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【声劇】じんぎ なき えんじ(6人用)

利用規約:https://note.com/actors_off/n/n759c2c3b1f08

極道モノであり、園児モノ。
二つの楽しみ方が出来るシナリオとなっています。
配役の説明は本文の最初をご確認ください。

極道バージョン
♂:♀:不問=4:1:1
園児バージョン
♂:♀:不問=0:5:1
約90分~120分
上演の際は作者名とリンクの記載をお願いします。
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【説明】
極道バージョン でお楽しみいただく場合。
全員が大人として演じて下さい。

園児バージョン でお楽しみいただく場合。
全員が ショタ or ロリ として演じて下さい。
※コスキ先生とヤジマは除く。

極道 と 園児 の 混在 はたぶん面白くないので、私は オススメ はしません。
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【登場人物&兼任表 / 極道バージョン】
♂ユウト
♀姐さん・ユカ
♂ヤマト
♂ミツル・エイジ・タカシ
♂♀コスキ先生・ヤジマ
♂ヨシオ・ナオキ・マサト

【登場人物&兼任表 / 園児バージョン】
♀ユウト
♀姐さん・ユカ
♀ヤマト
♀ミツル・エイジ・タカシ
♂♀コスキ先生・ヤジマ
♀ヨシオ・ナオキ・マサト
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ユウト / 仁義園に転園してきた男の子。
姐さん / 組長の代わりにウサギさん組をまとめている。
ヤマト / 仁義園ウサギさん組の男の子。
ミツル / 仁義園ゾウさん組の組長。
ヨシオ / エセ関西弁大歓迎。
コスキ先生 / 子供が大好きでいつも笑顔。
ユカ / 比較的普通の子。
エイジ / とにかくヤンチャな男の子。
タカシ / ミツルと兼任。仁義園シカさん組組長。
ヤジマ / コスキ先生と兼任。ヨシオの親御さん。エセ関西弁大歓迎。
ナオキ / ヨシオと兼任。仁義園ウサギさん組組長。常に楽しそう。
マサト / ヨシオと兼任。仁義園シカさん組の腰巾着。
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【じんぎ なき えんじ〜壱の章〜】

ユウト:「じんぎ なき えんじ、壱の章。『仁義保育園』」

(間)

エイジ:「おぉおぉおぉっテメェ! 誰に断って、このシマで遊んでくれてやがんだ! ごるぁっ!! あ"ぁ!?」

ユカ:「ひぃっ……で、でもここは──」

エイジ:「ここは今日この瞬間から、俺達ゾウさん組のシマになったんだ!
おままごとをしたいってんなら、ショバ代を払って貰わねぇ〜となぁ!!」

ユカ:「そ、そんな……」

エイジ:「分かったら、さっさとケガしてイタイイタイなる前ににやがれっオラァ!!」

ユカ:「ひ、ひぃ〜ん!!」

エイジ:「──おぉっとぉ〜♪ (襟を捕まえる)」

ユカ:「──うぐぅっ!?」

エイジ:「忘れる所だった……
俺達のシマで十分遊んだんだ……今までの『みかじめ料』しっかりと払って貰おうか!!」

ユカ:「そ、そんなぁ〜! まだ1分も遊んでないのに──」

エイジ:「10秒でおやつのクッキー1つ!!
これがゾウさん組の相場なんだよっ!」

ユカ:「っひぃ〜!!」

エイジ:「グダグダ言ってやがると、滑り台を頭から滑り下りる事になっちまうぞっあ"ぁん!!」

姐さん:「ふぅ〜、下らないねぇ〜」

エイジ:「……あ"? 誰だ、今言ったやつぁ……女ぁ〜テメェか? もう1回言ってみろ……なんて言ったんだ? あ"ぁ〜ごるぁ!!」

姐さん:「……知能が低過ぎて、人間の言葉すら分からないのかい?
この砂場は、ウサギさん組でもコケコッコさん組でも、皆がそんなへだたりを気にする事無く、仲良く泥んこになってお遊び出来る場所なのさ……
それを『自分のシマだ』とか、下らない事をほざくなんざ……『おかあさんといっしょ』の体操のお兄さんですら、笑う事を忘れちまうってもんさね」

エイジ:「俺が誰か分かって言ってんのか、あ"っ!? 俺はゾウさん組の──」

姐さん:「──んな事ぁ〜知ったこっちゃ無いねぇっ!!
園児が仁義じんぎいて、見栄張ってんじゃないよっ、このド三一どさんぴん小童こわっぱがっ!!!」

エイジ:「──っんだとゴルァ!!
女だからといって、もう容赦はしねぇ〜!! 泣いでごめんなさいしろや!! ゴルァ!! (殴りかかる)」

ユウト:「──おぉっと (腕を掴む) 暴力はいけねぇなぁ。
とくに、こんな可愛らしいお嬢さんに拳を振り上げるなんざ、外道げどうのする事だ」

エイジ:「っんだとゴルァ! 急に出てきやがって、まずはテメェから── (腕を捻られる) ──イッデデデデデ!! (以後台詞に被せて痛がる)」

ユウト:「お嬢さん、大丈夫ですかい?
まったく、無茶をしなさる……その綺麗な顔に傷でもついちゃ〜、お嬢さんのパパとママが、食後のプリンも喉を通らなくなっちまうってんだ」

姐さん:「余計なお世話だよ……
まぁ助けて貰ったんだ、一応お礼は言っとくよ……ありが──」

ユウト:「──いや、礼なんて野暮やぼなモンはいらねぇ。
俺はアンタのその心意気に惚れて、思わず飛び出しちまっただけ……お気にしなさんな」

姐さん:「ふふっ、そうかい?
とりあえず……そのお手てを放してやったらどうだい?」

ユウト:「ん? おっと──アンタに見とれていて、すっかり忘れてた……
ほらよっ (手を放す)」

エイジ:「──だっ!? ち、ちっくしょうがっ……お、終わりの会で先生に言いつけてやるからな!! お、おお、覚えてやがれ!! (逃げ出す)」

ユウト:「あっはっはっはっ! 捨て台詞も三流ときたもんだっ!!
あっはっはっはっ!!!」

姐さん:「……アンタ、この保育園では見ない顔だね?
名はなんて言うんだい?」

ユウト:「おいおい、人に名前を尋ねる時は、自分から名乗るってのがスジじゃねぇのかい?」

姐さん:「あぁそうだったねぇ、そいつは失礼したよ──」

(ヤマトが必死に走って来る)

ヤマト:「──あねさぁ〜ん! 姐さん姐さん姐さぁぁ〜ん!!」

姐さん:「……ヤマト?」

ヤマト:「で、でぇじょうぶでございやすかい!?
くっ! テメェ〜だなっ!? 姐さんにお手てを出そうとしやがった、不貞ふてぇ野郎ってのはぁ!!
姐さんっ、アッシが来たからには、もう大丈夫でございやす!!
こんなヤツァ〜、アッシがチョチョイのチョイで叩きのめしてやりまさぁ!」

姐さん:「おやめ、ヤマト……」

ヤマト:「──止めてやらねぇ〜で下せぇ!
アッシのこの命っ、この仁義保育園に入園した時から、姐さんの為に散らす覚悟は出来てんで──」

姐さん:「──ヤマトっ!! アタイの言う事が聞けねぇのかいっ!!」

ヤマト:「──っ!? へ、へぇ……」

姐さん:「恥ずかしいマネするんじゃないよ……
(ため息) この人はアタイを助けようとしてくれたお人さ」

ヤマト:「ぬぇっ!? そ、そうだったんでございやすか……そ、そいつぁ〜すいやせん……」

姐さん:「アンタも、すまなかったねぇ。ウチの若いのが早とちりしちまって」

ユウト:「いや、気にする事はねぇ。
お嬢さんがどれだけ大切にされているか、よく分かったからよ──」

コスキ先生:「(遠くから) 何してるのぉ♪! 先に園長先生にご挨拶しないとでしょ♪ ほら行くよぉ♪」

ユウト:「ん?
『 (遠くに答える様に) あぁすまねぇ!! すぐに行く!!』
……先生に呼ばれたらには、行かねぇ訳にはいかねぇな。
じゃあ俺はこの辺で──」

姐さん:「──アンタ!」

ユウト:「ん……なんだい?」

姐さん:「……いや、狭い保育園だ。
自己紹介は、またその時にでも……
園長先生への挨拶……気張ってきな」

ユウト:「へっ……ありがとよ (立ち去る)」

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【じんぎ なき えんじ〜弐の章〜】

姐さん:「じんぎ なき えんじ、弐の章。『ウセ ユウトの仁義』」

(間)

ヤマト:「『ゾウさん組』の奴ら、最近勢力を拡大しようと躍起やっきになってきてやす……
姐さん、このままお口にチャックで見ているだけで良いんですかい?」

姐さん:「……」

ヤマト:「アッシら『ウサギさん組』にも面子めんつってのがありやす!
アッシは、これ以上アイツらに好き勝手されているのが我慢なりやせん!!」

姐さん:「面子めんつでおまんまが食えりゃあ、そんな楽な話は無いんだよ」

ヤマト:「そんな事を言ってやすと、このウサギさん組も奴らに潰されちまいやす!!
姐さん!! 今こそカチコミを──」

姐さん:「──馬鹿を言ってんじゃないよ!!!」

ヤマト:「──っ!?」

姐さん:「……そんな事をして『あの人』が喜ぶと思ってるのかい?」

ヤマト:「くっ……アニキは、もういないんスよ……
アッシらで、このウサギさん組を盛り立てていかなくちゃ……ならねぇんスよ……」

姐さん:「それでも──それでも『あの人』がまとめてきたこの『ウサギさん組』を地に堕とす事は、アタイには出来ないね。
このウサギさん組、みんな揃って『仁義園』を卒園するんだ……それが『あの人』への恩返しなのさ……」

(扉が開く)

コスキ先生:「はぁ〜い、みんなぁ〜集まってぇ〜♪
今日は、みんなに新しいお友達を紹介しまぁ〜す♪
ほら、入っておいでぇ〜♪」

(扉からユウトが入って来る)

ヤマト:「──なっ!? おめぇは──」

コスキ先生:「は〜いっ♪ 今日から、みんなと一緒に楽しく遊んでくれる『ユウト』君です♪
自分で自己紹介できるかなぁ♪?」

ユウト:「へぇ……
『姐さん』と呼ばれていたから、もしやとは思ったが……まさかウサギさん組の姐さんだったとはつゆ知らず……先程は失礼仕しつれいつかまつりました」

姐さん:「いや、アタイは別に──」

ユウト:「──ウサギさん組の軒下のきした借り受けましての仁義!!
失礼ですが、おひけぇ〜なすって!!!」

姐さん:「──っ!?
あ、ありがとうございます。
軒下のきしたの仁義、失礼さんにございますが、手前てまえ、控えさせて頂きます」

ユウト:「早速お控ぇ下さって、ありがとうございます。
手前てまえ、いたって不調法ぶちょうほう
あげます事は前後間違いましたら、まっぴら御免お許しをこうむります。

向かいましたるおあにいさん、おあねえさんには、初のお目見えと心得ます。
手前、生国しょうごくと発しまするは、日本国六甲山にっぽんこく ろっこうさんから吹き降ろす関西、大阪。
稼業、縁持ちまして、片親の実家この大東京に住まいを構え、この『仁義保育園、ウサギさん組』に、参上仕さんじょうつかまつった『ウセ』の三代目『ユウジ』を親に持ちます若造でございます。

姓は『ウセ』、名は『ユウト』。
稼業、昨今の駆け出し者でございます。
渡世とせいの故あって『仁義保育園、ウサギさん組』の、とかくおあにいさん、おあねえさんに、ご厄介やっかいかけがちなる若造でございます。

以後、見苦しき面体めんていお見知りおかれましては、​向後万端きょうこうばんたん引き立って──よろしくお頼み申します」

姐さん:「手前、こちらで控えさせて頂きました。
ご丁寧なご仁義、誠に有難うございます。
手前、当『ウサギさん組』第26代目組長『イクセ ナオキ』に従います、組長代行。

