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【声劇】怪しい人が来ました!どーしよ!

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08

♀=2
約30分~40分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。
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登場人物
OL:ただのOL
女性:何やら怪しげな勧誘をしに来た人

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【アパートのドアを開ける】

OL:ただいまぁ…うぅぅ寒い、暖房暖房っと…

OL:おっかしいなぁ、今日早く帰れるはずだったんだけど……ま、早く帰っても話し相手いないし、いいんだけどさ。残業肩代わりしてあげるなんて、私やっさしーい!

【リビングに移動し、窓の外を見る】

OL:うー寒い…えー、明日積もんのかな…最悪…

【インターホンの音】

OL:ん?…こんな時間に誰だろ…はーい…

【モニターで応答する】

OL:はい

女性:夜分遅くに失礼しますぅ~、あのぉ、いきなりぶしつけとは存じますが~お姉さま今幸せですか?

OL:……はい?

女性:ええ、いきなりこんなことを聞かれて、お困りになるかと思いますがぁ。わたくしに何か、お姉さまの幸せをお手伝いできることはないかと思いまして~

OL:……話し相手みっーけ(小声)

女性:…なにかおっしゃいましたぁ?

OL:いいえ、それでわざわざこちらまで来てくださったんですか?

女性:そうなんですぅ~、お姉さまお仕事は何をされているんですかぁ?

OL:…私ぃ、今仕事してないんですよぉ…

女性:そうなんですねぇ…でも、いいと思いますよぉ、お姉さまがやりたいことができるのが、お姉さまにとって一番いい人生ですからねぇ

OL:お優しい言葉をありがとうございますぅ…この季節にすっごく心にしみますぅ

女性:あらあらぁ、かなりつらい思いをされていらっしゃったんですねぇ

OL:そうなんですぅ…お姉さん服可愛いですね、ピンクのカーディガンなんて

女性:あら、ありがとうございます。お気に入りなんですよぉ、いつでもこれを着ていると幸せな気分になれるといいますかぁ

OL:そうなんですねぇ、素敵だと思いますよ?

女性:ありがとうございますぅ…。あの…っ(くしゃみ)…もしよろしければぁ、お顔をみせていただけませんか?…(寒さで身震い) モ、モニター越しではなく、一生懸命なあなたと、ちゃんとお話させて頂けたらと思うのですが…

OL:…っ…(泣くふり)

女性:…っ、どうかなさいました?

OL:っ…すみま、せん…っ、次の仕事を見つけないとって…親にもっ、心配かけさせたくないってっ…焦ってたらっ…何にも手につかなくて……っ、お部屋を、見せられるっ…状態じゃ…

女性:あらあらあらまぁ…そ、それならば無理は申しませんよぉ

OL:ほんとっ…ですか…っ、お姉さんっ……やさしい……っ

女性:いえいえぇ、あらどうしましょうわたくしったら、勇気を出してお話してくださった方を泣かせてしまった…

OL:…っ(涙をぬぐうふり)…いいえ、お姉さん、ありがとうございます。もしよかったら、お姉さんのこと、もう少し聞かせてもらえませんか?

女性:あ、ええ…もちろんですよぉ?

OL:じゃあ、お姉さん、さっき私に幸せですかって、聞いてくださったじゃないですか。お姉さんはどんなお仕事をされている方なんですかぁ?

女性:そうですねぇ、わたくしは「幸せの環(わ)」という団体の会員でしてぇ

OL:そうなんですね、それはどんな団体なんですか?

女性:ご興味がおありですかぁ?いいところですよぉ…会員の方は、家族ぐるみでみんな仲良しですし。比較的女性が多いですし、ご安心いただけますよぉ。みんなで集まってお食事会をしたり、お悩みを相談し合ったりして、和気あいあいとしたコミュニティになっておりますよ。

OL:たしかに…献金の問題とか、最近言われてますもんねぇ

女性:そうですねぇ、いろいろ言われますけれど、うちはけっして要求したりはいたしません。会員の方々が、自分の意志で日頃の感謝のしるしとしてお出しくださるものを、ありがたく頂戴しておりますよぉ。

OL:なるほどぉ…ちなみに、その教えとか、ルールはどういったものなんですか?

女性:はぁい!それについて詳しく書いてあるものが、こちらのパンフレットになりますのでぇ、ポストの中に入れさせていただいてもーー

OL:——お姉さんから、直接お聞きすることはできないんですか?

