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「新しいもの嫌い」な上司をAIに誘導するための戦略・10/100

化石のような上司とAIの距離を縮めるために

会社には必ずと言っていいほど「インターネットもスマホも使ってこなかった化石のような上司」がいるものだ。

彼らは長年の経験と直感で仕事を進めてきたため、新しい技術に対して懐疑的で、時には強く拒絶することもある。
特にAIのような先端技術に対しては「役に立たない」と一蹴することもしばしばではないだろうか。

「うるせぇ、俺の話を聞け」のパターンだ。
そこまで行かずとも「機械に何が分かるっていうんだ」というスタンス。

では、そのような上司をAIの利用へと導くためにはどうすればよいのか。以下に、具体的な解決策を考えてみたい。

 

恐れと不安の根本原因を探る

まずは、上司がなぜAIを拒むのか、その理由を探ることが重要である。

多くの場合、拒否の背景には「新しいものに対する恐れ」や「自分が理解できないことに対する不安」がある。

こうした感情を理解することなくして説得を試みても、逆効果に終わることが多い。
直接的なアプローチではなく、まずは上司と対話を重ね、彼の不安や疑念を聞き出すことから始めるべきである。

たとえば、ある日、上司に「AIを使うと、仕事の効率が良くなるらしいですよ」という話を持ちかけてみる。
そのとき、上司が「そんなものに頼るなんて、俺には理解できん」と答えたとする。
ここで「あいつは化石上司だ」と諦めるのではなく、「何が不安なのか」「どんな点が気に入らないのか」と尋ねることで、相手の真意を探ることができる。

特に「俺の仕事が奪われるかもしれない」と思っている上司だとすれば、それは強すぎる拒否反応に言葉が出るだけで構えてしまうかもしれない。

このあたりはAI云々の知識ではなく、人間同士の関わりの方が重要であると言えるだろう。人蕩術あたりを読み直してみたい。

小さな利便性から始める

拒否反応を示している上司に対してAIの利用を強制するのではなく、まずは小さな利便性から始めるのが効果的である。

もし強引な使用を促せば、それだけ「マイナスな点」を見ようとするだろう。仮にも上司の方が権限は上位にあるのだ。その上位者が「これはこういった点で使用は控えるべきだ」と言われてしまえば、それが社内での決定事項にも成りかねない。

だから使用時は「まず小さく」が基本となる。

たとえば、日常的な業務の中で少しだけ役立つAIツールを紹介し、上司が自然と使いたくなるような状況を作り出す。
例えば、簡単なデータ集計や会議の議事録の自動化など、上司にとって直接的な負担を軽減するような機能を提案する。
それも難しければ、上司が持っている家族の写真をAIを利用して修正してあげるようなものでもいいかもしれない。

「その写真すごく良いですね、娘さんの写りが最高です! もしよかったこのAIツールで写真の明るさが調整できますよ。しかも後ろで邪魔してるおばちゃんを消したりも出来ちゃいます」

業務とは関係ない場所ならすんなり受け入れられるケースもあるのではないか。

あるいは、上司がよく使う文書をAIで自動翻訳させるなど、具体的な利便性を見せることで、「これは自分の仕事を奪う訳ではなく、自分の時間を作り出し、より社内の評価を引き上げるために役立つかもしれない」という意識を芽生えさせることも大事だろう。

ここでのポイントは、AIを「難しいもの」ではなく、「日常を少しだけ楽にするもの」として捉えさせることである。

身近な成功事例を示す

上司がAIを拒む背景には、「自分には理解できない」「使ってもうまくいかない」という思い込みがあることが多い。

このため、上昇意欲がある上司が相手なら身近な成功事例を示すことが非常に有効である。

たとえば、同業他社の事例や、似たような立場の他の上司がAIを導入して成功した話を紹介する。

「A社の部長がAIを使って営業成績を上げたそうですよ」といった具体的な例を挙げることで、上司の関心を引き、「自分もやってみる価値があるかも」と思わせることができる。

この際、単に他人の成果を強調するのではなく、具体的な取り組み方や導入の過程を詳細に伝えることが大切だ。

人によっては「大手の〇〇も使用していて」という牛の背中には乗っておけという形の迎合型上司もいる。このあたりは相手の人間性をしっかりと把握した上で、どのスタイルが成功率を高めるか見ておく必要があることは言うまでもない。

パーソナルアプローチでサポートを提供

上司がAIを使うことに対して抵抗感を持つ場合、個別のサポートが重要となる。

化石のような上司には、一緒に学び、実際に使ってみる機会を提供することで、「自分だけが遅れているとバカにされている」「恥をかいている」という感覚を払拭する。

具体的には、個別のサポートセッションを設け、AIの基本的な使い方を丁寧に教えることから始める。

さらに、上司の業務に直接関連する具体的なユースケースを設定し、その場で実践してもらうことで、「使えるかもしれない」という感覚を持たせる。

たとえば、「今度の会議で使う資料をAIで自動的に作成してみましょう」といった課題を設定し、一緒に取り組むことで、抵抗感を減らすことができる。

上司だけを学びの場に向かわせるのは困難

上司に対して個別サポートを提供する際、部下から教えられているという感覚が反感を生むことも考えられる。
この場合、学習の場への参加意欲を高めるためには、いくつかの工夫が必要である。

まず、学習の場をあくまで「上司の経験を活かす機会」と位置づけることが有効である。
例えば、AIの導入に関して「上司の豊富な業務経験をもとに、AIをどのように活用できるかを一緒に考える場」として提案する。

上司の経験や知見がAIの効果的な導入に欠かせない要素であると強調することで、彼が「教えられる側」ではなく「一緒に考える側」というポジションに立てるようにする。

また、学習の場をチーム全体の「研修」として設定し、他のメンバーも一緒に学ぶ形式にすることも有効である。
これにより、上司が「特別に指導されている」という感覚を和らげることができる。
特に外部の専門家やコンサルタントを招くことで、部下からの指導ではなく、「第三者からの学び」という形を取ると、抵抗感がさらに減少する可能性がある。

さらに、成功事例を積極的にシェアすることも重要である。
他の上司や経営陣がAIを活用して成功した事例を紹介し、それに続いてみることを提案する。
「他の上司が使っているなら、自分もやってみよう」と思わせることで、自然な形で学習に向かわせることができる。

これらのアプローチによって、上司の抵抗感を軽減し、積極的な姿勢を引き出すことが期待できる。

AIを彼の言葉で説明する

「AI」と聞くだけで上司が引いてしまう場合、別の表現を使って説明するのも一つの手だ。

AIを「デジタルアシスタント」や「データ分析のための便利ツール」として紹介し、難解な技術用語を避けて説明することで、理解しやすくする。

例えば、AIのことを「新しい部下」として例えることで、「この部下はあなたの指示をすぐに聞いて、作業を手伝ってくれる」と説明すると、親しみやすく感じてもらえるかもしれない。

上司をAIへと導くためには

化石のような上司をAIの世界へと導くには、急激な変化を求めるのではなく、理解と受け入れのための小さなステップを提供することが大切である。

恐れや不安の根本原因を探り、小さな利便性を提供し、身近な成功事例を示し、個別サポートを提供しながら、AIを理解させるアプローチが有効だ。

上司とのコミュニケーションを重ね、一歩ずつ橋を架けていくことで、新しい時代の流れに乗るための準備が整うのだ。

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