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地震災害など緊急事態における一次情報の重要性について

 令和6年元日1月1日に能登地方で発災した最大震度7の地震(令和6年能登半島地震)から10日が経とうとしています。ネット上でも様々な情報が行き交い、もちろん有用なものもありますが、偽情報、デマ等も少なくありません。

 特に、地震等の災害に幾たびも臨んできた経験があるにもかかわらず、基本的な支援情報さえ手探りで収集せざるを得ない、激甚災害指定といった災害法体系について立法者である国会議員自身の理解が乏しい等の課題を見せつけられました。

 本稿では、一義的には地震災害を念頭に、できるだけ一次情報ソースを網羅的に列挙してみました。今回はともかく、今後も繰り返し対峙しなければならない自然災害に係る情報リテラシーを高めていく上で、何らかのお役に立てればと存じます。


1.政府のポータルサイト

 まず国については、内閣府「防災情報のページ」というポータルサイトがあります。防災に関する基本的な政策、大規模災害発生時の対処に関する企画立案及び総合調整を行うための特命大臣として防災担当大臣が置かれており、災害対策基本法、災害救助法、被災者生活再建支援法、激甚災害法(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律)はじめ基本的な法律は、この内閣府防災の所管となります。
 ポータルサイトには過去分を含めた災害情報一覧があり、令和6年能登半島地震についても被害の状況と政府の主な対応一覧が掲載されています。令和6年能登半島地震の対応は(災害対策基本法に基づき)防災担当大臣が本部長の「特定災害対策本部」から即日、総理大臣自身が本部長を務め陣頭指揮をとる「非常災害対策本部」に格上げされましたが、それら本部会議の資料等も、被害の状況と政府の主な対応一覧(再掲)からご覧いただけます。
 非常災害対策本部会議に併せて実施されてきた岸田文雄総理大臣会見等の様子は官邸ホームページあるいは政府広報オンラインから、石川県の「災害対策本部員会議」の様子や馳浩知事記者会見の様子は石川県ホームページから、ご覧いただけます。

内閣府防災・防災情報のページ

2.災害法の体系

 災害対策基本法、災害救助法、被災者生活再建支援法、激甚災害法はじめ基本的な法律は内閣府防災の所管であると書きましたが、災害対策関係法律は、これらに止まるものではなりません。内閣府防災のまとめた類型(予防・応急・復旧復興)別の災害対策関係法律整理表とともに災害対策に関する主な法律の一覧をご覧いただくと、幅広い法律が多くの関係府省に所管されている様子を確認いただけます。
 まず、災害に関する基本法である災害対策基本法は、防災に関し、国、地方公共団体およびその他の公共機関を通じて必要な体制を確立し、責任の所在を明確にするための法律であり、同法第34条第1項等に基づき防災計画が作成され、同法第2条第5号に基づき防災行政上重要な役割を有する公共的機関及び公益的事業を営む法人(指定公共機関)を内閣総理大臣が指定しています。大手コンビニエンスストアを指定するのであれば、パンやカップ麺、生理用品等の製造事業者や団体も指定すべきであるし、いわゆる物資支援(プッシュ型支援)については更に強化すべきと考えます。
 令和6年能登半島地震においては、地震が発災した1月1日に、新潟県、富山県、石川県及び福井県が県内35市11町1村に災害救助法の適用を決定、1月6日に石川県1月9日に富山県被災者生活再建支援法の適用を決定するとともに、1月11日の持ち回り閣議で「特定被害災害」(特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律)および「激甚災害(本激)」(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律)に指定されました。
 依然として、遅すぎるのではないか等との批判がなされています。しかし、例えば、平成28年(2016年)熊本地震の際にどのような段取り・スピードで必要な措置が講じられたかという事例も踏まえると、決して遅くない、むしろ迅速に措置を講じている様子を確認いただけるものと存じます。

主な支援スキーム・熊本地震の例

3.被害の状況と政府の主な対応

 先にご紹介した被害の状況と政府の主な対応一覧(再掲)に逐次アップされている令和6年能登半島地震による被害状況等をご覧いただくと、国や自治体が如何に広範な被害状況を把握するように努め、そして対策を講じているかを確認いただけますが、テキストの文字と大量の数字が並んでおり、行政実務に慣れた公務員でなければ、なかなか読むのが困難かもしれません。
 本稿では、こららの数字の元となっている関係機関のホームページ等を紹介し、できるだけ一次情報にたどり着きやすいように努力してみました。ご関心の事項について、実際にご確認いただければ幸いです。

