さんでした。あなたにたくさんご飯を食べさせることができなかった。お父さんを許してください。あなたに新しい服を買ってあげられなかった」

ミス・サイゴン
ドキュメンタリーを見てしばらくしてから、ミュージカル「ミス・サイゴン」を観た。
音楽に東洋の楽器が使われていて新鮮であったことと、「ブイドイ」という置き去りにされた子どもたちを歌った歌が心に響き、残った。
ブイドイはごみのような意味らしく、歌のメッセージは「彼らは、ごみくずなどではなく、私たちの子」というものだった。実際に施設に預けられた子どもたちの写真が使われていて、フィクションではなく現実に起こったことなのだと、思わされる場面だった。

力になりたい
私の友人はアフリカで女性や子どもたちの支援をしている。
東日本大震災の時に、ラジオでいつも自分たちを支援してくれている人の国が大変なことになっていると知った村の人々がわずかな現金や現金のない人は僅かなたくわえの油や粉などを日本に、と「寄付」してくれたとブログで読んだことがある。
先のベトナムの農家の養父母もそうだけれど、自分たちでさえ大変なのに目の前の人を助けたい、今よりもっと幸せにしたいと思う気持ちに触れると、打たれる。
上から目線の施しではなく、格差があるから簡単にできる寄付でもなく、力にならなければと心の底から思う。
私にそんな気持ちが起こせるだろうか。

miss saigon/saigon cosmetics/
ベトナムを南軍と北軍に分断した長きにわたる戦争を終結させたサイゴンの陥落は4月29日から30日にかけてのことだった。
先のミュージカルでは大使館の混乱と取り残される南軍(親米派)の人々、混乱の中、脱出する米兵を乗せて飛び立つヘリコプターが一つの見せ場になっていた。同じような光景は数年前のアフニスタンでも繰り返された。

さて、香水ミス・サイゴンの香りは、ヘリオトロープの甘い匂い立ち、若干ソープ様の香気を含む、懐かしい母性的なフローラル。
現在はホーチミンの名に変わったけれど、エキゾティックでたおやかで、生命力のある街に変貌したサイゴンを彷彿とさせる。その悲しい歴史といつの世にも優しく強い人々を思いながら、選ぶならわたしもそういう人でありたい。

香り、思い、呼吸

4月30日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。


この記事が参加している募集

私のコレクション

with 國學院大學

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?