姓は『ササオカ』、名を『シオリ』。
稼業、未熟の駆け出し者。以後、万時万端ばんじばんたん、よろしくお頼み申します」

ユウト:「ありがとうございます。
どうぞお手てをお上げなさって」

姐さん:「あなた様から、どうぞお手てをお上げなさって下さいませ」

ユウト:「では……ご一緒にお手てをお上げなさって……」

姐さん:「ありがとうございます」

ユウト:「ありがとうございました」

ヤマト:「……な、なんて仁義を切る奴だ……」

ユウト:「へへっ、どうも硬っ苦しいのはしょうに合わねぇ。
すまねぇが、今後はタメ口でいかさせてもらっても良いかい?」

ヤマト:「なっ!? 姐さんにタメ口だなんて──」

姐さん:「──あぁ、結構だよ」

ヤマト:「っ!? 姐さん!!?」

姐さん:「アタイは組長じゃないんだ。単なる代行なんだよ」

ユウト:「えっと……それで、その組長にもご挨拶させて頂きたいんだが……どちらにいるんだい?」

ヤマト:「……」

姐さん:「組長は……今はいないんだよ」

ユウト:「ん、そうなのかい?
それだったら実質、かしらはお嬢さんってな訳だ」

ヤマト:「てんめぇ〜……姐さんに向かって『お嬢さん』ったぁ──舐め腐るのも大概に!! ──」

姐さん:「──ヤマトっ!!」

ヤマト:「──ぐっ!? うぅ〜……」

姐さん:「(ため息) とりあえず、今この組をまとめているのはアタイだけどもね……かしらをやっているつもりはないんだよ。
でも、誰かがまとめ役をやらないと、血の気の多い奴らがすぐ、抗争こうそうをおっぱじめちまう」

ユウト:「ははっ、そいつは違ぇ〜ねぇや。
こんな、ちょいと触れただけで破裂しちまう水風船みてぇなのを抱えていたんじゃあ、おちおち積み木でお城も作っていられねぇな」

ヤマト:「ぐっ」

ユウト:「まぁ今は、その拳を開いて仲良く握手なんて事は出来ねぇだろうが、とりあえずは──えっと……ヤマトのアニキ、卒園までよろしく頼む」

ヤマト:「ふんっ! アッシはお前が『ウサギさん組の一員』だなんて、絶対に認めねぇ!!
せいぜい背中に注意しておくんだな!!」

ユウト:「おぉ〜恐ぇ恐ぇ♪」

姐さん:「まったく……」

コスキ先生:「はいっ♪ みんな仲良くご挨拶が終わった所で、お歌を歌いましょうねぇ♪」

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【じんぎ なき えんじ〜参の章〜】

エイジ:「じんぎ なき えんじ、参の章。『ヨシオの襲来』」

(部屋に走り込んで来る)

ヤマト:「た、たったたた大変だぁぁ!!! 大変だ大変だ大変だ大変だぁぁあ!!!」

姐さん:「おや、ヤマト……どうしたんだい? そんなに慌てて……」

ヤマト:「あ、あっあああ姐さん!!
そ、そそそその!! じぇっじぇじぇじぇじぇっじぇぇえ──」

姐さん:「なんだいなんだい。落ち着きなよ」

ユウト:「ほら、お茶だ……飲みなせぇ」

ヤマト:「あ、あぁっ!!
── (お茶を飲んで吹き出す) ぶっふぅ!!!」

姐さん:「──うわっ!? もう、汚いねぇ〜! 吹き出すんじゃないよぉ!」

ヤマト:「す、すいやせん姐さん!!
へ、変な味がするっ!! な、なんだいこれは!? 腐ってる!!」

ユウト:「はっはっはっ! 腐っているんじゃねぇよ。
これは『ジャスミンティー』って言って、俺のママが言うには『なんか落ち着く効果がある』っていう一級品のお茶だ♪」

ヤマト:「そ、そうなのか……?」

姐さん:「もう……アタイの園児服が濡れちまったじゃないのさ」

ヤマト:「いや、ほっほほほ本当に姐さんっすいやせん!!
こ、このケジメっ! アッアアア、アッシのお昼のデザートで取らさせて頂きやすぅぅう!!」

姐さん:「──やめねぇかっ! アタイをお茶で汚すだけじゃなく、丸々と太らせるつもりかい!!」

ヤマト:「あ、あぁ〜あぁ〜……で、でもぉ〜でもぉ〜!」

ユウト:「はっはっはっ!!
その程度の事で、いちいちオヤツを分け与えていたんじゃあ、あっという間にガリガリのもやしっ子になっちまうぜ♪
そんな事よりも──」

姐さん:「あぁそうだね。
いったいどうしたんだい? エラく慌てていた様子だったけれど?」

ヤマト:「えっ!? あぁ〜……えっと、その……あの……あれ? なんでしたっけ?」

ユウト:「はっはっはっ!! こんな調子じゃあ、あっという間に『ホラホラァ』が口癖の『骨のキャラクター』みたいになっちまうなぁ♪」

ヤマト:「あっ!! そっそそそそそうです!! ジェニファーが拉致らちられやした!!」

姐さん:「っ!? なんだってっ!
どこの誰に!」

ヤマト:「ゾ、ゾウさん組の『ヨシオ』に……」

ユウト:「っ!?」

姐さん:「『仁義園の恐いワンワン』……
くっ、また厄介な奴に……」

ユウト:「……」


(幼稚園の廊下)

ヨシオ:「ひゃっはっはぁ〜!!

『【人形】ジェニファーは、これからパチンコっちゅうお仕事に、行って来(き)よるからのぉ!』『【ロボット】また子供のポクチンにメシも用意せんで行ってまうんかぁ』
『【人形】やっかましいわっ!! (殴る)
アンタは、私を捨てて逃げよった元彼とのガキなんやでぇ!
屋根ある所でネンネ出来とるだけ、ハッピーっちゅうもんやろぉがぁ!!』

ひゃ〜っはっはっはぁ〜!!」

ユカ:「(泣きながら) 私のジェニファーは、そんな子じゃないもぉ〜ん!!」

ヨシオ:「黙っとれっ! ワシが今、最っ高の人形劇を自分らに見せたってんねや!! 涙無くして見られへんっ! 最高傑作なんやでぇぇぇえ!!」

ヤマト:「そ、そこまでだ! ゾウさん組の恐いワンワン、ヨシオ!!」

ヨシオ:「……あぁ〜? なんや自分……
『劇の最中は静かにお手てはヒザの上にしくさっとけ』って、先生に教えて貰わんかったんかぁ?」

ヤマト:「──っ!? あ、ああ〜…… (怯える)」

姐さん:「見るに堪えない茶番を見せられて黙っていられる程、アタイ達は上品な世界に生きちゃいないんだよ」

ヨシオ:「おぉおぉ〜、ヤマトが珍しく威勢がええなぁ〜思ぉたら、ウサギさん組の姐御あねごはんやないかぁ〜♪
女が組をまとめとる……茶で腹沸いてまうわぁ〜♪」

姐さん:「沸いてんのはアンタの頭だよ!
今すぐ、ジェニファーからお手てを放しな……それはユカのお人形さんで、アンタのモンじゃない!」

ヨシオ:「ただ、借りとるだけやぁぁ♪
おもちゃはみんな平等にワケワケして遊ばなアッカァァ〜ン♪」

姐さん:「そんな御託ごたく、聞くに耐えないねぇ!!!」

ヨシオ:「──おぉっとぉ姐御はん……急にその場を動いてしもうたら、ワシ、ビックリしてもうて、このジェニファーの腕、モイでしまうかもしれんでぇ♪」

ユカ:「いやぁぁあ!!!! 私のジェニファー!!!!」

ヤマト:「あ、あぁ……ジェニファーの腕が──」

姐さん:「──っぐ!? この腐れ外道げどうが……」

ヨシオ:「ひゃ〜はっはっはぁ〜!! めっちゃ楽しいわぁ〜!
ジェニファー人形の次は、姐御はん人形を手に入れてもうたぁ〜♪ 自分らワシの人形劇、楽しんでってやぁ〜!!」

ユウト:「……俺も、その人形劇に混ぜてくれねぇか? なぁ……『ヨっちゃん』」

ヨシオ:「……んぁ〜? ワシの事を……『ヨっちゃん』? 『ヨッちゃん』言うたかぁぁぁ〜このアホんだら……
ほんでぇ〜、その胸糞悪むなくそわるい声……」

ユウト:「まさかお前も仁義園に転園していたとは……な」

ヨシオ:「ユウちゅぁぁあん♪!!!
ユウちゅゅあんやないかぁ〜! えぇ? なんやなんやなんやなんやぁ〜♪!!! (走り出す)
こないな小さな保育園で、なぁ〜にぃ〜さぁ〜らぁ〜しぃとんねんっごるぅぅぅああ!!! (殴り掛かる)」

ユウト:「──ふっ (避ける)
人の顔を見るや否や、殴り掛かかって来るとは……相変わらずだな」

ヨシオ:「ひゃ〜っはっはっはっ!!!」

姐さん:「ユウト……アンタ、知り合いだったのかい?」

ヨシオ:「知り合いも何もっあるかいなぁ〜! なぁっユウちゅぁあん!
ユウちゃんとワシは、兄弟のさかづきを交わした、言わば仲良しこよしの義兄弟なんやでぇ!!」

ヤマト:「──な、なんだって!?
さっそく化けの皮が剥がれたなぁっ、ユウト!!
姐さん、だからアッシはこんな奴を信用出来ねぇと──」

ユウト:「──ヤマトのアニキ、勘違いをするんじゃねぇ。
ただ生まれた病院が同じで、俺のママとヨッちゃんのママが、向かい合って、俺達にミルクを飲ませていた──それだけだ」

姐さん:「それを兄弟のさかづき……
ぶっ飛んだ解釈だねぇ」

ユウト:「あぁ、とんだ有難迷惑ありがためいわくだ……
それからというもの、俺を見かける度に殴りかかって来やがって……まったくもってうんざりな話だ。
せっかく前の保育園をコイツが先に転園して、その縁も切れたかと思えば……まさかこの『仁義保育園』に来ていたとはな」

ヤマト:「──くっ……」

ヨシオ:「ユウちゅぁんと離れ離れになってしもうてぇ!! 寂しかったんやでぇぇ!!!
またこうやって出会えたっ!! これはもう運命やぁ! また積み木やらお人形さんやらで、殴り合おう!! おぉるぅぅあ!!! ジェニファーパンチぃぃ!!!」

ユカ:「いやぁぁあ!!! アタシのジェニファー!!!」

コスキ先生:「──あなた達っ何をやっているの♪!!」

ヨシオ:「おぉ~っと、こりゃあアッカァ〜ン! 先生はんのお出ましやぁ!!」

コスキ先生:「ほらっみんな、お昼寝の時間なんだから、お部屋に戻りなさい♪」

ヨシオ:「ユウちゅあん!! この勝負、一旦預けといたるさかい!!
ワシもまた保育園を追い出される訳にゃあ~、イカンからのぉぉぉお!!」

ユウト:「……」

姐さん:「アンタ達の因縁、勝手に預かるのは構わないが──ジェニファーは返して貰うよ」

コスキ先生:「こらっヨシオ君♪! お人形さんとそんな遊び方をしたら、お人形さんが痛い痛いして、可哀想でしょ♪!
めっ!! ユカちゃんに返してあげなさい♪!!」

ヨシオ:「ひゃっはっはっはぁ!!!!
昔馴染みのおもちゃが戻ってきたんやっ、こんな人形なんかいるかぁぁぁあいっ!!! (投げる)」

ユカ:「あぁっ私のジェニファー!!!」

ユウト:「おっと (受け止める) ──
お嬢ちゃん、もう大事なお友達──ジェニファーって言ったかい? 手放すんじゃねぇぞ……ほらよ」

ユカ:「ユウト君……あ、ありがとう。
ジェニファー……っ (人形を抱きしめる)」

ヨシオ:「あっひゃっひゃっはぁ~!!!
ユウちゅあぁ〜ん!!! まずは夢の中で一緒に遊ぼうなぁ!!!
はぁ〜っひゃっひゃっひゃっ!!!!!」

コスキ先生:「ほらヨシオ君、早くお部屋に戻りなさい♪」

ヤマト:「くっ……なんてヤツだ……」

姐さん:「まったくだよ……うっ…… (片膝を付く)」

ヤマト:「──っ!? 姐さんっ、どこか怪我を?」

姐さん:「い、いや大丈夫だ。
少しばかりオネムの時間になっただけさ……」

コスキ先生:「ほら、あなた達も早くお布団に入ってお昼寝しなさい♪」

姐さん:「あぁ……アタイ達もウサギさん組のお部屋に戻るよ」

ヤマト:「へ、へぃ……」

***********************************
【じんぎ なき えんじ〜肆(し)の章〜】

コスキ先生:「じんぎ なき えんじ、の章。『波乱の幕開け』」

(間)

