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薔薇の影 薔薇の皇后 5月29日〜365日の香水

今月はジョゼフィーヌ皇后のことをあちこちで話した
5月といえば薔薇、薔薇といえば、皇后ジョゼフィーヌ。
ナポレオンの最初の妻であった人。
今月はあちこちで、ジョゼフィーヌの話をした。
ある時「どうしてジョゼフィーヌ?(の話を選んだのか)」と聞かれた。
薔薇の逸話ならばほかにもたくさんの史上の人物がいる。
薔薇の帆船のクレオパトラ、金の薔薇のローマ教皇、ボッティチェリが描いたヴィーナスの誕生に描かれたピンクの花・・・。

かつて、ジョゼフィーヌの失意に自分の心境が重なったときがあった
人の心が変わること、そのことで傷ついたであろうジョゼフィーヌに共感を覚えていた。
「あなたによって生きることが私の人生」という求愛から、「どちらかの選択を。一つ目は合意を得て別れる。二つ目は合意を得ないで別れる」という非常な離婚宣告。
この落差、彼女の失意がどれほどのものだったか。
去っていった人のことを考えて自分の気持ちにジョゼフィーヌの失意を勝手に重ねたのかもしれない。
振幅の原理。喜びが大きいほどそれを失った時の悲しみも大きい。
皇帝に上り詰めた夫にとって、自分と同様に田舎貴族の出身で、自分との子を身ごもることがなかった妻については、離婚一択だったのである。

失意の日々をジョゼフィーヌはどう生きたのか
離婚後、ジョゼフィーヌはマルメゾンの庭園で植物を育てることに日々を費やす。
特に薔薇。優秀な園丁デュポンとの二人三脚で、世界中からオールドローズの様々な品種を取り寄せたという。
品種改良も行ったので、現代薔薇が秋にも咲くようになったのはその恩恵。
庶民派で取りすましたところのないジョゼフィーヌに親しみを覚える人は多くいたようだ。
彼女は薔薇の季節に息を引き取った。
5月29日の朝、デュポンはその日に咲いた新種の薔薇を一輪、彼女の棺に捧げたという。
心を注ぎ、愛しみ、園芸薔薇の世界を飛躍的に進歩させた人。
失意の日々にあって、結果として後世の人々にたくさんの薔薇の恵みをもたらした人。

ombre rose/jean charles brosseeau/1981
「世界一やさしい香水」とかつて謳われたという。
薔薇の影という名の通り、穏やかで優美なローズ系フローラルの香り。
現在はリニューアルされているけれど、81年当時のものは、匂い立ちが良いけれどキツさがなく、薄くはないけれど淡い感じがあって、淑女然とした趣が魅力。

ジョゼフィーヌは花では薔薇や芍薬を、香りはムスクなど濃厚なものを好んだともいわれている。
けれど、運命を受けいれ、自棄にならずに、たくさんの現代薔薇を世に残してくれた彼女にはオンブルローズのような優美な香りが似合う。
今日もどこかで、新しい薔薇が咲いている。

香り、思い、呼吸。
5月29日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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