令和6年能登半島地震による被害状況等

 1)地震の概要

 気象庁のホームページには令和6年能登半島地震の関連情報というページが設けられ、最大震度5強以上を観測した地震の発生状況を一覧できるとともに、個別の地震の詳細な震度について、地震情報または震度データベース検索を通じて確認できます。また、最大震度別地震回数表も提供されています。(解説ページもあります)
 国立研究開発法人防災科学技術研究所(略称:防災科研、NIED)が開設している令和6年能登半島地震に関する防災クロスビュー(基盤的防災情報流通ネットワークSIP4D等により共有された災害対応に必要な情報を集約したもの)についても、国土地理院などの情報が集約されており、有用です。
 
京都大学防災研究所産総研地質調査総合センターをはじめとする研究機関のレポートも貴重です。

令和6年能登半島地震に関する防災クロスビュー

 2)人的・住家被害等の状況

 消防庁ホームページ災害情報一覧に最新の「令和6年能登半島地震による被害及び消防機関等の対応状況」が掲載されています。
 消防庁のホームページの情報が(行政各部の情報をとりまとめている)内閣府防災ホームページの令和6年能登半島地震による被害状況等よりも更新が早いのは当然ですが、石川県ホームページの被害報告にある「被害等の状況について」の最新情報がタイムリーに反映されていないなど不備も散見されます。
 つまり、県域を越えた被害情報の全体像を知るには消防庁の公表資料に頼るか自ら集計するしかありませんが、人的・住家被害等の状況を迅速に把握し正確な数字を公表しているのは、少なくとも今回の令和6年能登半島地震についていえば、石川県の目的別・令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報(対策本部・被災状況)であり、緊急事態における広域行政=都道府県の役割の重要性が改めて確認できる事例といえそうです。
 最も確かなまとまった情報と考えられる石川県ホームページの被害報告にある「被害等の状況について」を見ると、"確認中"とされる輪島市を除くと「行方不明者」は珠洲市の1人となっています。他方、石川県が同時に公表している「安否不明者一覧表」に掲載されている安否不明者数が日々大きく増減するため戸惑いが広がっている等の報道がありますが、捜索や救助活動の円滑化のために「連絡が取れない人」を「行方不明者となる疑いがある者」として広く「安否不明者」として集計しているとのことです。最悪を考えて動くという観点から、石川県の判断は尊重されるべきだし評価できるものであると考えます。
 県レベルで言うと、新潟県の令和6年能登半島地震に関する情報(被害状況・お問合せ先)、富山県の令和6年能登半島地震に係る県内被害状況(人的被害・住家被害等)、福井県の令和6年能登半島地震福井県内の状況などそれぞれの県が県内の被害状況について公表していますが、石川県の目的別・令和6年(2024年)能登半島地震に関する情報(対策本部・被災状況)は、閲覧しやすさ等の観点で卓越していると感じます。
 なお、ヤフー「災害マップ」ではユーザーから投稿された災害の周辺状況をリアルタイムに確認できます。

安否不明者一覧表

 3)避難所等の状況

 今回の令和6年能登半島地震においては、避難者数の99%以上が石川県に集中しており、その石川県は「石川県防災ポータル」という外部サイトで避難所開設状況等を案内しています。左側の災害情報欄から避難情報、避難所情報、気象情報等にアクセスでき、とても使いやすい構成になっています。
 更に、石川県ホームページ本体には、「被災された方へ」と題して、被災市町ホームページ・SNSのリンク災害救助法被災者生活再建支援法避難所のこと住宅に被害を受けた方へくらしの情報(県税・預貯金・パスポート等)気象・道路交通・ライフラインなどの情報学校・教育関係外国人の方への相談窓口に関する情報、並びに「事業者の方へ」「被災地を支援したい方へ」が列挙されています。
 そのうち「避難所のこと」においては、被災地の避難所等から被災地外の一時的な避難施設(1.5次避難所)への移動支援について、更にはホテル・旅館等(2次避難所)となる宿泊施設を募集している旨の記載があります。
 入浴支援に関する情報についても、石川県ホームページの「避難所のこと」において自衛隊入浴支援予定が列挙されていますが、防衛省・自衛隊ホームページの「災害派遣」にも、自衛隊による入浴支援情報と給食支援情報が掲載されています。