姐さん:「な、なんだって……?
コスキ先生っ、そんなふざけた話をアタイ達に受け入れろって言うのかい!!?」

コスキ先生:「シオリちゃん、落ち着いてぇ♪
ゾウさん組からの提案が出たんだぞぉ〜ってお話だから、まだ決まった訳じゃないんだぞぉ〜♪
だからみんなで『どっちがやりたいかなぁ?』っていう多数決を──」

姐さん:「──そんな勝手な言い分が、通る訳が無いじゃないか!!」

ユウト:「なぁ、ヤマトのアニキ」

ヤマト:「あ? なんだよ」

ユウト:「お嬢さんは、どうしてあんなに怒っているんだ?」

ヤマト:「ちっ……てめぇにも知っておいてもらわないと、か」

ユウト:「……?」

ヤマト:「もうすぐこの仁義保育園で、一年に一度の巨大抗争が執り行われる。
仁義園全部の組が一堂に会する、仁義園の中で唯一、合法的に抗争を許された日──『仁義無き運動会』」

ユウト:「仁義無き、運動会……」

ヤマト:「あぁ、その最後にみんなで踊りを踊るんだ。
その時の曲は毎年決まって『手のひらを太陽に』」

ユウト:「その歌は、前の保育園でも歌ったから良く知っている
『動物も虫も植物も、この地球上で生きている。みんな大切なお友達なんだ』っていう……凄く良い歌だ」

ヤマト:「あぁ……その歌に合わせてみんなでお手てを繋ぎ、輪になって踊るのが恒例なんだが──」

姐さん:「──コスキ先生だって分かっているはずだろう!?
最近のゾウさん組は、ヨシオが入った事で辺りの組に圧をかけてシマを拡大していっている!!
こんなの多数決でも何でも無い!! 単なる恐怖政治だって!!」

コスキ先生:「こらこら♪ お友達をそんな風に言ったらダメだぞ♪
お友達みんなでお話しして決めて、楽しい運動会にしていくの♪
それに、ゾウさん組が提案してくれた『パンのヒーロー音頭おんど』は、先生も大好きな歌だから──」

姐さん:「──アタイはそんな事を言っているんじゃないんだよ!!
アタイは、仁義園のみんなと……みんなと……」

ユウト:「……」

********************************

ヨシオ:「ユウちゅぁぁぁあん!!! (殴りかかる)」

ユウト:「おっと……またお前か、ヨッちゃん」

ヨシオ:「ひゃぁ〜っはっはっはっ!! 遊ぼうやぁ〜ユウちゅぁぁん!!! なぁ!!! なぁぁぁあ!!!!!」

ユウト:「ふぅ、今はそんな気分じゃ──
……なぁ、ヨッちゃん」

ヨシオ:「んあぁぁ??」

ユウト:「お前はどう思っているんだ?」

ヨシオ:「はてぇ〜? なぁ〜んの話やぁ〜?」

ユウト:「仁義無き運動会の踊りの話だ」

ヨシオ:「んあぁぁぁぁ!!!?
ユウちゅあん!! っんなモン楽しみにしとるんかぁ!!!?
はぁぁぁ〜、ワシには関っ係っあらへん!!!
お手て繋いで仲良しこよし?? チャンチャラおかしいくて、おケツで牛乳沸かしてまうわぁ!!!
ワシはいつでも戦闘態勢!! 合法やろうが違法やろうが、ワシはワシのおもちゃで遊ぶだけやぁぁ!!!」

ユウト:「……そうだな……ヨッちゃんに聞いたのが俺の間違いだった。
お前とお手てを繋いだ瞬間、振り回されるのがオチだ」

ヨシオ:「ぬぁっ!!!
ユ、ユウちゅあん……今、なんて言うた?」

ユウト:「はぁ……やっちまったか」

ヨシオ:「お手てを繋いだ瞬間に、振り回すっちゅうたか、ワレあ"ぁん!?
なっっっんでワシの考えとるオチを先に言うんやオルァ!!!
運動会当日にカマし腐ったろう思うとったボケを、先に言うてまうボケがどこにおんねん!! オルァボケがあ"ぁん!!!」

姐さん:「その程度の笑えないボケを、考える方も考える方だよ」

ユウト:「お嬢さん」

ヨシオ:「わ、わら──笑えへん??
笑えへん!? 笑えへんっちゅうたか!!!
爆笑やっちゅうねん!!!
仁義園全員のオトンとオカンのビデオが全部ワシに集中しよるちゅうねん!!!!
新喜劇育ちのワシのボケを舐め腐ってんちゃうでボケカスあ"ぁん!!!!」

ユウト:「はぁ、まったくうるさいヤツだ……ヤスエ姉さんにでもなったつもりかってんだ……」

姐さん:「ヤスエ──ユウト、誰だいそれ?」

ヨシオ:「ぬぇっ……ヤスエ姉さんを、知らん?
え……な、なんでや?? なんでヤスエ姉さんを……知らんねや……」

ユウト:「……」

ミツル:「(拍手) あっはっはっはっ!!!
ウチのヨシオ君を一言で黙らせるとは──流石はウサギさん組、組長代理のシオリお嬢さんですねぇ!!」

姐さん:「アンタは……」

ユウト:「……」

ミツル:「ん? 君が新しくウサギさん組に転園して来たという、ユウト君ですか。
話は伺っていますよ?
仁義保育園に来て早々、ウチのエイジ君が君達にご迷惑をおかけしてしまった様で」

ユウト:「……覚えてねぇなぁ」

ミツル:「覚えていない……そう、ですか。
ふっ、まぁ良いでしょう。
──あぁ、ご挨拶が遅れました。
僕はゾウさん組を束ねさせて貰っている『スドウ ミツル』です。
以後お見知り置きを (紙を渡す)」

ユウト:「ん……なんだ、これは」

ミツル:「あぁ、これは『名刺』っていう物です。
『自分の名前を書いた紙を相手に渡して、相手に自分の事を覚えてもらう』という、大人の世界のルール……ダディに教えて貰いました」

ユウト:「……ゾウさん組の親分さんは大変物知りな様だ。
それだったら……今この仁義園で起こっている事、当然知っているよな?」

ミツル:「仁義園で起こっている事ですか?」

姐さん:「しらばっくれるんじゃないよ。
仁義無き運動会の最後の踊り──アンタが糸を引いているのは分かっているんだ」

ミツル:「あぁ〜、その事ですか。
糸を引いているとは人聞きの悪い物言いですね?
抗争を許された日に、争っていた『園児』達がお手てを繋ぎ、仲良しこよしを『演じ』る──馬鹿馬鹿しいじゃありませんか?」

姐さん:「馬鹿馬鹿しい……?」

ミツル:「ククッ……プククッ!」

ユウト:「……?」

ミツル:「あぁ〜っはっはっはっはっはっ!!!! 園児が──演じ、る! はっはっはっ!!
お、おもし、ろい! 園児が──演じ──ィヒヒヒヒッ──あぁ〜っはっはっはっはっ!!
メ、メモに──メモに残して、か、帰ったら、マ、マミーに教えてあげないと──ヒヒヒヒッ……」

姐さん:「何が馬鹿馬鹿しいってんだい……組は違えど、アタシ達はみんな仁義園のお友達なんだ。
これから大人になっていく── 一年を通して成長した姿を、来てくれたママとパパに見てもらう!!!
アタイ達は、全力で戦えるお友達をこんなに作れたんだって知ってもらう!
勝ち負けなんて関係ない!!
それが仁義無き運動会の──」

ヨシオ:「──勝っったな意味あっっらへぇぇえん!!!!!」

姐さん:「っ!?」

ヨシオ:「勝負は勝負やぁぁあ!!!!
負勝ぶしょうや無い!!! 勝ったモンが負けたモンの前に立ち腐るぅぅ!!!! それが勝負なんやでぇぇえ!!!!」

ミツル:「しのぎを削って戦って、それを過去の事として敵味方関係無くお手てを繋ぎ踊る?
勝った側からしたら、実に気持ちが良いモノでしょう。
しかし、負けた側はどう思いますか?
勝者から差し伸べられるお手てを……素直に握り返せますかね?」

ヨシオ:「──ワシがまだ喋っとるやろうがぃ!!!! 黙っとれっこのクソガk ──」

ミツル:「──ヨシオ君?」

ヨシオ:「っ」

ミツル:「……僕が、喋っていたんです」

ヨシオ:「っんぐぅぅぅ〜!」

ミツル:「ヨシオ、君?」

ヨシオ:「んんんん〜っ! だぁぁぁあ!!!!! ぶぁぁぁあっ!!!! くそくそくそくそくそクソクソがぁぁぁあ!!!!!!」

ユウト:「……?」

姐さん:「……っ」

ヨシオ:「ふぅ〜っ!!!! ふぅぅ〜っ!!!!!!
しゃあないから譲ったるぁぁっ!!!!
ワシが素直で真面目なええ子やさかいなぁぁぁ!!!! 自分に譲ったるよってになぁぁぁあ!!!!!!!!!」

ミツル:「……ふふっ、ありがとうございます」

ヨシオ:「クソがっ!!!!!!」

ミツル:「……弱い者は捨ておけば良い。
地ベタにおねんねする敗者を、勝者は足の裏で感じながら大見得(おおみえ)を切って歩く……それが大人の世界です。
まだ僕達は幼い園児ではありますが……その大人の世界を学ぶ事、それをダディとマミーにお見せする事が、親孝行なのではないかと──僕は考えます。
ですから、最後の踊りでお手てを繋ぐ事の無い『パンのヒーロー音頭おんど』を選ばさせて頂きました」

ユウト:「大層な考えをお持ちな様で結構だが……それは親分さんの考えだろ?
仁義保育園のみんなは、どう思っているんだろうなぁ?」

姐さん:「そ、そうだよ!! こんな事、みんなが認める訳が──」

ミツル:「──それは!!」

姐さん:「っ」

ミツル:「……先生が集めて下さる、多数決の結果が出れば分かる事です」

姐さん:「それもアンタの手のひらの上……出来レースじゃないか」

ミツル:「あっはっはっはっ! 何をおっしゃいますかぁ!!
ダディが言っていました! 多数決とは民主主義の証明!!
より賢く偉い良い子の方に票が集まる、もっとも効率的で有効的な投票方法ではありませんか!!!」

姐さん:「どの口が……っ」

ユウト:「お嬢さん、多数決なら最後まで結果は分からねぇ……ゾウさん組の親分さんの言い分も──」

姐さん:「──勝てないんだよ」

ユウト:「……ん?」

姐さん:「それじゃあ勝てないんだ……
ミツルのパパは、この町の町会長……ママは子供会長をしているんだ……
仁義園のみんなが、多数決の事が書かれた連絡帳をママとパパに渡してしまえば、結果はもう分かりきっている……」