女性:…ちょ、直接、ですか?

OL:だって、パンフレットって、その団体の方が盛って書いた部分ばかりじゃないですかぁ…あたかも頑張ってます!みたいな?私ぃ、会社の面接とか行って話を聞いて…そんなのばっかりで、パンフレットが信用出来なくなっちゃって…

OL:ですから、いち会員としての、親身になってお話を聞いて下さったお姉さんの言葉で、直接聞きたいんです!…だめですかぁ!?

女性:そ、そうですか、ありがとうございます…

女性:(寒くて身震い) …で、ですが、私もそろそろ事務所の方に戻らなくてはいけませんし…それに(身震い) カーディガンだけでは、ちょっと寒くて──

OL:———しかも聞いてくださいよお姉さん、ポスト今ぁ、ストーカーから手紙がたくさん来てて、埋まっちゃってるんです。…すごいんですよぉ、お姉さん見て下さいよぉ!見えます!?見えないかなぁ……扉を開けるのも、家に入るのだけでも大変なんです!!ほらっ、少しの隙間もないんです!!

女性:あらぁ…そ、それは大変ですね…

OL:ちなみにぃ、その集まりは、どんな教えを守っているんですか?

女性:は、はい……お姉さまは、キリスト教をご存じですよね?

OL:はい、大学時代に少し興味を持ってました

女性:あら、ならお話が早い…そのキリスト教には、黄金律(おうごんりつ)という教えがあるんです。自分のことを愛するように、ほかの人のことも同様に愛しなさいと。

OL:あ、聞いたことあります!隣人愛とも言いますよね?

女性:そうなんです、その教えがもとになっております。ほかの人を自分のように愛し、困っていればお互いに手を差し伸べ合うのです。そうして相手に笑顔になってもらうことが目的なんですよぉ

OL:すごくいいですよねぇ、それを頭ではわかっていても、実践するのは本当に難しいはずなんです。でもお姉さんはそれをやり遂げている…本当にすごいです!私、お姉さんのことすっごく尊敬します!

女性:いいえいいえ、当然のことでございますよぉ————

OL:——ですからぁ、団体の教え『隣人愛』をその身で実行し、皆に──私に笑顔を分け与えてくれる、そんな私の尊敬するお姉さんに、ぜひとも教えて貰いたいことがあるんです!

女性:は、はいどうぞ?

OL:キリスト教というのは、全知全能の神が、イエスキリストを現世に遣わし、彼は迫害を受け処刑されるも、3日後によみがえったという伝説からできた宗教ですよね?

女性:は、はい…そうですねぇ

OL:そして信者たちによってヨーロッパ各地に広まって、テオドシウス帝によってローマ帝国の国教に指定されてから、カロリングルネサンスのようなぁ、キリスト教研究が進んでいった時代がありましたよねぇ?

女性:は…はぁ、そうなんですねぇ

OL:それでぇ、ずっと気になってるんですけどぉ…どうして、キリスト教は愛とか善を説いたりする宗教なのに、信者が罪を犯したりするんですかぁ?

女性:……なぜ、信者が、罪を犯すのか…ですかぁ…

OL:はぁい!私ぃ、ずーっと気になってるんです。お姉さん詳しそうだから、教えてほしいなぁって!

女性:そ、それ、は……それはですね…

OL:お姉さんの考えで結構ですので!楽しみにしています!わくわく!

女性:えーっと…そ、それは…か、会員の方々の中には、いろいろな職業の方とか、さまざまな過去をお持ちの方がおいでてですねぇ———

OL:あ、そうなんですね!でも、こうも考えられません?信者の中にもいろんな人がいるーっていう論点だと、その宗教の教えが、いまいち浸透していないことになるんですよ?

女性:ど、どういうことです…?

OL:だってぇ、お姉さん?いろんな信者がいたとしても、入信するのは、みーんなその教えに共感して、かつ自分もその教えにのっとって生活しようと考えるからですよね?それなら教えを忠実に守って欲を抑えたり、ほかの人を助けるみたいな、良い行動しかしないはずじゃないですか?

女性:…っ、は、はぁ

OL:その教えを信じている人は、みんな救われるんですよね?だったら、悪いことなんてしなくないですか?その教えを信じているなら、みんな幸せなんですよね?どうして自分が幸せでいるのに、ほかの人を不幸にする罪を犯したりするんでしょう?

