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皇帝のヴァイオレット 4月14日〜365日の香水


ブルボン王朝
オリザ・ルイ・ルグランが復刻したニュースを知って、パリのサンジェルマンデプレの店を訪れた。
音声配信でも最初にこのブランドの香水を紹介し、訪れた時の体験を語った。
19世紀末から20世紀初頭のパリのパフュマリーに迷い込んだような感覚。
オリザ・ルイ・ルグランのルーツを辿れば18世紀にグラースで創業した香料商でその4代目はパリに出て、マリー・アントワネットのに専属調香師になったジャン・ルイ・ファジョンだ。
彼の競合として革命前のパリに店を構えたウビガンがいた。
才覚のある名門出身の調香師であっても、マリー・アントワネットにたどりつくまでには、かなりの努力があったし、運を引き寄せることも必要だった。
革命が起こると彼は一時、王党派として投獄されるが程なく釈放され、再起を図る。時代に翻弄された人生だったようだ。
ジャンの子孫にあたる後継者のハウス、オリザ・ルイ・ルグランは確か1930年代くらいまで続いた。
十数年前に図書館の資料庫から、オリザ・ルイ・ルグランの古い処方を発見した実業家がハウスと香水を復刻させた。
アイテムの中には、ジャン・ルイ・ファジョンが抜け毛に悩むマリー・アントワネットのために処方したというビネガーのヘアトニックもラインナップされていた。

ロマノフ王朝
サンジェルマンデプレの店で最も古い香りはどれかと尋ねたら、ヴァイオレットのムエットを差し出された。1900年当時のパッケージを見せてももらった。
独特の書体でviolettesと書かれていてスミレの花が野に咲くイメージで描かれていた。
とても魅力的なヴァイオレットの香りだった。
ネーミングの由来は、当時のオリザ・ルイ・ルグランがロマノフ王朝の御用達を拝命していたことにあり、皇帝ニコライに献上されたヴァイオレットの香水を想起させる。

violettes du Czer/oriza.L.legrand/2014
贅沢なヴァイオレットを再現している。スミレの花の繊細な香りとスミレの葉のグリーン感のある香り、ウッディとレザー、アンバーがそこに溶けていく。
とにかく、ヴァイオレットの香りが多層的で、ただでさえ贅沢なこの香りをさらにラグジュアリーにしている。復刻ということで、天然のヴァイオレットは流石に使われていないはずだけれど、香水が特権階級に所属するしていた時代の名残を十分に味わうことができる。復刻版は長く残って欲しい。
誰にも教えず、自分のための最高の贅沢としてひとふきしたい。

香り、思い、呼吸

4月14日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。

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