ユウト:「なんてこった……
その余裕、そういうカラクリだったのか。
気持ち良いくらいに汚ねぇヤツだな……」

ミツル:「僕にはその力がある……それだけの話なんです」

ユウト:「(ため息)
『まだ僕は親離れ出来てないお子ちゃまです』って事を、ここまで堂々と言われると、呆れてモノも言えなくなるな……」

ミツル:「……なんですって? 口を慎んで下さい……ユウト君。
ダディはこの町の町会長をしているんです……君をこの仁義保育園から退園させる事だって出来るんですよ?」

ユウト:「ほらまたパパだ。
パパとママのお手てを借りねぇとアンヨも出来ねぇお子ちゃまが、ゾウさん組を束ねているってのは、通りすがりに、いきなりいないいないばぁをしてくるオジサンより滑稽こっけいな話だ」

姐さん:「それ以上はやめておきな、ユウト。
あの恐いワンワンのヨシオすら黙らせちまうんだ。それに、あの人まで……
ミツルの言っている事は本当だよ」

ユウト:「へっ、知った事か。
テメェが一度吐いた飴玉を呑む様なマネ──俺には出来ねぇなぁ。
このパンツに刻んだウセ ユウトの名は! パパとママに恥をかかせる為に刻んでる訳じゃねぇ!!」

ヨシオ:「ぬぁっ!?」

ミツル:「っ──マッキー……」

ヨシオ:「ひゃあ〜っはっはっはっはっ!!!
おもろいのぉ〜!!!! おもろいのぉ〜ユウちゅあん!!!! しゃくやけど、全くもってその通りやぁぁあ!!!!」

ミツル:「ヨシオ君……君は黙っていて下さいと──」

ヨシオ:「──ミチュルの親ぶんはぁ〜ん!!!
ウサギさん組に入ったばっかしの下っ端にここまで言われ腐って、よろしぃ〜んでっかぁぁあ? あ"ぁ"〜ん??」

ミツル:「は……い……?」

ヨシオ:「新参者のガキにこぉ〜んな舐めた口を叩かれてぇぇ!!!! 言われるだけ言われ腐り落ちてぇぇぇ? ほんでまたダディはんとマミーはんに『ウサギはん組のユウトきゅんに、泣かされたぁぁ』って泣きつくぅぅう!!!
あぁぁぁっアッッカン!! こらぁあきまへんわぁぁぁ!!!!
こぉんな下っ端に説教かまされてオトンとオカンに泣き付いてもうとるヘタレっ子に、ゾウさん組のワシら、付いて行かれへぇ〜ん!!!!
なぁぁぁぁぁあ!!!!」

ミツル:「ぐっ……なん、ですって?」

ヨシオ:「おぉぉおん?? 違うんでっかぁぁぁあ????」

ミツル:「グググッ……わ、分かりました。
それでは……勝負といきませんか?」

姐さん:「勝負……?」

ヨシオ:「ひゃっはっはぁ〜!!!! その言葉を待っっとっったでぇぇぇえ!!!!!」

姐さん:「仁義無き運動会以外での抗争は先生に禁止されている……
アンタはそのルールを破って──」

ミツル:「──お遊びですよ。
勝ちの見えた勝負は、もはや勝負とは言えません……単なるお遊びです」

ヨシオ:「んでもぉぉ、勝負はしょぉぉぉぶぅぅう!!!! ひゃっはっはっはっ!!!!!」

ユウト:「面白いじゃねぇか……
それで、その勝負方法っていうのは?」

ミツル:「ふふっ……コスキ先生!!!」

コスキ先生:「はいはぁ〜い、ここにいるよぉ♪
ミツル君どうしたのかなぁ♪?」

ミツル:「突然お呼びしてすみません。
明日、自由遊びの時間にお砂場をお借りしてもよろしいでしょうか?」

姐さん:「お砂場?」

コスキ先生:「ん? 全然大丈夫だよ♪ 砂場はみんなの遊び場だから、自由に使って遊んだら良いんだよ♪」

ミツル:「ありがとうございます」

コスキ先生:「ただ! 遊んだあとは、手洗いとうがいを忘れないようにね♪」

ミツル:「はい。心得ております」

ヨシオ:「分かっったでぇぇえ!!!! ワシ、ピッカァァァァンと来て、分かってもぉぉたぁ!!!!
砂場に相手を埋め腐るっちゅう勝負やなぁぁあ!!!!
そういう勝負なら、ワシ、得意やさかいのぉぉおお!!!!!」

ミツル:「穴掘りで遊びましょう」

姐さん:「なっ!?
ふざけるんじゃないよ!! 違う組と言えど、仁義園に通っているお友達をどうして埋めなくちゃならないんだい!!」

ミツル:「掘った深さを競うだけです。
僕は『埋める』なんて言っておりませんよ」

姐さん:「え……」

ヨシオ:「埋めへんのかぁぁぁぁあい!!!
なぁぁんやそれ!!!!
しょぉぉぉもあらへんのぉぉぉおっ!!!!」

ユウト:「穴掘りか……おもしれぇ。
どうする? お嬢さん」

姐さん:「穴掘りかい……穴掘りなら分かった。
その勝負──受けようじゃないか」

ミツル:「道具は──そこのスコップを使っても構いません。
砂場の小石に指の爪を引っかけてケガ……それでダディとマミーが心配してしまってはいけませんからね」

ヨシオ:「それやっったらぁぁ!! ゾウさん組からはワシが出るしかあらへんのぉぉぉおお!!!!
ひゃっはっはっはっ!!!!
おもろい! おもろいでぇぇぇえ!! なぁユウちゅあん!!!! ついに決着を付ける時が来たんやさかいのぉぉおお!!!!
紅白しっかり付けたるさかいに!!!! 覚悟しさらせやぁぁぁ! ユウちゅあぁぁぁん!!!!!」

ユウト:「……お前との決着に興味は無ぇが……それを言うなら『白黒つける』だ」

ヨシオ:「アドベンチャャァァワァァァルドのパンダさんやぁぁぁあ!!!!
ひゃぁぁっはっはっはっはっ!!!!」

ミツル:「ゾウさん組とウサギさん組の雌雄しゆうを決した穴掘り対決……楽しみにしていますよ」

ヨシオ:「おぉん!? おんおんおん!!!!?? おおぉん!!!!? ごぉぉるぁぁあミチュル親分はん!!
これはワシとユウちゅあんの戦いや!!
お手てぇ出しよったら、お尻ペンペンカマすぞワレェ!!! お"ぉ"ん!!!」

ミツル:「当たり前じゃないですか。
ダディとマミーが用意してくれたお洋服をお砂遊びで汚すなんて、ばっちぃじゃないですか」

ヨシオ:「服もお手ても、汚れてなんぼやぁぁあ!!! ひゃ〜っはっはっはっ!!!」

ユウト:「やれやれ……お手てもポンポンも真っ黒なのに潔癖を気取るとは……どこまでもスジの通らねぇ親分さんだ」

ミツル:「今の内に思う存分ワンワン吠えておいて下さい。
明日には僕にしっぽを振る事になるんですから」

ユウト:「へっ……それはどうだろうな」


ヤマト:「なっ、なんだって!!?
明日ゾウさん組とお砂場で穴掘り対決!!!?
ど、どどど、どういう事ですか姐さん!!? どうしてそんな事に!!!」

姐さん:「ヤマト、静かにおしよ」

ヤマト:「──静かになんていられやせんよ!!
それも、このウサギさん組に入って来たばっかりのユウトにそんな大役を任せるなんて!!
今からでも遅くありやせん! アッシが──姐さんのお箸を持つ方のお手てであるアッシが、ゾウさん組の相手を──」

姐さん:「──相手がヨシオでもかい?」

ヤマト:「はぅっ!? ……ヨシオ?」

姐さん:「……」

ヤマト:「……恐いワンワンの?」

姐さん:「……あぁ、そうだよ」

ヤマト:「……そ、それでもアッシは!! ──」

ユウト:「──よぉ〜いドンで、スコップで殴り来るだろうなぁ」

ヤマト:「あぅっ!? ……い、いやぁ〜さすがに恐いワンワンと言えども、そこまでは……」

ユウト:「ひるんだ瞬間にバケツをかぶされて、タコ殴り」

ヤマト:「んがっ!? ……そ、そんな、まさ、か──」

ユウト:「──気が付いた頃には、お砂場に頭だけ出ている状態だろうな」

ヤマト:「もふっ!? ……ん〜……
(棒読み) ぐ、ぐわぁ〜! 昨日、お母さんに頼まれたおつかいの時に転んで出来たヒザの傷がぁ!!
クマさんの絆創膏ばんそうこうを貼っているのにイタイイタイしてきやがるぅ〜!!
ち、ちくしょう!! こんな、こんな大切な時に、アッシはなんて無力なんだぁぁ!!!」

ユウト:「へへっ、とんだ右腕がいたもんだ」

姐さん:「ユウト……勝てるのかい?」

ユウト:「ん? どうだろうなぁ……」

ヤマト:「ど、どうだろうなぁって──ユウト!! テメェ、負けたら承知しねぇからなぁ!!!」

ユウト:「ふっ、勝てるかは分からねぇが……ヨッちゃんの事は、俺が誰よりも知っている。
心配しなさんな……負ける事は無ぇよ」

ヤマト:「勝てるか分からねぇのに……負けない?」

ユウト:「あぁ、勝負が明日ってのが──キモだな」

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【じんぎ なき えんじ〜伍の章〜】

姐さん:「じんぎ なき えんじ、伍の章。謀略ぼうりゃくと策略』」

ミツル:「ウサギさん組の皆さん、よく逃げずに来て下さいまし──」

ヨシオ:「──ユウちゅあぁぁぁあんっつっっるぁあ!!!! (殴りかかる)」

ユウト:「おっと…… (避ける)」

ヤマト:「っ──言っていた通り殴りかかってきたけど……何も持っていない……」

コスキ先生:「こぉら、ヨシオ君♪!
いきなりお友達を叩きに行ったらダメでしょ♪! めっ♪!!」

ユウト:「先生、構わねぇよ」

コスキ先生:「ヨシオ君、ユウト君に『ごめんなさい』をしましょうね♪?」

ヨシオ:「ひゃぁあ〜っはっはっはっ!!!
殴れんくて堪忍やでぇぇぇえ!! ユウちゅぁぁぁぁあん!!!!」

ユウト:「慣れている、気にするな。
それとも? これも自分のお手てを汚さずに俺を戦闘不能にするっていう、ゾウさん組親分さんの作戦でもあったのかい?」

ミツル:「『あわよくば』とは思っておりましたが……それで勝負が付いてしまって面白くありません」

姐さん:「っ……ミツル、アンタ……」

ミツル:「ウサギさん組を──君を完膚無かんぷなきまで叩き潰して、二度と僕に逆らえない様に教育してあげない事には、僕の気が晴れません。
僕を馬鹿にした責任は、しっかりととって頂きます」

コスキ先生:「はぁ〜い♪
じゃあユウト君とヨシオ君が穴を掘ってくれるから、そのお砂でみんなで仲良くお山さんを作りましょうねぇ♪」

ミツル:「先生、開始の号令をお願いしてもよろしいですか?」

コスキ先生:「はぁ〜い♪ じゃあ、いっくよぉぉお♪
よぉぉぉぉい!!!」

姐さん:「っ……」

ヤマト:「くっ……」

ユウト:「……」

ミツル:「ふふふ……」

ヨシオ:「行くで行くで行くで行くでぇぇぇぇええ!!!!」

コスキ先生:「どぉぉ〜ん♪!!!
って言ったら、始めるんだよぉ♪」

ユウト:「っ──なん、だと……」

ミツル:「っ──」

ヤマト:「フェイント!?
くっ……先生……熱い人だ……」

ミツル:「クッ──プククク……よ、よぉいドンって言ったら──は、始める……ぷくくくっ……あぁ〜はっはっはっはっはっ!!! よぉ〜いドンって言ったら──ス、ススス、スター……イィィッヒッヒッヒッ!!!
メ、メモに残さないと……帰ってからマ、マミーに教えてあ、あげないと──プクククククッ!!」

