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スイス[5] スイスの山にはうんざり

スイスの山々(写真はドイツ南東部Engen付近から遠望したスイスの山々)

202202121850スイス[5]「スイスの山にはうんざり」A.J.

「アレックスが言うのよ,この辺に来るといつも」
ドイツ・アウトバーンをメルセデスで一路スイスに向けて走っていた時,運転中のエルザが助手席の私に言った。
「ん? 彼が何か言ったの?」
と私。

 スイス人のアレックスはエルザの配偶者で私はその夫婦と友人である。その日,スイス在住のエルザと,夫婦の自宅をスイス観光旅行の途中で訪れていた私は、彼女の運転する自家用車で日帰りドイツ観光に行っていた。その帰り道,アウトバーンを時速140kmで走行中のことである。ドイツとスイスの国境まであと一時間くらいの所だっただろうか。路面の状態も良くまた乗っている車も高級車なので高速走行中でも十分に話が聞ける。
 エルザとアレックスは所用でドイツへ頻繁に出かけるのだがその帰り道,ドイツからスイスが見えるようになるとアレックスはエルザによくこう言うのだそうだ。
「あの山々が見えるとうんざりしてくるよ」

 スイスにはそのど真ん中にアルプスがある。スイスの南西にはフランス・イタリア国境(ハンニバルの軍行で有名)のモンブラン,スイス・イタリア国境のマッターホルン,スイス国内では,ツェルマット,有名な観光地であるグリンデルワルドを麓とするユングフラウ,アイガー,メンヒ,東にはゴッタルト,そしてオーストリアに向けて山に山がこれでもか、というくらい続いていく。
 私はそれらのごく一部を登山列車で訪れた経験があるだけで,本来の意味での登山は経験したことがないしそんな技能も持っていない。しかしそれほど有名で高い山でなくてもスイスのあちこちに3000m級の山はごろごろあることはよく分かる。

 スイス自体,地理上の緯度が高い上に高度も高い(*1)。そして周りは山岳気候だ。その山々はほとんどが岩山で周りに平地は少なく作物の栽培に適した畑地は極端に少ない。この点は隣の農業大国であるフランスとの大きな違いである。
 ブリーク(Brig)からローザンヌ(Lausanne)方面に向かうSBBの列車に乗るとシオン(Sion)付近でブドウ畑が見られるし、山間部でも酪農はそれなりに盛んではある。しかしやせた傾斜地が多くそういう意味では農業一般には厳しい土地が多いと思う。北海道まで水田がある日本とは全然違う。

 スイスの山々が観光地として開発されたのはここ100年,さかのぼっても18世紀に入ってからだ(*2,3,4)。それまでは、あるいは近代以前はドイツへ出稼ぎに行かねばならなかった人たちや傭兵として意に反して戦わざるをえなかった人も多くいた国なのである。もちろんスイスが貧しい国だったと言えば(たとえ過去形だとしても)失礼である。ただ,工業あるいは金融産業が盛んになるまでは厳しい自然環境の中で暮らしていた国であることは確かであろう。
 岩山は食べられない。


(*1)都市部のジュネーブでも高度は420mだし緯度も北緯46度。稚内より更に北である。
https://www.data.jma.go.jp/cpd/monitor/climatview/graph_mkhtml_nrm.php?n=6700&m=1
によると
ジュネーブ -スイス・リヒテンシュタイン   緯度: 46.25 °N / 経度: 6.13°E   高度: 420(m)
とある。
(*2)
https://www.eda.admin.ch/aboutswitzerland/ja/home/dossiers/die-schweiz-und-ihre-bergrekorde/tourismus--die-entdeckung-der-berge-als-feriendestination.html
(*3)
https://www.eda.admin.ch/aboutswitzerland/ja/home/wirtschaft/taetigkeitsgebiete/tourismus.html
(*4)この資料は読み込んだ訳ではなくこれから詳しく読もうと思っています
https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=18196&item_no=1&attribute_id=19&file_no=1

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