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黒水仙 3月20日〜365日の香水


映画「黒水仙」
青い薔薇〜ブルーローズと同様に黒水仙〜ブラックナルシスも自然界には存在しない。(はず)。
1947年のハリウッド映画「黒水仙 black narcissus」はヒマラヤ山麓に修道院を作ろうとする修道女の受難と葛藤の物語で、主演はデボラ・カー。
このタイトルは同名の香水名「ナリシスノアール〜narisisse noir(フランス語)」が由来らしい。
作中で現地の王子がつけていた香水がナリシスノアールで、王子のきらびやかな装束や宝石ともどもその香りが神に仕える前の日々を修道女に思い起こさせる。
香水ナリシスノアール〜naricisse noir、1911年にキャロンcaronからリリースされている。名門キャロンの確か第一号だった。
個人的な印象だけれど、映画を見た時、タイトルの水仙は修道女たち、黒は彼女たちのダークサイドだと自分なりに解釈した記憶がある。

秘密を象る
ナリシスノアールが1911年に世に出た時には黒い花型のキャップが独創的で、このボトルデザインはその後たくさんコピーされたという。
この世にはない黒の水仙という幻想的なネーミングはキャロンの創業者で調香師であったエルネスト・ダルトロフと、彼のミューズであったフェリシエの公にはできない関係を投影したものという人もいる。フェリシエはキャロンの香水のボトルデザインを当時全て担っていた。当然、この最初の香水の独特なボトルも彼女によるもののはず。
香り、その名前、その器(ボトル)に恋人たちの密やかなパッションが投影されたのだろうか。

narisicce noir/caron/1911
何度もリニューアルをしてきたこの名香の現在のものは、香調はかなり異なる。
私のコレクションはおそらく70〜80年代と思われるオードトワレと50年代のオーデコロン。
今日はオーデコロンを扱いたい。
経年があって若干感じ辛くなっているけれどトップは水仙と微かなオレンジの花が香る。そこからローズやジャスミンのなめらかなフローラル。
ムスクやアンバーのラストノートまで水仙の香りは持続し、微妙な変化でオリエンタルノートに落ち着いていく。
水仙の香りの繊細さを損なうことなくジャスミンやアンバーがより独創的な香りへと誘っていく。
シンプルなはずなのに複雑で、わかりやすいはずなのに何度か裏切られる。

香り、思い、呼吸。

3月20日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。


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