姐さん:「あっ!? ヨシオが」

ヨシオ:「おっりゃ! おっりゃ!! おっりゃ!!! おっりゃぁぁあ!!!! 早い者勝ちやでぇぇぇええ!!!!」

ヤマト:「ま、まだ始まっていねぇのに!!?
ユ、ユウト!! お前も早く掘れ!! 負けちまうぞ!!!」

コスキ先生:「あれ!? あれれ!!? あわわわっ!?
じゃ、じゃあ、よいドン♪!!!」

ユウト:「くっ!!
せいやっ! ほいやっ!! そいやっ!! こいやっ!!」

姐さん:「スタートに出遅れちまった……ユ、ユウト」

ミツル:「始まる前に、勝敗は決してしまいましたね。あっはっはっはっ!!」

(ヨシオ&ユウト、テキトーな掛け声で掘り続ける)

ヤマト:「は、はえぇ……ユウト! 追い付いて来てる!! その勢いでやっちまえ!!!」

ヨシオ:「ぬぁっ!? ほ、ホンマや……やぁぁっぱり早いのぉぉおおユウちゅぁぁあん!!!」

コスキ先生:「みんなも、こっちでお山を作りましょう♪ 富士山よりも大きいお山♪ 楽しいぞう♪!!」

姐さん:「ミツル、これで勝敗は見えなくなったね」

ミツル:「そうでしょうか? 僕には見えていますよ。ウサギさん組の皆さんが、マヌケな顔を晒(さら)してダダをこね回る姿が……」

姐さん:「なんだって?」

ミツル:「ヨシオ君! いつまで遊んでいるつもりです!!
アレを使って、さっさと片付けてしまって下さい!!」

ヨシオ:「おぉぉぉぉん??
アレェェェ???
ぬぁああ!!!!? アレか!!! アレやなぁあ!!! ひゃぁぁあっはっはっはっ!!!! ワシ、すっっっかり忘れてもうとったわぁぁぁあ!!!!
アレやアレェェェエ!!!!」

ヤマト:「アレ……ヨシオのヤツ、何をする気だ……」

ヨシオ:「(猫型ロボットの道具を取り出す感じの音)
テレレテッテテェェェエン♪!!!!!
『これぇぇぇぇえ』!!!!!」

姐さん:「っ!? ば、馬鹿な……」

ユウト:「……」

ヤマト:「そ、そんな──シャベルだって!? そんな大きくて重たい鉄のスコップ……
アッシの家では、お母さんに『大人になってからね』って、まだ持たせてすらもらえねぇのに!?
ひ、卑怯だぞっ、ヨシオ!!!」

ヨシオ:「ひっきょぉぉおお???
『スコップを使ってもええ』っちゅうお約束にぃぃ!! ワシは『シャベル』っちゅう『スコップ』を使っとるだけやぁぁ!!!
おとんのショベルカーっていう手ぇも考えたんやけどなぁぁあ!!!
それは鍵を持っとる所をオカンにバレてしもうてぇぇぇ、取り上げられてもうたんやぁ!!!!!
おおぉらガキィィィイ!!! ワシのどぉぉぉこが卑怯なんやぁぁぁあ!!!あぁぁん、言うてみぃぃい!!!!」

ヤマト:「くっ……ちくしょう──ちくしょう!!!!」

姐さん:「くっ……も、もの凄い勢いで掘り進んでいっちまっているよ……ユウト!」

コスキ先生:「わぁ〜ヨシオ君、すっごいいっぱい掘ってくれてるね♪
みんなも負けないように、お山を高くしていこうねぇ♪!!」

ヨシオ:「あぁぁ〜っひゃっひゃっひゃっひゃっ!!! ザックザク掘れるでぇぇぇえ!!!!」

ミツル:「あっはっはっはっ!!!
ユウト君!! これで勝負は僕達の勝ちです!!!
仁義なき運動会でのダンスの曲は『パンのヒーロー音頭おんど』に決まりです!!! あぁぁ〜っはっはっはっはっ!!!」

ヤマト:「ユウト!!! 負けねぇんじゃなかったのかよ!!! ユウトォ!!!!」

ユウト:「くっ……まだか……まだ来ねぇのか……」

コスキ先生:「(遠くに人影を見付ける)
ん? ……あ、あれ?
えぇ〜っと、ちょっとみんなで仲良く遊んでてね♪ 先生、ちょっと行ってくるからねぇ♪
すぐ戻るから、ケンカなんかちゃダメだよぉ♪」

ユウト:「っ!? やっと……来たか」

ヤマト:「……?」

ミツル:「……来た? 何が、ですか?」

コスキ先生:「こんにちわぁ〜♪ 今日はどうなさったんですか♪?
え? ……あぁ、はい」

ミツル:「……」

姐さん:「ユウト……何が来たって言うんだい?」

ユウト:「へへっ……この勝負の勝敗を左右する──」

コスキ先生:「今そこの砂場で、お友達のみんなと一緒に楽しく穴掘りをして遊んでますよぉ♪
──えっ!? あっ、ちょ、ちょっとヤジマさん!? ちょっと待って──」

ユウト:「──鬼だ」

ヤマト:「鬼?」

姐さん:「……え、鬼だって?」

ヤジマ:「ヨォォシオォォオオッッッッ!!!!」

ヨシオ:「──っ!!!!??
(コスキ先生の演者様の性別による)
オ、オオ、オカン (オトン) !!!? な、なななな、なななんで──」

ヤジマ:「まぁぁたお前は仕事道具を勝手に持って行きよってからに!!! 何をしとんねん、この悪ガキがぁぁ!!!!」

ヨシオ:「ちゃっ、ちゃちゃちゃっ、ちゃうねん!! これはちょっと借りただけで、後でちゃんと元の場所に返そうと──」

ヤジマ:「言い訳っっ無用!!! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「あぐっ!?」

ヤジマ:「何度も何度も何度も何度もアカンって言うとるやろぉぉぉお、お前はぁぁぁぁぁあ!!! (グリグリ)」

ヨシオ:「あがががががっ!!!! い、いだだだだだだ!!! わ、割れる割れる割れる割れるっ、中身出てまうぅぅぅうう!!!!!」

ミツル:「こ、これは……一体、な、何が起こっているのですか!?」

ユウト:「こんにちは。ご無沙汰しております」

ヤジマ:「おぉユウト君♪
いっっつもヨシオと遊んでもろうて、ありがとうなぁ!!
このアホ (叩く) ホンッマに無茶ばっかしよるから、ユウト以外に友達おらんで、な! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「いだっ!!」

ユウト:「いや──」

ヤジマ:「──せっかくお友達みんなで楽しゅう穴掘りして遊んどったのに、このアホんダラがこぉ〜んな危ないモン持ち出しよってからに──」

ヨシオ:「──ちゃ、ちゃうねんって!!
これはユウちゅあんと決着をつける為に──」

ヤジマ:「ガタガタ抜かすな!!! 男らしゅうない!!! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「あぐんっ!? そぉないボカスカ殴ったら、頭が悪ぅ〜なってまうやろぉぉ……」

ヤジマ:「ウチの電子レンジも殴ったら直ったやろ!! 殴った分だけアンタの頭もきっと良ぉなる!!! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「ばふんっ!? んん〜なアホなぁ……」

ヤジマ:「ほぉぉらっ帰るで!!!
まっっったく迷惑ばっかりかけよってからに──」

ヨシオ:「ぬぇっ!!? な、なななんでや!!!?
ユウちゅあんとの決着がまだ着いとらんっっちゅうのに!!!」

ヤジマ:「やっかましい!! 何が決着や!!!
家に帰って反省や!!!
先生、ホンマすんまへんなぁ……今日はこのアホ連れて帰って、反省させますさかいに……」

ヨシオ:「い、いややぁ〜!!! ワシもっっとユウちゅあんと遊ぶんやぁぁぁあ!!!!」

ヤジマ:「やかましい!! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「がふんっ!?」

ヤジマ:「ユウト君、またウチにも遊びにおいでやぁ?」

ユウト:「あ、あぁ……またお邪魔させて頂きます……」

ヤジマ:「他のお友達ちゃん達もな、こんなどうしようもないアホやけど、これからもヨシオと遊んだってなぁ?」

姐さん:「あ、あぁ……」

ヤマト:「へ、へぇ……」

ヤジマ:「ほなまた──今日はこれで失礼致します」

ヨシオ:「い、いやぁぁぁぁああ!!!!
ワシ、帰りとぉぉ無いぃぃいっっっちゅうね〜ん!!!!」

ヤジマ:「シャンと歩けっ、このアホウ!!! (ゲンコツ)」

ヨシオ:「いっだぁぁぁ〜い!!! いややぁぁぁ〜!!!! (フェードアウト)」

ヤマト:「……」

姐さん:「……」

ユウト:「……」

ミツル:「な、なんだ……何が起こって──ユ、ユウト君!! これはどういう事なんですか!!」

ヤマト:「そ、そうだ!!
『勝てるか分からねぇけど、負けない』って言っていた──まさかこうなるって分かっていたのか!?」

ミツル:「な、なんですって!?
そ、そそそんな……そんな馬鹿な事が!!
ご両親が仕事かもしれないのに、それを呼び出すだなんて──いや、そもそも穴掘りの最中に電話で呼び出す素振りなんて見せなかった……」

ユウト:「あぁ、俺はまだキッズスマホすら持たせて貰っていねぇ……
お誕生日のプレゼントに、一度オネダリしてみたが、ネコちゃんのキャラクターが喋るだけの、どこにも繋がらない子供用のおもちゃスマホを渡されただけだった」

姐さん:「アタイはサンタさんにお願いしたら貰えたよ……
って、そうじゃない──どうやってヨシオの親御さんを呼び出したっていうんだい!」

ユウト:「ヨっちゃんの事は、俺が誰よりも知っている。
アイツは俺との勝負に勝つ為なら、必ずパパやママがカンカンにブチギレる何かを持ってくると、分かっていた。
だから今日、この仁義保育園に来る前に、ヨっちゃんの家のポストにお手紙を入れて来たのさ……
『おひるやすみの ときに よっちゃんが あばれるって いってました』ってな」

ミツル:「お、お手紙っ!?
き、ききき、汚いぞユウト君!!」

姐さん:「汚い事なんてあるかい!!
ユウトは限られたルールの中、最大限の工夫を凝らして戦ってんだ!!
やって良い事と悪い事と区別もつかねぇガキが、男と男の勝負に口を出すんじゃないよ!!!」

ミツル:「ぐっ……ぐぅぅぅぅ!!!」

姐さん:「ユウト!! 好機だよ! やっちまいな!!!」

ユウト:「あぁ!!」

ミツル:「(砂場にかけ出す) ──うわぁぁぁぁああ!!!!」

ヤマト:「なっ!? こ、こいつ──ヨシオの掘った穴の続きを素手で掘り始めやがった!!」

ミツル:「あ、あははははっ!!!
どこの誰がタイマンの勝負だと言いましたか!!!
ここまで差がついていたら、ゾウさん組全員がお手てで掘り進んでも、ゾウさん組の圧勝!! 間違い無しです!!!」