2次避難所について

 4)自衛隊の災害派遣等

 防衛省・自衛隊は、石川県知事からの災害派遣要請を受け陸自中部方面総監を長とする統合任務部隊(JTF)を編成。10日以降、即応予備自衛官が生活支援等の活動に加わり、医師又は看護師の資格を有する予備自衛官も活動開始予定です。
 警察活動については警察庁のホームページに、消防活動については、総務省消防庁の災害情報のページに消防機関等の対応状況が掲載されています。

自衛隊の災害派遣

 5)孤立集落・要支援集落等

 今回の令和6年能登半島地震においては、外部からのアクセスが遮断された孤立集落が多いことが特徴といわれていますが、その実態は、石川県の「災害対策本部員会議」資料に掲載されています。

石川県「災害対策本部員会議」資料

 6)気象情報

 気象情報は、石川県の災害対策本部員会議に提示されている資料の中でもトップ・アジェンダであり、被災地支援に当たって最も重視すべき大事な情報です。
 具体的には、気象庁ホームページに、石川県・新潟県・富山県・福井県各市町の気象支援資料(毎日5時、11時、17時頃更新)に加え、航空や船舶向けの情報が掲載されています。航空関係情報としては、下層悪天予想図、能登空港など飛行場時系列予報・飛行場時系列情報、飛行場気象解説情報等が、港湾関係情報としては、波浪実況・予想図、港湾周辺の72時間先までの風と波の予想(輪島港/珠洲市長橋/飯田港/小木港/宇出津港/七尾沖/七尾湾/金沢港/富山港)等が掲載されています。
 金沢地方気象台のホームページにも、令和6年能登半島地震の地震活動と防災事項ポータルサイトが設けられ、より詳細な関連情報へのリンク集となっています。

金沢地方気象台

 7)道路港湾

 道路の復旧等に関する情報は、やはり国土交通省本省のホームページが網羅的です。被害状況報、報道発表資料、TEC-FORCEの活動状況、港湾施設の利用可否、緊急復旧(道路啓開)の状況、更には被災者の住まいの確保情報まで充実した内容となっています。
 国土交通省の北陸地方整備局のホームページにある「北陸地方整備局の対応について」も有用です。北陸地方整備局管内の各事務所のうち、金沢河川国道事務所および金沢港湾・空港整備事務所に対して「非常」防災体制が発令されています。 金沢河川国道事務所のホームページにおいては、管内における道路の通行止め状況、能登地方への出控えに関するお願い、支援対応状況等の重要な緊急情報が逐次掲載されています。金沢港湾・空港整備事務所のホームページには、輪島港の地震発生直後の映像データが掲載されている程度です。
 その上で、国土交通省は「道路情報提供システム」や「みちナビ石川」を通じて通行規制や道路画像を提供していますが、石川県が各地に設置した道路監視カメラの画像、積雪センサの積雪・気温情報および通行規制情報を提供する「石川みち情報ネット、「石川県河川総合情報システム」が有用です。公益財団法人日本道路交通情報センターによる道路交通情報、JR西日本の列車運行情報も参考になります。

石川みち情報ネット

 8)ライフライン

 電力については、北陸電力とともに北陸電力送配電のホームページが有用です。令和6年能登半島地震による志賀原子力発電所の影響については北陸電力がプレスリリースするとともに、原子力規制庁が原子力規制委員会を開催し原子力施設等への影響及び対応について報告を行っています。
 最新の停電情報については北陸電力送配電ホームページの「停電情報」から確認できます。北陸エリアの電力の需給状況が気になる方は、同じく北陸電力送配電ホームページの「北陸エリアでんき予報」から確認できます。
 都市ガスについては、ガス製造事業者、一般ガス導管事業の被害・供給支障については解消されており、例えば、金沢エナジーは1月4日に災害対策本部体制を解除しています。北陸ガスのホームページには、ガスメーターの安全装置が作動しガスが出なくなっている場合の対応方法が掲載されています。
 住民拠点サービスステーション(災害などが原因の停電時にも継続して地域の住民の方々に給油できるガソリンスタンド)については検索サイトが用意されており、営業可/営業不可/確認中の別が表示されます。
 水道については、石川県の災害対策本部員会議に提示されている資料に掲載されている石川県生活環境部の報告を確認する必要がありうそうです。公益社団法人日本水道協会のホームページには「地震等緊急時対応の手引き」が掲載されています。

