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方法はたくさんあるわ。そして、そのどれを選ぶのかは自由よ

私の妻は風水師だ。

「風水」と言われても、おそらく人によってイメージが違うことだろう。
「おまじない」だったり、「ドクター・コパ」さんや「ユミリー」さんのようなものだったり、その他にも「統計学」だと考える人もいることだろう。

実のところ、「風水とはいったいなになのか」と問われて、私は上手く回答できる自信はない。自信はないが、これまでに色々と妻に質問をしてきたことで、理解は深まってきている。今のところのわかっているのは、風水は運を創るツールであるということ。そして、風水を使いこなすプロフェッショナルが風水師ということ。

では実際に運を創るにはどうしたら良いのか。今、まさにそのことを彼女に問うているところなので、ある。

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さて。
「寝室が大事である」と、風水師の妻は言っている。その理由は最も無防備になる空間であるから。

少し調べたところによると、交感神経と副交感神経というのが関係していそうである。アクティブに活動しているときは「交感神経」優位、リラックスしたり睡眠をとったりするときは「副交感神経」優位。おそらく寝室は副交換神経が優位になるのが望ましいのであろう。

その理論は理解できるのだが、さらに「壁の色を薄いピンクにすると良い」などとも言い始めているのである。

なんでも「ピンクは筋肉が弛緩(しかん)する色」であるため、リラックスを促進することができるらしい。『刑務所 ピンク』ググってみるとヒットするのだが、スウェーデンの刑務所で実際に検証がされたことがあり「ピンクは人間の怒りや攻撃的な感情を抑制する作用がある」とされている。イライラしたままだと、「交感神経」優位なので、良質な睡眠は得られない。イライラを抑制することで、「副交感神経」優位な状況を生み出し、良質な睡眠を得よう、ということだと思う。

なるほど。理論はよくわかる。
わかるのだが・・・、そうは言っても、男性にはピンクはちょっと・・・。


すると妻は突然、

妻「no free lunch」

と言いだした。
ノーフリーランチ?「タダの昼メシは無い」ってことか???

私「無料の昼飯は無いってこと? 転じてタダより高いものはないとか?そういうこと?」
妻「ちょっと違う。ノーフリーランチ定理ってのがあるよの」

私はiPhoneで検索をかけた。wikipediaの記事がトップヒットしたので、それをクリックする。

私「えっと・・・。なんか探索アルゴリズムとか書かれてるんだけど、、、なにこれ?」
妻「えーっとね、wikipediaのちょっと下の方に載ってるわよ。

あらゆる問題で性能の良い汎用最適化戦略は理論上不可能であり、ある戦略が他の戦略より性能がよいのは、現に解こうとしている特定の問題に対して特殊化(専門化)されている場合のみである

って、これね」

私「はぁ。」
妻「結局、なんにでも有効に働くものってのは無いのよ。ある事象について有効に働くものは、その事象に対して特殊化されているだけ。とある事象に性能がでる方法を、その他の事象に適用したとしても、性能が出るとはかぎらない」

あぁ、、、なるほど。確かにそういうことはよくある。

妻「だから、『壁を薄いピンクにする』というのは、極端に特殊化された手法ってことね。すでに実証された結果もあるので、筋肉を緩めたい空間には取りいれるといいんだけど。」
私「でも、なかなか難しいよね」
妻「そうだと思うわ」

私「え・・・。結局どうすればいいの??」

妻「結局ね、今回のケースはカナリ特殊な例を出したんだけど。風水を実際に取り入れようと思った場合、こういうことがよくあるのよ」

私「『こういうこと』って?」
妻「玄関に『八角形の鏡を置きましょう』とか、『財布は黄色にしましょう』とか『トイレには何色のアイテムを置きましょう』とか」
私「あぁ・・・。」
妻「こういう、決まりごとっていうか、ルールっていうか。色や形が限定されているので、自分はあんまり気に入らないんだけど『風水的に良いとされているから置いている』っていうそういうケース」

私は少し考えた。
そもそも、風水というのは、なにかしらのルールや手法があって、その手法を実践することではないのか?

私「っていうか、風水ってそういうものじゃないの?そういうルールや方法を体系的にまとめたものが風水。そこから、自分の望む結果を得たいものを、選択して実践することではないの?」

妻「その質問には『流派によるのかも』、と回答しておくわ。私も、すべての流派に精通しているわけではないからわからないわ。でも、言えるのは・・・」

そこで一呼吸おいてから話しを続けた。

妻「方法はたくさんあるわ。そして、そのどれを選ぶのかは自由よ」

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