仮面舞踏会
自分でも驚いている。顔が引きつっていないかをひたすら自分で確認をする。予定だと楽しくご飯を食べる予定はずだったのに。
というのも、この子と面と向かって顔をあわせたのはこれが初めてだった。なにせ、このご時世である。マスクをつけなければいけないのは暗黙のルールだ。だが、他人の顔の鼻から下は想像の域になってしまう。
人は、不思議と見えないものを過剰に期待してしまう生き物だと思う。顔出しをしていない配信者などで顔を出した途端思っていた反応を貰えていないのはよくあることだ。そういうものだと思う。
見えないというのは同時に相手側に想像を強制させてしまう。期待をさせて落胆させる。そんな気はないのにそういうことは起きてしまうのだ。悲しいことに。
あのとき立てた決意はこんなにも容易く砕けるものなのか?目の前の子に惚れたのはこの私自身じゃなかったのか?傲慢にも程がある。目の前に並べられたディナーに目を向けず、下ばっか向くんじゃないよ。
もっとお前は仮面舞踏会を楽しめよ。
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