住民拠点サービスステーション

 9)電話通信

 キャリアそれぞれのホームページに関連情報が掲載されています。
NTT西日本(外部リンク)
NTTドコモ(通信障害等)
KDDI
ソフトバンク
楽天モバイル
 なお、各キャリアが提供している安否確認サービスは以下の通り。
NTT西日本(災害用伝言ダイヤル)
NTT西日本(災害用伝言板(web171)
NTTdocomo(災害用伝言板)
au(災害用伝言板サービス)
softbank(災害用伝言板/災害用音声お届けサービス)
Y! mobile(災害用伝言板サービス)
楽天モバイル(災害用伝言板)

NTT西日本・災害伝言ダイヤル

 10)学校・教育

 冬季休業明けの授業について、被災して学校に登校できない児童生徒が学習や進学で不利益を受けないよう、柔軟な対応をすることなどについて文部科学省から通知が発出されています。
 独立行政法人大学入試センターは、「令和6年度大学入学共通テストにおける 特例措置の実施について」を公表しています。
 石川県教育委員会からの情報は、災害対策本部員会議資料(学校・教育関係)として公表されています。

大学入試センター

 11)医療・福祉

 被害状況については、石川県の災害対策本部員会議に提示されている資料に掲載されている石川県健康福祉部の報告とともに、厚生労働省ホームページの報告が参照できます。
 厚生労働省から「被災者の皆様へ」と題する情報は、生活等に影響する措置が記載されており、極めて有用です。
健康医療
介護福祉
雇用労働
年金
 発災直後のトリアージ・緊急治療等を行う「災害派遣医療チーム (DMAT)」、遺族の心のケアに取り組む「災害死亡者家族支援チーム(DMORT)」の活動にも敬意を表します。

厚生労働省

 12)事業者向け相談窓口

 石川県ホームページには、「被災された方へ」の情報とあわせて、「事業者の方へ」の情報もが列挙されており、中小企業・小規模事業者向け及び農林漁業者向けの相談窓口が設置されています。
(中小企業・小規模事業者)緊急相談窓口
(農林漁業者)特別相談窓口

特別相談窓口

4.自治体カウンターパート支援

 被災側と派遣側の自治体をペアにする「対口(たいこう)支援」(カウンターパート支援)という枠組みを通じ、全国の自治体が職員を派遣して被災地を支援しています。
総務省
関西広域連合
指定都市市長会

関西広域連合

5.支援者向け特設サイト

 石川県ホームページには、「被災された方へ」の情報とあわせて、「被災地を支援したい方へ」の情報もが列挙されており、特設サイト等が開設されています。
災害ボランティア
 災害ボランティアの事前登録等を行うことができます。

災害ボランティア

義援物資の提供義援物資の提供(自治体から)
 交通渋滞等により緊急車両等の通行の妨げとなるため石川県内への直接のお持ち込みは控えてほしい、受入先と調整後の搬入をお願いしたい、と繰り返し要請されています。

義援物資

災害義援金・支援金
 石川県では、日本赤十字社石川県支部及び石川県共同募金会と連携し義援金を受け付けています。

 義援金は、関係団体等で構成される石川県災害義援金配分委員会により配分基準等を決定し市町を通じて被災者の皆様に届けられますので公平性は担保されますが、被災者に分配されるまでに時間がかかります。

日本財団「支援金と義援金の違い」

(個人の方)ふるさと納税
 被災市町及び県では、ふるさと納税制度を活用した災害支援の寄附を受け付けています。(返礼品なし)
企業版ふるさと納税
「企業版ふるさと納税」の寄附受付も開始されています。

6.災害への備え

 国土交通省の防災情報ポータルサイト「防災ポータル」、「ハザードマップポータルサイト」、NHKの「災害列島・命を守る情報サイト」等には、災害リスクや災害への備えに関する広範な情報が掲載されています。

NHK・災害列島

(編集後記)

 ぶっちゃけ自分自身のために整理したものを公開してるだけですので、詰め切ったものではありません。

 他方、せっかく有用な一次情報ソースを列挙するのであれば、これも掲載せよ!等のご意見がありましたら、是非ご教示賜りたく。以下を通じてアプローチいただければ幸いです。X(旧Twitter)のDMでも、メールでも、なんでも結構です。

(編集履歴)

2024.1.10 公表
2024.1.11 激甚災害指定(閣議決定)等を追記
2024.1.11 自治体カウンターパート支援を追記

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