だからね。どんな情報をインプットするかが重要なのよ
私の妻は風水師だ。
風水師というと、「ファイナルファンタジーのジョブのようなものか」と聞かれることがあるが、それとは全然違う。「今年の方角はどっちなの?」と聞かれることもあるが、そういうのともちょっと違う。
では、風水師とは何なのか?
私のつたない理解によると、何やら風水とは、運を創ることができるもので、そのプロフェッショナルが風水師ということ。
間違ったことを言ってしまうとマズイとは思うのだが、そのうち私の理解が追いつきしだい、正しく訂正してゆきたいと思うのでお許し願いたい。
さて。
風水で運を創る事ができるのであれば、私も創ってみたい。
そう思い、妻に運の創り方を聞いてみた。
が、しかしだ。
これまでに得られた回答は
「運とはそもそもなになのか」
「運を取扱可能なものとして定義しなさい」
「運は情報」
という、なんだかよくわからないことばかり。
そしてだ。
淹れたてのコーヒーが飲めない猫舌の彼女が先ほど言った言葉に、私は混乱を覚えていた。その言葉とは・・・
「ゴミをいれたらゴミが出てくるのよ」
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私「なにそれ?GIGOのこと?」
GIGO(ギゴ)とはコンピュータの用語で「Garbage In, Garbage Out」のこと。
日本語に訳すと「ゴミをいれたらゴミがでる」なのだが、妻が言った言葉そのものである。まさかとは思いながらも、聞いてみたのだが。
妻「そうそれ。さすが理系。パソコンとか詳しいね」
いや、それって!それなのか!風水まったく関係ないではないか!
そもそもだが、おまえも理系だ!とは、心優しい私は口にはしない。
私「えーっと、どういうことかな?」
なるべく平静を装い対応する私。
妻「さっき話した、マザー・テレサとかサミュエル・スマイルズの言葉があったと思うけど。あれって、考えていることが人生の結果になるってことじゃないかって、さっき言ったでしょ?」
私「まぁ、識者にはいろいろと突っ込まれそうだが。だいたいあってるとは思う。」
妻「だったら、何を考えるのか、ってところを、自分自身で管理できると良いねって。なら、思っていることってどこから来るかってことなんだけど・・・。いろいろ解釈があるとは思うんだけど、思いや考えって感情からくる部分が多いのよね」
そうして、妻はコーヒーを一口飲んだのだが、すぐさまアチっ、と飲むのをあきらめてしまった。いや・・・かなり冷めていると思うのだがな。
妻「気分が悪いときは悪い思いや考えをしてしまうし、気分が良いときは良い思いや考えがわいてくる。なんとなくわかるかな?」
私「うーーん」
私は、空になったカップに2杯目を注ぎながら、少し空中を眺めた。
いや、なにかがおかしい。ひっかかる。・・・そうか。
私「気分が良くても悪いことを考えている人っているんじゃないの?」
妻「良いことってのは、自分がワクワクするかどうか、ってニュアンスかもね。なので、自分さえ良ければいい人がいたとすると、自分の利益にだけなることを考えることがワクワクすることになる、かもね」
なんとなく意味は理解できるが・・・。でも、例外ケースを探せばいくらでもあるきがする。
妻「あー。ちょっと説明間違えたかな。気分が良いとポジティブな考えになるし、気分が悪いとネガティブな考えになる、くらいかな」
私「なるほど」
妻「で。その感情ってのがどこから来るかっていう話なんだけれども。」
私「どこからくるの?」
妻「五感からくるのよ」
私「五感??? 視覚とか聴覚とか?」
妻「そう。視覚、触覚、聴覚、嗅覚、味覚。
①視覚(Visual)
②聴覚(Auditory)
③触覚(Kinesthetic)
④嗅覚(Olfactory)
⑤味覚(Gustatory)
頭文字をとって、VAKOG(ヴェーコッグ)とかいうこともあるみたいね。」
私「べーこん・・・」
私のつぶやきを無視して、妻は話しを続けた。
妻「池谷先生ってしってる?脳科学の」
私「あ、東大の先生だっけ?」
妻「そう。東京大学の池谷裕二(いけがやゆうじ)教授。
先生の著書の中で、脳はもともと何のために存在するのかを考えると、
「外界の情報を処理して、適切な運動を起こす入出力変換装置」
であり
「身体感覚(入力)と身体運動(出力)の処理に特化した組織」」
と書かれているわ。
身体感覚から得られた情報は、脳で処理されて、身体運動へと変換されるってことね。」
私「あぁ。で、身体感覚ってのが五感だと」
妻「そうゆうこと。」
そこまで語った彼女は、すっかり冷え切ったコーヒーを一口のみ、満足そうだ。
猫舌にも程がある。
妻「例えばね。五感から不快な情報を入れると、脳では不快な感情が生まれ、そして望ましくない行動として現れる。あとは、マザーとかスマイルズの言葉にあったとおり、運命や人生となってしまうのよ」
マザーはマザー・テレサ、スマイルズはサミュエル・スマイルズのことであろうが、その略し方だと通じないこともあるのではないだろうか。
妻「まとめるとね。五感からゴミ情報をいれたら、そこから出る行動はやっぱりゴミなのよ。だからどんな情報をインプットするかが重要なのよ」
私「え、じゃあどんな情報をインプットすればいいの?」
妻「それはね・・・」
そう言って、彼女は2杯めのコーヒーをカップに注ぎ入れようとポットを斜めにした。が、そこからはわずかの量のコーヒーしか出てこない。しかたがない。猫舌の彼女がコーヒーを飲める温度になるころには、大半を私がのんでしまっている。
そして、私は彼女に睨まれる前に、おかわりのコーヒーを淹れにキッチンにいくのである。
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