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シン・ディオール 3月16日~365日の香水

novella
ディオレラ(diorella)はDiorと"Novella”を組み合わせた造語。Novellaはイタリア語で”新しい”の意味なので、”新しいディオール”ということなる。
調香師はエドモンド・ルドニツカ。巨匠である。
同じルドニツカのDiorissimoもまたDiorとイタリア語のissimoの組み合わせでこちらは「どってもディオール」という造語だ。
ディオリシモから15年ほど後の1972年にディオレラは世に出た。
この時期は、グリーンノートをシプレーやアルハイドと組み合わせた香りの名作が本当にたくさん出た。
グリーンノートの影響というのは、私も再三語っているけれど、ベトナム反戦、女性解放運動、自然回帰という時代の風の中で人々の要求に応えた香りと言える。

新とシン
アールヌーボーやヌーベルバーグのように既存とは異なる概念や解釈がアートや表現として体現される時の「新しい〜」という言い方には、これまでの否定のニュアンスを含むように思う。
そこには新基軸を打ち立てる旗手たちの存在も欠かせない。トリフォー、ゴダール、ルネラリック、ドーム兄弟・・・。
一方で、「シン・」というごく最近の表現であり独特の表現は、圧倒的な過去へのリスペクトをともなっている。愛してやまないその魅力を継承して新しくつくったゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダー。
このnoteのタイトルはこのトレンドに則ったけれど、香水の世界の本当の意味での「シン・」のようなクリエイションは難しいだろうなと思う。

新しくなりたいとき
変化というより脱皮が必要な時、新しい自分になろうという意欲が人の中に湧いてくるのだと思う。
全く別のものに取って代わるわけではなく、次の形態に変異する。捨てたり、取り替えたり、組み替えたりしながら、変容していくことが生きていくことなのかもしれない。社会情勢や個人的なイベント、季節によっても「新しくなりたい」気持ちは喚起されるものだと思う。戦争が続けば、勝利や成功という価値観からドロップアウトしたくなるし、結婚式を機にダイエットが始まることもある。前者はヒッピーに若者を変容させ、後者は前より痩せたブライドにする。

Diorella/C.Dior/1972
ルドニツカは、その香水が最後にどんな“形”をもつのか、調香師はいその理想の形のために香料を配合していくと語っていた。ディオレテラの形はとても颯爽としていて意志が強く、それでいて所作はお淑やか、というもの。トップノートのグリーンの香りとシトラス、そしてラストノートまで影響するシプレー、その中で咲く様々の花の香り、そのグレードがインパクトだけでなく淑やかさを醸すことを成功させている。
巨匠の素晴らしい設計、同じものは二度と作られないだろう。

香り、思い、呼吸。

3月16日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。

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