姐さん:「汚れるのが嫌だと、お砂場遊びを一切やらなかったミツルが──
くっ!! (砂場を掘る)
ウサギさん組のみんなも! ユウトを手伝うんだよ!!!」

ヤマト:「姐さん──へ、へぃ!!! おめぇら!!! 指がもげようとも!! お手てを止めんじゃねぇぞ!!!!」

コスキ先生:「あらあらあらあららぁ〜♪
みんな穴掘りの方に行っちゃって♪ じゃあ先生はひとりでお山を作ろうっと♪」

ミツル:「お、おいっ、ゾウさん組!!
あなた達は何をしているんです!!! 見ていないで手伝いなさい!!! さぁ!!! 早くっ!!!」

ヤマト:「同じ人数で穴を掘られたんじゃあ、結果的に負けちまう──クソォォオ!!!」

ミツル:「シンジ君! マナブ君!! 何をつっ立っているんですか!!! あなた達も早く!!!!」

姐さん:「いや……何か、おかしいねぇ……」

ヤマト:「え……?」

ミツル:「ナツミ君!! ヤンス君!!! カオリ君!!!!
早く!! 早く掘らないと追いつかれてしまう!! 早く──早、く……っ
どう……して……どうして手伝ってくれないんです……
なんでだよ!!! テメェら!!! 僕が手伝えって言ってんだ!!! テメェらのダディもどっかに飛ばして、ナオキみてぇに、この仁義保育園にいられねぇようにしてやろうか!!!! このクソの役立たず共がぁ!!!!」

ユウト:「……」

ヤマト:「……」

ミツル:「なん、で……っ……僕は、負ける訳には……いかない、のに……なんでみんな……」

姐さん:「ミツル……」

ナオキ:「(座り込む) よっと♪ おぉ、結構深くまで掘ったなぁ♪
両腕じゃあ、もう届かねぇじゃねぇか♪」

姐さん:「っ!?」

ミツル:「っ……どう、して?」

姐さん:「アン、タ……? 嘘だ、ろ? どうしてここに……」

*************************************
【じんぎ なき えんじ〜禄(ろく)の章〜】

コスキ先生:「じんぎ なき えんじ、ろくの章。
『組長の集結』」

ナオキ:「(座り込む) よっと♪ おぉ、結構深くまで掘ったなぁ♪
両腕じゃあ、もう届かねぇじゃねぇか♪」

姐さん:「っ!?」

ミツル:「っ……どう、して?」

ナオキ:「へっへっへっ!
なぁ〜んかみんなで楽しそうな事してるなぁと思ったら、みんなお揃いで砂場で穴掘りして遊んでるなんてな♪
なぁミツル、オイラも混ぜてくれよ」

ユウト:「……?」

姐さん:「アン、タ……? 嘘だ、ろ? どうしてここに……」

ヤマト:「ア、ア、アニキ……アニキィィ!!!」

コスキ先生:「あらあらナオキ君、お久し振り♪
パパとママは、今は園長室?」

ナオキ:「よっ、先生、お久しぶり♪
父さんは仕事で、今日は母さんと転園の手続きでお邪魔させて貰った」

コスキ先生:「そうなの♪
みんなぁ♪ ナオキ君のママが転園の手続きをしている間だけ、ナオキ君とも一緒に遊んで貰えるかなぁ♪?」

ナオキ:「へへっ、短ぇ間だけになっちまうけど、よろしく頼むよ♪」

姐さん:「アンタ……」

ナオキ:「よっ♪ シオリも久し振りだな♪ 変わりねぇか?」

姐さん:「っ── (顔を覆う)」

ナオキ:「ぅえ!? おいおいっ、なんで泣いてんだよ!?
えぇ〜オイラなんか悪い事言っちまったかぁ??」

コスキ先生:「あらあらあらあらぁ〜♪
シオリちゃん、嬉しくて泣いちゃったんだねぇ♪」

姐さん:「そ、そんな訳ないじゃないか!! ちょ、ちょっと砂が目に入っちまっただけだよ!!!」

ミツル:「ナオキ君……僕に……仕返しをしに来たん、ですか?」

ナオキ:「……ん?」

ミツル:「前の年に、君に劇の主役を取られた事が悔しいって! 僕がダディに言ったから!! 君のダディは遠くに飛ばされた!!
僕にその仕返しをしに来たんですか!!!」

ナオキ:「ん〜……ん?
ミツル……おめぇ、何言ってんだ?
子供同士の事でそんな事がある訳ねぇ〜じゃねぇか♪」

ミツル:「え……」

姐さん:「アンタ……ミツルに逆らったから、この仁義保育園にいられなくなったんじゃないのかい?」

コスキ先生:「シオリちゃん♪ それは違うよぉ♪
ナオキ君のパパはね? 大阪の大きな会社に部長さんとして呼ばれたから、ナオキ君は転園する事になったんだよ♪」

ナオキ:「先生、説明あんがとよ♪
あぁ、先生の言う通り、父さんの転勤はオイラが仁義園に入る前から決まっていた事だ。
オイラと母さんを養う為──
より大きなお仕事をこなす為──
そして、まだ若けぇ父さんの部下達にお仕事を教える為に、より大きな大阪の本社に行ったんだ」

ヤマト:「なっ!? えっ──だ、だってミツルが!? えっ!?」

ナオキ:「はっはっはっはっ!!
そんな誤解が生まれていたなんてな!! こいつぁビックリだ!!!」

ミツル:「そ、そんな……僕はてっきり……」

ユウト:「……」

ナオキ:「ん? おめぇは……」

ユウト:「……はい、ご挨拶が遅れました。
俺は──」

ナオキ:「──おめぇがユウトか」

ユウト:「っ──はい……」

ナオキ:「はっはっはっ!! そう堅くなるな♪
おめぇの話は、この仁義園の兄弟保育園、大阪の任侠園にんきょうえんの方で聞いてる。
オイラと入れ違いになっちまったが──任侠園にんきょうえんで、なかなかスジを通した生活を送っていたらしいじゃねぇか♪」

ユウト:「……あいつらは──サクラ組のあいつらは元気でやっていますか?」

ナオキ:「あぁ♪
オイラが入った当初は、足をコンクリにでも固められてんのかと思うくれぇに沈んでいたけどよ? 今は──ユウト、おめぇと遊んだ思い出がみんなの背中をしっかりと押して、立派に前に進んでいるよ」

ユウト:「そうですか……へっ、アイツらが……」

ヤマト:「アニキが戻って来てくれりゃあ百人力だ!!
あっという間にゾウさん組に追い付いて、逆転勝利だぁ!!!」

ナオキ:「あぁそうだ……
なんで二つもこんなでっけぇ穴を掘ってたんだ?」

ヤマト:「へぇ、それはでですね!
今、仁義無き運動会の最後の踊りの曲を巡って、ウサギさん組とゾウさん組が──」

ナオキ:「──そぃやっ!!! (穴の境目を蹴る)」

ヤマト:「ぬぁ!?」

ユウト:「っ!?」

ミツル:「なっ!?」

ナオキ:「よっ!! ほっ!!! もういっちょ!!!!」

姐さん:「ア、アンタ!? 何をやってんだい!!」

ナオキ:「へへっ!! これで一つの大きな穴になった♪
ヤマトォ!! 水をんで来てくれねぇか!! バケツいっぱいに!!!」

ヤマト:「ふぇ!?」

ナオキ:「先生よぉ! ヤマトが重てぇもん持って転ぶといけねぇから、手伝ってやってくんねぇか?」

コスキ先生:「はいはい♪ 先生も、い〜っぱいんで来ちゃうからねぇ〜♪」

ヤマト:「え、いやアッシは──」

コスキ先生:「ほらほらぁヤマト君♪ 行くよぉ♪」

ヤマト:「いや、ちょっ、ちょっとアッシは── (フェードアウト)」

ミツル:「ナ、ナオキ君、どういうおつもりですか!
この二つの穴は、ゾウさん組とウサギさん組との穴掘り勝負! それをあなたは──」

ナオキ:「──オイラの今通っている任侠園ではよぉ?
そんなもんは無ぇんだよ」

ユウト:「っ……」

ミツル:「は……なんですって?」

ナオキ:「なぁ、ユウト……そうだろ?」

ユウト:「っ……はい」

ナオキ:「必死こいて掘った大きな穴が二つ……その分厚い壁をこうやってぶち壊して繋げちまえば、もっと大きな穴になる……
二つだけじゃねぇ、もっとたくさんの奴らが掘ってよ? それをどんどん繋げちまえば、もっともっと大きな──そして広い穴になるんだ。
この砂場なんて、あっという間に無くなっちまうくらいのよぉ♪」

姐さん:「アンタ……」

ミツル:「な、何が言いたいのですか……」

ナオキ:「んん〜? そっちの方が楽しいんじゃねぇ〜かって話だよ──なぁユウト♪」

ユウト:「……」

ナオキ:「これは、ユウトが任侠園で言っていた言葉だ。
そん時の組同士の抗争は、大きなお山を作ってたんだってな?
ユウトはそのお山とお山の間に、もうひとつのお山を作った……そしてそれを繋げて、さらに大きなお山を──富士山みてぇな大きなお山を作ったんだ」

ユウト:「はい……完成したら、みんな裸足になってそのお山を登りました。
てっぺんまで登って、そして滑って降りて……
みんな泥んこんなって、後で先生に怒られて……
へへっ、楽しかったなぁ……」

ナオキ:「おめぇ、今回もそれをする気だったんだろ」

ユウト:「っ……」

ナオキ:「すまねぇな。おめぇの手柄、オイラが取っちまった♪」

ユウト:「へへっ……構いませんよ」

ナオキ:「(穴に入る) よっと!!
ミツル!!」

ミツル:「っ!? な、何です──ぅわぁ!? (ナオキに穴に引っ張られる)
な、何をするんです!?」

ナオキ:「シオリ!! ミツルに掘ったお砂を預けるから、それ受け取ってユウトとお山を作ってくれ!!」

ミツル:「な、何を勝手に話を──」

ナオキ:「ほうらっ、早く!!
早くしねぇと、ほらっ! ほらほらっ!! お砂が溜まってっちまうぞぉ〜♪!!」

ミツル:「ぅわっ!? ちょ、ちょっと待っ──」

ユウト:「へへっ!! ミツルの親分さん、早く!! 俺もお嬢さんも手隙(てすき)だ!!」

ミツル:「ぅおっ!? くっ……わ、分かった──分かりましたよ!!!
ぐっ……シ、シオリさん……これを……お願い、します」

姐さん:「っ……
お、大きな穴にしたからと言って……何の解決にも……な、ならないじゃないか……」

ナオキ:「……ん?」

コスキ先生:「戻ったよぉ〜♪ お水いっぱい、持って来たよぉ♪」

ヤマト:「ア、アニキィ〜! み、水ぅ〜、水を持って来やしたぁ〜!!」

ミツル:「……」

姐さん:「大きな穴を掘って! ひとつになったからといって!! なんの解決にもならないじゃないか!!!」

ヤマト:「ふぇ!?」

コスキ先生:「な、なに!? どうしたのシオリちゃん??」

姐さん:「組同士の争いが有耶無耶うやむやになって、また冷戦状態が続くだけだ!!!
アタイは!!! ……アタイは……今日この瞬間だけじゃない……仁義無き運動会でも……みんなと一緒に遊びたいんだ……っ
みんなと一緒にお手てを繋いで!! 笑って踊りたいんだよ!!!!」

ミツル:「っ……それは……」

ナオキ:「(ため息)
ユウト!! どういうこった? 教えてくれ」

ユウト:「っ……はい」

ヤマト:「へ? い、今、何がどうなってるんだ?? お水……へ?」

**************************************

ナオキ:「なんだぁ……そんな事で争ってたのかぁ」

姐さん:「そ、そんな事って……」

ナオキ:「ミツルよぉ!
オメェ……辛かったな」

ミツル:「っ……」

ヤマト:「んなっ!? ア、アニキ!! 辛かったのは姐さんの方です!!
アニキがいなくなって、ウサギさん組をお一人でまとめる事になって──姐さんだけじゃありやせん!! アッシも……アッシだって──」

