見出し画像

「娘たち」 茨木のり子

茨木のり子さんの詩集を読みました。

職業柄「娘たち」の詩が心に沁みたので書きます。

「娘たち」

イヤリングを見るたび おもいます。

縄文時代の女たちとおんなじね

ネックレスをつらねるたびに おもいます

卑弥呼のころと変わりはしない

指輪はおろか腕輪も足輪もありました

今はブレスレット アンクレットなんて

気取ってはいるけれど

頬紅を刷(は)くたびに おもいます

埴輪の女も丹(に)を塗りたくったわ

ミニを見るたびに おもいます

早乙女のすこやかな野良着スタイル

ロングひるがえるたびに おもいます

青丹(あおに)よし奈良のみやこのファッションを

くりかえしくりかえす よそおい

波のように行ったり 来たりして

波が貝殻を残してゆくように

女たちはかたみを残し 生きたしるしを置いてゆく

勾玉(まがたま)や真珠 櫛やかんざし 半襟や刺子

家々のたんすの奥に 博物館の片隅に

ひっそりと息づいて

そしてまた あらたな旅立ち

遠いいのちをひきついで さらに華やぐ娘たち

母や祖母の名残の品を

身のどこかに ひとつだけ飾ったりして

茨木 のり子 (いばらぎ のりこ 1926〜2006)

戦後の日本を代表する女性詩人にして、童話作家、

エッセイスト、脚本家

この詩を読むと

戦後の日本の風景が目に浮かびます

大切なものを握りしめ

凛とした女性の

生きる姿勢が感じられて好きです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?