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てんびん座

マックスジャコブの『占星術の鏡』には星座ごとに、その星座が持つ香りの記述がある。星座だけでなく色や味などもあって、そのような情報からその星の下に生まれた人について思いを馳せていくシリーズ、ついに11回目。
私は、パリに行くたびに、マックス・ジャコブが訪れていたモンパルナスの、ノートルダムデシャン(教会)を訪れている。

香りは安息香、甘松香、味は心地よい味、色は青空とバラ。
安息香や甘松香はアロマセラピー用途の精油にもあるし、お香などの原料にも用いられる。漢方に代表される東洋医学にも西洋の植物療法にも古くから用いられてきた。
安息香はインドネシアやタイなど亜熱帯に産する常緑樹の樹脂、
甘松香はヒマラヤや中国の山岳地帯が原産の多年草の根や茎を用いて香料にする。
亜熱帯と山岳、西洋と東洋の両天秤
天秤だけあって、亜熱帯に産するものと、山岳地帯に由来するものとをバランスよく持っていて、西洋でも東洋でも重用されてきた、というのが何とも面白い。
2つはともに、鎮痛作用があるとされていて、痛み、悲しみの感情をやわらげるとされている。
また、香りの持続性が高いので、香水類ではラストノートに用いられることも多い。それ自体が主役というよりも、他の香りと調和することで良さを引き出し、新たなニュアンスをその香りに加える、そういう役割も大きい。

役割としてシックでスマート
安息香の樹脂独特の甘い香りや、甘松香の少し黴臭いような香りは、それ単体でも人々を十分に癒すものだけれど、他の香りとの組み合わせによって、あたたかさ、奥深さ、華やかさ、神々しさ、いろいろな変貌を遂げていく。
トランスフォームの重要な要素なのかもしれない。
それ単体ではとてもシックだけれど、誰と組むかによっていかようにも変幻していくスマートさ、そういう存在がてんびん座なのかもしれない。
私も、安息香と甘松香のような役割の人に傍らで見守ってほしいし、ある時は一緒に仕事をしてみたい。自分がどんな風に変わっていくか、その人となら委ねられる気がする。

そこに青空とバラ色
安息香や甘松香から考えると、てんびん座の色合いは中間色、あらゆるものと合わせやすい色味に思えるけれど、そこはマックス・ジャコブ、その色を「青空とバラ」と記している。私は勝手にバラは淡いピンクを想像した。
てんびん座の季節を考えればなるほど、突き抜ける青空が気持ちよく、バラはナポレオン皇妃ジョゼフィーヌの貢献で、現在は10月にも花を咲かせる。

ここまで書いて過るのは白金の庭園美術館
もとは朝香宮の邸宅で現在は都の管理で美術館になっている。100年ほど前に建築なので、設計も内装も調度品も当時流行したアールデコ様式。
訪れるたび、センスあふれる建物の一部になったような自分が心地いい。
アールデコといえばラリックで朝香宮の所蔵品であったラリックをはじめとするアールデコの装飾品などがこの美術館の展示としての強みではある。けれどそればかりとは言ってられず、シュールレアリズムから蜷川実花、北欧硝子など、毛色の違うもの、現代のアーティストのものなど、意欲的に、でもギラギラはさせずに毎回妙味を出している。
この器としての館と展示物の関係がまさに、香りからみるてんびん座の魅力に重なる。
安息香も甘松香もそれだけで、味わう価値がある。アールデコ様式の館も同様。けれど、そこに色とりどりの展示が加わることで、館の様相は趣を変えてくる。二つの香りも同様であることは先に書いた。

味としても心地よい以外ない。

ダナのハービシモ
ということで、てんびん座の香りとしてダナのハービシモを添えておく。
今でも流通はしているけれど、私のコレクションはかなり古いバージョンのもので、知人の愛用品だったものだ。
メンズ向けのオーデコロンでドライジンのようにいろいろなハーブやウッディが香り立ってくる。爽やかというよりも力強い匂いたちで、なかなかもう、こういうコロンは創られないだろうなという気がしている。
強さはあるけれど、装い方や場所によって、香りとそれをまとう人のイメージを変幻させていく、そういうタイプのオーデコロンだ。


harbissimo/dana/
ダナはスペインの老舗香水メーカで現在はアメリカ資本
この当時はまだスペインの会社でおそらく、1980年代くらいのものと思われる。
お酒のような形のボトルで、豪快にボトル口からバシャバシャ
手に取って浴びるように使いたい。
(もちろん、希少なコレクションなのでそんなことはしない)

香り、思い、呼吸

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