ナオキ:「──二年前」

ヤマト:「っ……」

ナオキ:「……二年前に、仁義無き運動会から踊りが消えたのは、おめぇ達も知ってるだろ」

コスキ先生:「うん、そうだね♪
恐い恐い病気が日本中に広がっちゃって、みんなマスクを着けて仁義保育園に来なくちゃいけなくなっちゃったんだよねぇ♪」

ユウト:「あぁそうだった……
俺が前にいた任侠園にんきょうえんでも、園児がそれぞれに分かれて、お口チャックで給食やオヤツを食べる事になっていた。
一定の距離を保っての積み木遊び……
お父さんとお母さんが仮面夫婦の様なオママゴト遊び……
全ての絶望は、この日本中を覆い尽くす程のウイルスが元凶……
それによってえんのお友達との楽しい遊びの時間は失われてしまった」

ナオキ:「その年の仁義なき運動会……
一ヶ月もの間、仁義園のみんなは仁義なき運動会の最後の踊り『手のひらを太陽に』を、その日来てくれる母さん、父さんに、最高の状態で披露出来る様に、太陽がサンサンと照り付ける鉄をも溶かす炎天下の下で、必死に振り付けを覚え──練習を繰り返してたんだ」

ヤマト:「『手のひらを太陽に透かしてみれば』
みんな、太陽に透かして見てやした……汗でベトベトになっても『お手てがピカピカ光ってるぅ!』って言って……」

姐さん:「『みんなみんな、生きているんだ……友達なんだ』
あの時の仁義園は一つだった。
ウサギさん組、ゾウさん組、コケコッコさん組、シカさん組……そんな『組』という垣根かきねなんて越えて……みんながお手てをつないで踊っていたんだ……
その踊りが無くなるまでは……」

ミツル:「……」

ナオキ:「踊りの中止を先生から知らされた時──ミツル、おめぇは何を思った?」

ミツル:「っ……」

ナオキ:「正直に答えろよ……ミツル。
おめぇは、何を思った」

ミツル:「……僕は……っ」

ナオキ:「ミツル」

ミツル:「……僕は──先生達を……大人達を憎みました。
みんなであれだけ練習したのに、それをダディとマミーに見せる事が出来なくなってしまって、心の底から悔しかった……」

ヤマト:「う、嘘をつくんじゃねぇや!!
だったら──だったらなんで踊りが再開出来るようになった時に、違う曲を選んだりするんだよ!!
言ってる事とやっている事がめちゃくちゃだろ!!
アニキ! コイツは今、嘘をついてやがります!!」

コスキ先生:「はいはぁ〜い♪ ヤマト君、落ち着いてぇ♪
深呼吸しようかぁ♪ はい、吸ってぇ〜……吐いてぇ〜♪」

ナオキ:「シオリ、これが嘘か本当か……おめぇは知ってるな?」

姐さん:「っ……本当の、事だよ……」

ヤマト:「姐さん!?」

姐さん:「送りのヒマワリさんバスの中で、ミツルがダダをこねていたのを今でも覚えてるよ……
涙とヨダレにまみれて、コスキ先生の足にしがみついてワンワン泣きじゃくっていた……」

コスキ先生:「先生のパンツ、カピカピになっちゃって、お洗濯が大変だったんだぞぉ♪」

ヤマト:「っ……そんな……知りやせんでした……」

ナオキ:「あぁ、そうだろうな……ヤマトは、母さんがいつもお迎えに来てくれる。オイラ達とは帰り方が違うんだ、知らねぇのも無理はねぇ」

ユウト:「なるほど……そういう事か……」

ナオキ:「ん?」

ユウト:「ミツルの親分さんは悔しかった、悲しかった。そして──寂しかったんだ。
もう二度とそんな気持ちになりたくねぇ。
それだったら、踊りの内容をガラッと変えちまったら、そんな気持ちを味わう事は今後一切無くなる。
ミツルの親分さんは、そういうスジを導き出したって訳か……」

ミツル:「……帰ったらね、妹が僕に言うんですよ。
『お兄ちゃんともう遊べないの?』
『保育園に入ってもお友達を作っちゃダメなの?』って……
そんな事がありますか?
妹はこれからこの仁義園に入る予定なんですよ!! この仁義園に入り、同じ組のみんなと楽しく学び、楽しく遊ぶ!!
そしてその年に一回目の仁義無き運動会で踊りを踊るんです!!
そこで力の限りを尽くし合ったお友達とお手てを繋ぎ踊って、楽しい時間を過ごせたとしましょう!!! 次の年にはまた──また……それが叶わなくなるかもしれない!!
また病気が流行って……出来なくなるかも……しれない。
それを考えると、僕は……僕は……っ」

ヤマト:「……」

ミツル:「僕達が味わったあんな悲しい想いを……妹に──これから仁義園に入園してくるお友達に、味(あじあ)わせたくはないでしょう!!」

ヤマト:「自分の事だけじゃなく、これから入園する妹の事を──お友達の事も考えて……」

姐さん:「ミツル……アンタ、そんな事を考えていたのかい」

ナオキ:「ミツルとオイラは、同じ病院で産まれた──まさに義兄弟みてぇな付き合いだ。
腹を空かせて泣いているヤツがいたら、テメェの分のミルクを躊躇(ためら)いなく分け分け出来る様なヤツなんだよ、コイツは。
けっしてテメェ勝手に物事を考える様なヤツじゃねぇ……」

ユウト:「自分を外道げどうに落としてまでも、先のお友達の事を考えて、動く──まさに、仁義」

ナオキ:「なぁ……ユウト」

ユウト:「……はい」

ナオキ:「おめぇは、これをどう見る。
おめぇなら、どうスジを通す」

ユウト:「……
仁義保育園の園児、みんなの願いはどれも同じ……
その時その瞬間を全力で遊び、そして笑い合いたいと、誰もが願っています。
それはこの先も変わらず、ずっと受け継がれていく園児達の願いでもあります」

姐さん:「あぁ、そうだね……」

ユウト:「しかし、大人達の決め事に対抗するすべは、まだ子供の俺達には、涙流し、鼻水を垂らしダダをこねるしか方法は無い」

コスキ先生:「ん〜、パンツじゃなく、エプロンでそれをやってくれると、先生は助かるなぁ♪
ハンカチならなおさら助かっちゃう♪」

ユウト:「だったらよ……
へっ……だったら、お手てを繋げは良いじゃねぇか」

ナオキ:「へへっ」

ヤマト:「ふぇ?」

ミツル:「はい? お手てを……つなぐ?」

姐さん:「何を言っているんだい……それが出来なくなるウイルスが流行っちまったから、今こういう事に──」

ユウト:「──ウイルスが無かった時みたいに、また当たり前の様にお手てをギュッと繋ぐんだ。
俺は大阪の任侠にんきょう保育園を離れて、この仁義保育園に来た。
任侠園の奴らは、もう俺のお友達じゃねぇのか? ──いや違う。俺達は離れていても、ずっとお友達なんだ。
会えばすぐに離れていた時の事なんて忘れて、一緒に泥んこになってはしゃぎ回る。
ナオキ親分がこのお砂場で一緒に遊んでいるのと同じ様に、俺もまたアイツらと遊ぶ」

ミツル:「っ──離れても、お友達……」

ユウト:「卒園して、小学生、中学生、高校生……そして大人になっても、俺達が遊び過ごした時間は本物だ。
たとえ時間がそれを忘れさせても、俺達は任侠園で──この仁義園で確かに笑い合ってたんだ。
マスクしてるのがなんだ……
お手てを繋げねぇのがなんだ……
俺達はずっと、心を繋いでるじゃねぇか」

ヤマト:「……」

姐さん:「……」

ミツル:「心を、繋いで……いる」

ナオキ:「ユウト、良いスジじゃねぇか。
お手てだけじゃねぇ、オイラ達は心ごと繋いでる。
お手てだけだと、放しちまったらその感触はすぐに薄れちまうけどよ? 心ごと繋いでたら、こいつぁずっと離れらんねぇや……なぁ?」

ユウト:「はい」

ミツル:「……先生」

コスキ先生:「はいは〜い♪ ミツル君どうしたのかなぁ? おトイレ?」

ミツル:「先日ご提案させて頂いた『パンのヒーロー音頭おんど』に変更するというお話……無かった事にして下さいませんか」

ヤマト:「ぬぇ!?」

姐さん:「っ! ミツル、アンタ──」

ミツル:「──僕はどうやら、お友達の表面ばかりを気にしていたみたいです。
みんな同じ気持ちだったのに……僕はそれに気付く事が出来なかった。
みんなはお手てを──心を差し出してくれていたのに、それを握り返そうとしていなかった。
ゾウさん組を束ねる組長として、失格です」

ナオキ:「気付く事が出来たじゃねぇか♪
オイラ達はまだ子供だ。間違えて当たり前、無茶して当たり前、知らなくて当たり前だ♪
思いっきり走って、転んで、そしてケガをして……それを繰り返し、一つずつ遊びながら学んで、大人になっていくんだ」

ユウト:「今はどうだい……見えてるかい? (手を差し出す)」

ミツル:「っ……見えます……
ユウト君のお手てが……
砂場で泥んこになった、楽しそうに汚れたお手てを……僕に差し出してくれているのが……見えます」

ユウト:「繋いでくれるかい?」

ミツル:「っ──い、良いん……ですか?
僕なんかが……」

ユウト:「おやつの前に洗わねぇといけねぇけどな」

ミツル:「っ──ありがとう…… (握る)」

ナオキ:「へへっ!
じゃあオイラはこっちのお手てを貰うぜ♪」

ミツル:「っ! ナオキ君──」

ナオキ:「──シオリ!」

姐さん:「っ──アンタ!! (手を握る)」

ヤマト:「あっ……えっと……アッシは、え〜っと──」

ユウト:「ヤマトのアニキ!」

ヤマト:「ふぁ!?」

ユウト:「俺のお茶碗を持つ方のお手てが寂しがってんだが……どうだい?」

ヤマト:「あっ……んん〜……っん……」

姐さん:「おや? ヤマトは入らないのかい? だったらアタイのもう一方のお手てで──」

ヤマト:「──あぁぁ〜〜っっ! 入りやす!! アッシも繋ぎやす!! 仲間外れは許して下さい!!! (握る)」

ユウト:「へっ♪ やっと拳を開いてくれたな♪」

ヤマト:「っ……ん〜……んっ!!!」

ナオキ:「ゾウさん組のみんなも!! ウサギさん組のオメェらも!! 輪にならねぇかい!!! 仁義無き運動会の前夜祭だ♪」

一同:「(ガヤとなって、テキトーにはしゃぐ)」

コスキ先生:「ふふふっ♪ みんなみんな仲良しだね♪
ミツル君♪ 運動会の最後の踊りは『手のひらを太陽に』に決まったよぉ〜って、先生の方から園長先生にちゃんとお話しておくね♪」

ミツル:「お手数おかけ致します!! ありがとうございます!!!」

一同:「(ガヤとなって、テキトーに笑う)」

************************************
【じんぎ なき えんじ〜漆(しち)の章〜】

ミツル:「じんぎ なき えんじ、しちの章。
『シオリの仁義』」

ナオキ:「ユウト! オメェのスジ、見事だった♪
さすがは任侠にんきょう保育園のサクラ組組長だ。良いモノの見せて貰った♪」

ユウト:「いえ、とんでもありません」

ヤマト:「ぬぇ!? ユ、ユウトが組長!?
──ユ、ユウト、くん! テメ──あなたは、く、くくく組長だったの──んですか!!!?」

ユウト:「あっはっはっは!!
ヤマトのアニキ、なんだよその訳の分からねぇ話し方は。
あぁ任侠にんきょう保育園ではサクラ組を束ねる組長だった……でもよ、今は仁義保育園ウサギさん組に入ったばっかりの駆け出しの新参者だ」

