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ここ10年続く総理にまつわる歴史的異変を見つけてしまった件。

我が国の総理大臣はまもなく、安倍晋三からかなり高い確率で菅義偉に代替わりする。で、「ハッ!」と気づいた。「あべ」から「すが」、二人とも2音だ。日本人の名字に2文字というのはもちろんそんなに珍しくないが、3音に比べると遥かに少ないのが事実だ。

しかももっと驚いたのは、「あべ」の前は「のだ」であり、もう忘れてるかもしれないがその前は「かん」だった。「かん」は1.5音とも言えるが、ひらがなにするとどれも2文字だ。ひらがな2文字の総理大臣が4人も続くことになるとは、歴史的珍事に違いない。

で、気になって調べてみた。歴代総理大臣の名字についてだ。

日本人の名字トップテンをおさらい

日本で一番多い苗字といえば鈴木、2位が佐藤だ。3位い以降は大きく差がつくが、高橋、田中、渡辺、伊藤、中村、小林、山本、加藤と続く(2018年のデータによる)。この10の名字の人間が、自分を含め周りに1人もいないという日本人はそうそういないだろう。

そして、見ての通りひらがな2文字の苗字は一つもトップテンに入っていない。つまり、名字の観点から捉える限り、ここ10年の総理大臣は日本人の全体像に準じていないということになる。断っておくがあくまで名字限定の話であり、政策や思想信条趣味嗜好は一切関係ない。

では、歴史的にはどうか。

「鈴木」と「佐藤」、長いのはどっち?

まず名字数トップの「鈴木」が名字の総理大臣は2人いる。第2次世界大戦終戦時の鈴木貫太郎と、1980年から82年まで在任した鈴木善幸だ。鈴木貫太郎は昭和20年4月17日から同8月17日までとわずか4ヶ月。鈴木善幸は2年4ヶ月。二人分を足しても(なぜ足す?)3年にも満たない。135年の歴史を持つ内閣制度においてはあまりに短すぎる。ここでも日本人の実態に見合っていない。

では「佐藤」はというと、昭和40年代に在任した佐藤栄作ただ一人だ。ただし、この佐藤栄作一人で7年8ヶ月もの在任期間を務めている。安倍晋三が先日連続在位期間の記録を塗り替えたことがニュースになったがそれまでの記録保持者である。なるほど、こと「佐藤」に関する限り、日本人の実態を割と反映しているといって良さそうだ。

「高橋」ダルマ宰相に「田中」今太閤

以下は手短に。3位の「高橋」はダルマ宰相と呼ばれた高橋是清ただ一人。盟友・原敬暗殺のあとを受けて大正10年に就任したが、わずか半年で総辞職している。ちなみに高橋は、5.15事件で犬養毅が暗殺された直後に臨時総理を10日間だけ務めている。それでも在任期間は7ヶ月ほどだ。

4位の「田中」は2人いる。昭和初期に就任した田中義一(在任2年3ヶ月)と、ご存知“今太閤”こと田中角栄だ。田中角栄の名は今の若い世代でも知ってるくらいに存在感こそ大きいが、意外にも在任期間は2年半程度と短いことに驚く。その後のキングメーカーとしての存在こそが彼の実態だったというべきだろうか。

5位は「渡辺」だが、歴代総理大臣経験者62人の中にこの名字は存在しない。惜しかったところでは、1980年代を中心に活躍した渡辺美智雄が記憶に新しいが口を滑らせる事例があとを絶たなかったのが災いしたのか、総理の椅子は遠かった。

初代「伊藤」と不吉な?「加藤」

6位の「伊藤」は、初代総理大臣・伊藤博文が唯一の事例だ。明治中期以降における政界最大の実力者であり、内閣制度を作った人物と言ってもいい。歴代総理経験者でお札の肖像に起用されたのも現状彼だけだ。10万円札ができた暁には吉田茂や田中角栄がなるのではと言われた時期もあったが、政治家が使われる可能性はこの先薄そうだ。なお、「伊藤」についてはもう一人、1980年に大平正芳が在任のまま死去した際、官房長官だった伊東正義が総理代行を約1ヶ月務めたことを記しておく。

7位の「中村」、8位の「小林」はいずれも総理経験者がいない。

9位の「山本」は、大正時代に2度就任した山本権兵衛1人だけ。海軍大将を歴任した実力者だった彼だが、最初の内閣はジーメンス事件で内部崩壊するなど政治家としての評価はあまり高いとは言えない。

10位の「加藤」は、加藤友三郎と加藤高明。いずれも大正時代の総理大臣だ。加藤友三郎は海軍出身。在任中の大正12年8月25日に病死しておりその直後の9月1日に関東大震災が起こっている。加藤高明はこれより2代挟んで大正13年、いわゆる護憲3派の筆頭格として総理に就任、普通選挙法の成立を実現させた。しかしこちらも在任中の大正15年に肺炎をこじらせて死去している。偶然だが「加藤」と総理の組み合わせには忌まわしい例がつきまとう。

やはり2音はレア

さて、最初の議題に戻ろう。ひらがな2文字の総理についてだ。最も古い例は初の平民総理・原(はら)敬だ。次が太平洋戦争開戦より少し前の阿部(あべ)信行。現総理とは漢字が違うが音は同じ「あべ」だ。そして昭和30年代まで下って岸(きし)信介。ご存知の通り安倍晋三の祖父である。佐藤栄作の兄でもある。次が、田中角栄のあとに就任した三木(みき)武夫。平成に移って宇野(うの)宗佑、羽田(はた)孜、森(もり)喜朗とつづき、森のあとに就任したのが安倍晋三(第1次内閣)となる。昭和まで3人しかいなかったひらがな2文字総理が、この10年で4人も続くのはやはり異常だ。なにかが起こるにちがいない、しらんけど。

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