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花開花謝 flower by KENZO 5月21日~365日の香水


高田賢三の色遣い。その鮮やかさは、こちらの気持ちを明るくしてくれる。メルヘンで斬新な色遣いの底流には美への賛美と人への優しい感情が流れている。歴代の香水のパッケージにも同じことを感じる。紫を基調に黄色を指す、あるいはオレンジ、などそれらが絶妙なバランスで優美な彩られ方をしていて、陶酔できる。
フラワーバイケンゾー(flower by kenzo)のイメージカラーは赤で、赤の中でもどんなニュアンスの赤かと調べた。(金赤、紅、ローズレッド・・・などなど)
結果、「赤」だった。
鮮やかで明るく、混ざりけがなく美しい、と真ん中の「赤」。

活力と優美さ
flower by kenzoのイメージビジュアルの一つを探し出した。
パリの青空が広がり、「赤」のドレスを風になびかせる美しい女性、遠くにエッフェル塔、その対比のように茎の長い一輪を象ったようなボトル。
鮮やかなその赤に、威圧感は1ミリもなく、ただただ活き活きとしていて見ていて心地がいい。
この心地よさにはやはり明るい空の色、運ばれる空気の清涼感、そしてパリという街の空気感が、背景として必要なのだ。
パリの空気の中にいないと表現できないクリエイティビティ、賢三の世界観が凝縮されているようにさえ思てくる。
青空と赤とエッフェル塔、そして香水。

花開花謝
パリの空気感の中で唐突に思い出したのが「花開花謝」という中国の言葉。花が咲き散って、また次の年に咲くという意味のはず。
想像だけれど「花謝」には開き切った花が重くなり項垂れ、やがて散り落ちるストーリーの中で、項垂れ始めた風情を準えたように思うのだ。
そして花が謝っている、これは謝罪ではなくて「また巡ってきます、今はさよなら」というご挨拶のように私には受け止められて、この言葉がとても好きだった。
これを思い出したのは、ケンゾーバイフラワーのパッケージに、蕾、開花、項垂れた花が描かれていたからだ。
そしてボトルにもこうべを垂れた赤い花。
活力に満ちた赤い花と、それが時を迎えてうつむいていくこと、それでも、その存在は美しい、という賛歌がこの香水の物語と思えてくる。
それが「花開花謝」と重なった。
高田賢三というクリエイターの優美さはそのように繊細な感性に基づくものだったと感じている。

flower by kenzo/Kenzo/2000
調香師としてアルベルトモリアスが関わっている。スイートフローラルで鮮やかさと明るさを持った香り。
バニラのウォーミィーさがトップから優しく香るけれど、ローズやジャスミンと共にやはりヴァイオレットが非常に絶妙な香り方をしてくれている。
この香水に惹かれる理由はそこにある。
もっと軽くする方向もありつつ、何とも言えない人肌に乗る感じと、真綿のような心地よさ。
生きようとする人、活かされようと前を向く人を、どんなときも優しく包む香水だ。

香り、思い、呼吸
5月21日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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