見出し画像

ダリアとブドウ 4月15日〜365日の香水


ジョゼフィーヌとダリア
ナポレオンの最初の妻であったジョゼフィーヌ。離婚後パリ郊外のマルメゾンに蟄居し、マルメゾン庭園でたくさんの植物を栽培した。
ジョゼフィーヌといえば薔薇だけれど、同じくらいダリアを愛しんでいた。
ダリアがメキシコからスペイン経由でフランスにもたらされたのが18世紀ということなので、まだまだ希少で珍しい花であったようだ。
なぜかジョゼフィーヌは、自分が愛でるばかりで、ダリアの球根を人に譲ることを頑なにしなかったという。
ところが、ある知人女性がジョゼフィーヌの使用人を唆して庭園から株を盗み、自宅の庭にダリアを咲かせる。自分以外の人のもとでこの花が咲いていると知ったジョゼフィーヌは、それ以来ダリアへの関心をすっかり消失させてしまったのだそうだ。
彼女の気が変わったこのエピソードからダリアの花言葉に「移り気」が加わったとか。
大輪というにふさわしい花、人目を引く美しさというのは、ジョゼフィーヌにある意味で薔薇以上にふさわしいのかもしれない。

聖書とブドウの木
イスラエル料理にお米をブドウの葉で包んだものがあって、スパイスが効いてとても美味しかった記憶がある。
ワインはもちろんブドウの葉を使った料理は他にもあったと思う。ブドウはキリスト教の中に深く根付いた植物の一つのようだけれど、イスラエルに限らずギリシア、シリア、トルコ、多くの地域で葡萄の葉は塩漬けにされたりして食生活に浸透している。
旧約聖書で言えば香料植物として乳香と没薬が真っ先に関連づけられるが、キリスト教の世界では葡萄の樹の下にいるということは平和と繁栄をもたらすことを意味するようだ。

そして、ダリアとブドウ
優雅、華麗の花言葉にふさわしい姿をもったダリアと、古代から地中海世界に根付き、キリスト教と結びついたブドウ。少し意外なコンビネーションが今日の香水だ。艶やかな華のある存在と生活や文化に関わり地域に根ざすような存在の組み合わせ。それは賢人エリアに寄り添うサロメのような取り合わせに、私には思える。

Dahlia&Vines/nest/2013
ネスト(nest)はニューヨークのフレグランスブランド。ニューヨークらしいナチュラル志向とシックでスマートなテーマ設定、ボトル・パッケージデザイン。
香りはグレープとピオニーやローズが優しく香るトップからミドルにかけてナリシス(水仙)が個性を醸してくる。最後は2000年代に入ってからトレンドになったホワイトムスクで優美から艶やかへとイメージを変遷させる。それでも、全体にはさりげなく装えるフローラル。個人的にはナリシスの使い方がおもしろいと思っている。

香り、思い、呼吸。

4月15日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。


この記事が参加している募集

私のコレクション

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?