女性:そ、そういう考えも…あり、ますね…

OL:ということでぇ、私は、「いろんな信者がいるから」ぁっていう回答には少し疑問の余地があると思うんですよねー…だから、ほかの答えもないですか?お姉さんとお話するのすっごく楽しーです!

女性:えっ…あ、あの、わたくし、そろそろ戻らな———

OL:———お姉さんひどい!さっき私の幸せを手伝いたいっておっしゃったじゃないですか!

女性:あ、ああ…そ、そうでしたね、申し訳ございませ———

OL:———そうですよね…お姉さんだって、早く帰りたいんですよね?他人の話とか本当は興味ないですもんね…ストーカーに付きまとわれて、就活も上手く行かないような、なんの取り柄もない女の話し相手なんて、時間の無駄ですもんねぇ

女性:あ、あの…

OL:(続けて)私の話に無理に付き合わなくていいんですよお姉さん…家でご家族が待っていたりするんですよね?良いなぁ!!…あーあ…私なんかは、このまま1人でさみしく死んじゃうのかなぁ、話し相手もいないまま、孤立したまんま、一生幸せを感じることなく、たった一人で、誰に看取られることもなく死んじゃうんだろうなぁ…

女性:っ…そんなことないですよ!お姉さまにお声がけしたのは、わたくしなんですから!なんでも仰ってください!!お姉様のお時間が許す限り、いつまでもお話をお聞きします!!お姉様はおひとりではないんですから!!…ね?

OL:……っ、やっぱり、お姉さん優しいですねっ

OL:じゃーあ、お言葉に甘えて♪なんで宗教を信じている人でも悪いことをしちゃうんですか?さっきのと違うお答えもお聞きしたいです!

女性:え?…え、えっと……

OL:えっ!まさか…ないんですか…?お姉さんのようなお詳しい方でも、難しいのでしょうかぁ…

女性:あ、あの……げ、原罪…とか

OL:とかって何ですかお姉さん、そういう小さくて何気ない言葉、すっごい気になっちゃいます!

女性:げ、原罪…で……あ、あの…、お部屋で…お話、を————

OL:————(笑いながら)もう~お姉さんったらぁ、さっき言ったじゃないですかぁ! 手紙で扉が開けられないのと、部屋が見せられる状態じゃないってぇ!!忘れないでくださいよぉ!あはははっ!!お姉さん、おもしろぉい!

女性:そ、そうで…っ…したね…

OL:あれれぇー? さっき、私の時間の許す限り付き合ってくれるって言ったのに、お姉さん、もしかして困ってらっしゃるんですかぁ?

女性:…あ、…あの…さむ…

OL:あぁっ、なんか今風強かったですよね!お姉さん早く答えてもらっていいですか?答えてもらったら、私多分すっきりするんで!そしたら、解放されますよ♪ まぁ、答えにもよりますけど?———

女性:あ、あ…あの…

OL:(続けて)なんかぁ、いろんな人が納得できるような、普遍性のある答えを期待してます!だって、お姉さん信者なんですよね?信者なんだったら、知識の乏しい私たちにいろんなこと教えてくださって、哀れな私たちを救ってくださるのかなーって思っているんですけど違います?———

女性:……たす………け………

OL:(続けて)私ぃ、今までいろんな人の本読んだんですよぉ…宗教を研究している学者さんの本とか、ちょっと怪しげな本とか。でもぉ、なんかそれらしい話は全くなくって、原罪がどうだーとか、必要悪だーとか、ぱっとしない答えばっかりで、けっこううんざりしてたんで——

OL:——おねえさーん、聞いてますかぁ?

OL:あれぇ…?もしもーし…お姉さぁん?

女性:……

OL:……1、1…0…っと…

OL:…もしもし?あのぉ…外に怪しい女性がいるんですよぉ。こんな寒い夜なのに薄いピンクのカーディガン着ててぇ…はい、コートじゃなくて…なんか様子がおかしいので、確認していただけると、はい…はい…

OL:…あ、わかりましたぁ、ありがとうございます。では、失礼しまぁす。

【電話を切る】

OL:…このまま連れてってもらお。こんな寒い中で、女性が野宿なんて危ないもんねぇ…やっぱ私、やっさしーい!

【終わり】

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