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スイス[20] 欧州の鉄道(9)遅れに遅れるICE(下)

202203031215スイス[20] 欧州の鉄道(9)遅れに遅れるICE(下)

 スイスの友人宅にお邪魔していた時にスイス近隣地域のフランス・アルアス地方に行ったことがあります。小旅行と言ってもアルザスの小さな街で一泊した程度でしたが本来の目的は『フランス・ドイツ国境であるライン川を鉄道で越えてみる』でしたのでその目的自体はかないました。

 私は欧州史は全然詳しくないのですがそれでも普仏戦争や第一次世界大戦,第二次世界大戦があったことを高校までの教科書で(形だけですが)学びました。この時の旅では訪れることは出来なかったのですが,アルザス出身の知人(フランス人)が言うには「昔の国境線の痕跡がアルザス地方の街のはずれにある」とのことです。次回チャンスがあれば数日は滞在してアルザスを散策してみたいものです。

 スイス・バーゼル駅(Basel,Bâle)のSNCF(フランス国鉄)のホームからボロっちい客車列車に乗りいざアルザスへ。と言っても途中駅で降りて一泊し,翌日フランス・ストラスブール駅(Strasbourg)でまた降りて昼食を食べ今度はドイツ領へ向かうために地方列車に乗りました。
 いくら国境のライン川を列車で横断することだけが目的だったとはいえ,今思えばストラスブールの大聖堂くらい見学すればよかったのですがそんな名所など全く予習していなかったのでストラスブール滞在はたった2時間でした。

 80年前には悲惨な戦争・戦闘があったであろうライン川沿いですがストラスブール駅始発のローカル列車(各駅停車)は川にかかる橋と広い河川敷を普通に走ります。まるで分倍河原あたりにかかる橋のようでした。
 シェンゲン協定が無かった頃にはあったであろうパスポートコントロールもなく,列車の運行会社や車体,駅の案内の言語こそ変わりましたがどうも何の感激もなくあっけらかんとフランス・ドイツ国境のライン川を渡ってしまいました。

 ローカル列車はドイツ・オッフェンブルク駅(Offenburg)が終点です。ここからバーゼルまでは少し距離があるのでICEに乗ろうとスイス・インターラーケンオスト駅(Interlaken Ost)行きの列車を待ちました。バーゼルまで行ければそれで良いのですがその先のスイスのSBB(スイス連邦鉄道)路線まで乗り入れているICEです。これに乗れればバーゼルからさらに先のオルテン駅(Olten)まで行けるので友人宅に帰るには便利なのです。

 でICEを待つのですがいつまで経っても来ない…ホームの電光掲示板の案内の時間になっても来ない。10分や20分の遅れではないのです。その上,ちょっと言いにくいのですがお手洗いに行きたくなりました。しかしその時には駅のお手洗いがよくわからないという状況でした。有ったとは思うのですが焦ると余計に見つかりません。ICE,来ないかなぁ…
 結局40分だったか1時間だったか無茶苦茶遅れてインターラーケン・オスト駅行きのICEがやって来ました。で早速乗ってトイレを探したら『故障』とか書いてあります。慌てて別の車両のトイレに入って事なきを得ました。もう!

 ICEはバーゼルSBB駅に遅れに遅れて到着しましたがなんとそこで運行を打ち切りドイツへ向かう始発になる,という案内が流れました。仕方なくえっちらおっちらバーゼルSBB駅始発のSBB列車に乗り換えたのですが,なかなか日本の新幹線とは違う便利で不便な?体験が出来たICEでした。
 でもICEにしてもTGVにしても在来線との乗り入れ,あるいは国境を越えての相互乗り入れが実現しているのは日本と違い大変うらやましいことではあります。時刻表通りに運行されなくても大きな事故はあまり報告されていない(報道されていない?)のですからこれはこれで良いのだと思います。

(スイス[20] 欧州の鉄道(9)遅れに遅れるICE(下)終わり)

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