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切望 5月16日〜365日の香水

願う
何かを強く願う時にも、おかれた状況や微妙な心理で表現は変わる。
熱望、渇望、それに切望。
切望しても熱望しても、言葉として使うということは、その強い思いを誰かに伝えるという行為なので、そう考えると、これらの言葉を使うことはあまりなかった気がする。
私は強い望みを他者に伝えない?
他の人はどうなんだろう?

longing
英語にも同じようにパターンがあった。
欲望として比較的、日常会話にも頻出するのがdesireで、コーヒー飲みたい~(I desire a cup of coffee)程度でも使う。
切望に近い言葉は、yearningとlongingとがある。
れいによって語源からみるとyearningは「願い、欲望」の意味がある言葉を語源とするのに対し、longingは長く伸ばす、という意味を持つ言葉が語源とのことだ。

心理的な距離
どちらも心の奥底から湧き上がる深い願望だけれど、語源からわかるのは、longingには距離や時間が引き起こす願望に対しての使われ方があるという点だ。
物理的な距離でいえば、故郷を懐かしむ、帰りたいという気持ちを~She felt a longing for her homeland.
のように使う。
物理的な距離、時間に限らず、手が届かないもの、欲しているのに近づかないものへの思いが切望。
それは“longing”としっかり結びつく。気がした。
冒頭の自問に対しては、
「それゆえに、切望していると言葉で伝えることはないかもしれない」

切望のイメージ
コティ(COTY)から1994年にlonging(ロンギング/ロンジン)がリリースされたときのビジュアルをピンタレストで見つけた。
横たわる女性に傅く男性。
二人の距離はとても近いのに、男性は彼女に近づくことを“longing”しているのだろうな、という心の情景が伝わってきた。
同時に、これは当時は女性向けのフレグランスであったらか「切望される存在」という視点で、その魅力を伝えたのだろう。
切望は、心理的な距離や壁がたちはだかる何とも言えない歯がゆさと、切なさ、を伴う。
そして、すぐ傍らにいる人にそのような思いを抱かせる人。
それが香水longingのイメージ世界だと感じた。

longing/coty/1994
スイートフローラルにアンバーのヴェールがかかったような香調。ラストノートになるとジャスミンの濃厚さやウッディが静かに広がり、しっとりした雰囲気になる。不思議だけど十二単を想起させる。

香り、思い、呼吸。

5月16日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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