ヤマト:「いやいやいやいや!! いやぁぁ……今は新参者だったとしても、『元』組長にアニキって呼ばれるのは……その、なんだ……へへっ」

姐さん:「何まんざらでも無い顔してんのさ……」

ヤマト:「いやぁ〜……ねぇ?」

ミツル:「あの肝(きも)の座り方、只者では無いとは思っておりましたが……なるほど納得です。
僕とは元々のうつわの大きさが違い過ぎました」

ユウト:「いや、俺もまだまだみんなと同じお子様ランチのプレートだ。
オムライスに刺さった旗を目指して登っている最中のお子様だよ」

ナオキ:「へへっ、違ぇねぇ♪」

ミツル:「しかしユウト君、仁義無き運動会の勝ちはゾウさん組が頂きますよ。
最後の踊りでは仲良く努力をたたえ合いますが……それまでは本気の抗争です」

ユウト:「あぁ、望むところだ。
本気でやり合わねぇと、お祭りは楽しくねぇからな」

コスキ先生:「(遠くから) ナオキくぅ〜ん♪

ママが待ってるよぉ♪」

ナオキ:「おっと、オイラはそろそろ戻らねぇといけねぇみてぇだ」

姐さん:「アンタ……もう、行っちまうのかい?」

ナオキ:「あぁ、名残りおしいけどな♪」

姐さん:「っ……」

ナオキ:「へへっ、シオリ、泣くんじゃねぇ。今生こんじょうの別れって訳じゃねぇんだ。
お婆ちゃんのおうちはこっちにあるからよ、盆と正月にはまた会いに来る」

姐さん:「だ、誰が泣くもんかい! アタイはただ──アタイは……」

ヤマト:「(号泣) アニ……アニッ──あぅあぅあ〜ぁぁぁぁあ」

ナオキ:「へへっ、情けねえツラしやがって……コイツらはよ! (頭クシャ)」

姐さん:「っ──」

ヤマト:「アァァァァニキィィィイ!!! (超号泣)」

ナオキ:「おぃおぃヤマト、きったねぇなぁ! 鼻水を付けんじゃねぇよ♪」

ヤマト:「あぁぁぁうぅぅぅ〜……す、すいやしぇん……」

ナオキ:「(息を吐く)
ユウト、ミツル」

ユウト:「っ……はい」

ミツル:「……はい」

ナオキ:「仁義園を、よろしく頼むぜ♪」

コスキ先生:「(遠くから) ナオキく〜ん♪!!
早くしないと、ママに置いて行かれちゃうぞぉぉ♪!!」

ユウト:「……はい」

ミツル:「あなたに言われなくても、分かっています」

ナオキ:「へへっ♪」

コスキ先生:「何をやってるの♪ なかなか帰らないから、ナオキ君のママと園長先生が気を使い合って、変な空気になっちゃってるぞ♪
ほら、お友達のみんなに『さようなら』をしましょうね♪」

ナオキ:「コスキ先生よ、すまねぇがそいつぁ出来ねぇ」

コスキ先生:「ほらみんなに『ばいばぁ〜い』って♪」

ナオキ:「オイラはオメェらに『さようなら』は言わねぇ。
こんな時、お友達ってのはこう言うモンだ……『また遊ぼうぜ』ってな♪
じゃあ、達者でな!!! (走る)」

姐さん:「っ──」

ヤマト:「ア、アニキィィイ!!」

ミツル:「ナオキ君!!」

ナオキ:「(遠くから) あっそうだ、忘れるところだった!!
シオリ!! 今日からオメェが次の組長だ!!
ウサギさん組をよろしく頼むぜぇ♪!!!」

姐さん:「っ──ア、アンタ……」

ナオキ:「じゃあっ、またなぁ!!!」

姐さん:「っ……」

ミツル:「シオリお嬢さん、ナオキ君……行ってしまいますよ」

ユウト:「子供ってのは、感情をぶつけねぇと伝わらねぇ事だらけなんだぜ?」

姐さん:「っ──アンタ……っ──ナオキ!!! アタイ、待ってるから!!! ナオキが帰って来るのを!! 良い子にして待ってるからぁぁぁぁあ!!!!」

ミツル:「……聞こえました、かね?」

ユウト:「あぁ、心で繋がってんだ……絶対に聞こえてるよ」

ヤマト:「ぇっぐ……えっぐ……ア、アニ……アニギィィィィィイ……」

************************************

コスキ先生:「はぁ〜い♪ じゃあ、ナオキ君の代わりの組長はシオリちゃんで、みんな大丈夫かなぁ♪」

一同:「(『はい』や『ヘイ』をテキトーに)」

コスキ先生:「はい♪ それではシオリちゃん、みんなにウサギさん組組長としてのご挨拶、ちゃんと出来るかなぁ♪?」

姐さん:「あ、あぁ……」

ヤマト:「姐さん! 落ち着いて! 気持ち穏やかに!!」

姐さん:「 (息を吐く)
本日、初日よりかくも賑々にぎにぎしくウサギさん組に足をお運びいただき、厚く御礼申し上げます。
この度、私のヤマオカ シオリが、イクセ ナオキのあとを継ぎ、このウサギさん組27代目組長として……襲名しゅうめいする運びと……なり……なり……っ」

ヤマト:「……姐さん?」

姐さん:「(泣きながら)
っ……あの人の様に……みんなを引っ張っていける自信なんて……無い……アタイには……組長なんて、出来ないよ……」

コスキ先生:「あらあらあらあらぁ〜
ん〜……じゃあどうしよっかなぁ〜♪
うんっ、ユウト君♪
前の園でも組長をやってたんだよね♪ だったら──」

ユウト:「──そいつは出来ねぇ相談だ」

コスキ先生:「えぇ〜……」

ユウト:「ナオキ親分がシオリお嬢さんを指名して仁義保育園を去ったんだ。
それを──ポンと出の俺が横から入って、ナオキ親分の気持ちをないがしろにしちまったんじゃあ、それこそスジが通らねぇ」

コスキ先生:「先生、困っちゃったなぁ〜♪」

ユウト:「なぁお嬢さん……
アンタは、ナオキ親分の隣にいながら何を見ていたんだい?」

姐さん:「……」

ユウト:「俺はナオキ親分がこの仁義園にいた時の事は知らねぇ……知らねぇがよ? お砂場で一緒に遊んだ時に分かった。
どうしてみんながこの人に惹かれたのか……」

ヤマト:「あんな短い時間で……?」

ユウト:「簡単な話だ……
笑っていたんだよ……ずっと」

姐さん:「笑って……た……?」

ユウト:「あぁ……ウサギさん組とゾウさん組の抗争っていう緊迫した空気の中でも、ナオキ親分は『遊んでいた』んだ。
誰よりも楽しく、誰よりも嬉しそうに」

ヤマト:「た、確かに……ずっと笑ってた」

ユウト:「本当に楽しかったんだろうなぁ。 みんなで遊ぶのが……そして──シオリお嬢さんと遊ぶのが」

姐さん:「っ──」

ユウト:「お嬢さん……アンタはどうだったんだい?
ナオキ親分と遊んでいて……みんなと遊んでいて、楽しくなかったのかい──」

姐さん:「……楽しかったよ……楽しかった。
楽しかったに決まっているじゃないか!!!
楽し、かった……楽しかったんだよ!!
凄く!! 凄く凄くいっぱいいっぱいいぃ〜っぱい楽しかった!!!」

コスキ先生:「そうだねぇ〜♪
楽しかったねぇ♪」

姐さん:「アタイは……部屋の端っこで絵本を読んでたんだ。
アタイはまだ字は読めないけど、それでも可愛い絵を眺めていた──そしたらナオキがその絵本に物語を当てはめた……
あの人もまだ字が読めないのにだよ?
アタイは『絵と全然合ってないじゃないか』って言っても、それでも凄く楽しそうに笑いながら、物語を勝手に作って……アタイに……アタイに聞かせて、くれたんだ……」

ヤマト:「ア、アッシも! アッシも楽しかった!!
広場で走ってて転んじまって! ヒザにバンソウコウっていうシールを貼ったんだ!! そしたら! アニキがそのシールにキリンさんを描いてくれた!!! あとで聞いたら『牛さんだよ!』って──そしてよ! 『今度はもっと上手く描くからよ』って……
そん時も笑ってた!!! アニキは楽しそうに笑ってた!!!!」

ユウト:「あぁ……
何をするにしても楽しく笑える……ナオキ親分はそんな子供なんだと、俺は思った。
だからみんなナオキ親分が好きだったんだ。
そして、それを誰よりも近くて見ていたお嬢さんを、ナオキ親分は自分の次の組長に指名したんだよ。
アンタならみんなを笑顔に出来るって──仁義園のどの組よりも楽しい組に出来るって、そう考えたんだ」

姐さん:「っ──あの人が……ナオキが……そんな……っ」

コスキ先生:「そんなに重たく考えなくて良いんだよぉ♪
シオリちゃんはシオリちゃんらしく、みんなはみんならしく♪ 楽しく良い子に過ごしてくれたら良いんだからねぇ♪」

ユウト:「そういうこった。
みんな誰かに引っ張って貰いてぇ訳じゃねぇ。
失敗したら失敗したで構わねぇ……それを助け合い、支え合うのがお友達だ」

ヤマト:「へぇ!!! アッシもこの命、この保育園に入園した時から、姐さんの為に散らす覚悟は出来てやす!!!
遠慮せずに頼ってくだせぇ!!!」

コスキ先生:「先生もいっぱいいっぱいお手伝いするから♪ ね?
組長が決まらないと、先生、園長先生に怒られちゃうんだよねぇ♪」

姐さん:「みんな……」

ユウト:「お嬢さん、涙を拭きなせぇ。
みんなお嬢さんの涙を見てぇ訳じゃねぇ……今なら分かるんじゃねぇか? みんなの見てぇモンがよ」

姐さん:「……っ!! (涙を拭う)」

(扉が開く)

タカシ:「──ジャマさせて貰うけぇのぉ!!!」

ヤマト:「──ぬぁ!?」

コスキ先生:「まだ自由時間じゃないぞぉ〜♪ みんなお部屋に──」

タカシ:「──組長がおらんくなったウサギさん組に、シカさん組組長、このタカシ様が自らカチコミじゃけぇ!!!」

マサト:「お昼のデザートは、私らシカさん組がもらいますよってにぃなぁ!!!」

姐さん:「──おひけぇ〜なすって!!!」

タカシ&マサト:「っ!!?」

姐さん:「手前てまえ、いたって不調法ぶちょうほう!!
あげます事は前後間違いましたら、まっぴらご容赦願います」

ユウト:「へへっ♪」

ヤマト:「あ、姐さん♪!!」

コスキ先生:「わぁっ♪」

姐さん:「手前、生国しょうごくと発しまするは、日本国を支えますは関東、大東京。
この度、26代目組長『イクセ ナオキ』のめいを受けまして『仁義保育園、ウサギさん組 27代目組長』に襲名致しました『ササオカ』の五代目『イナダ』を親に持ちます小娘でございます。

姓は『ササオカ』、名は『シオリ』。

渡世とせい、縁の故あって『仁義保育園、ウサギさん組』の皆々様にご厄介(やっかい)かけがちなる未熟な駆け出し者。

以後、見苦しき面体めんていお見知りおかれましては、​万事万端ばんじばんたんお願いなんして、ざっくばらんにお頼み申します!!!!」

タカシ:「お……おぉっ!!? え、えぇ〜っと……」

マサト:「お、親分……き、聞いていた話と、ち、ちち違います」

タカシ:「あ、あぁ……えぇ〜……?」

ユウト:「お嬢さん、良い仁義を切るじゃねぇか……」

ヤマト:「姐さん、かっけぇ〜……」

姐さん:「さぁ、アタイが組長だよ!!」

マサト:「お、親分……ど、どど、どうすんです?」

タカシ:「ど、どうすんじゃと、い、言われても……」

ユウト:「シカさん組の組長さん自ら、カチコミに来て下さったんだ。
お嬢さ──いや……シオリ組長!
せっかくですから、ウチらウサギさん組のスジ、通させて頂きましょう!!」

姐さん:「あぁユウト、そうだね♪
シカさん組のアンタ達!!
何をして遊ぶんだい?
ウサギさん組が全力で楽しく遊んでやるよ!! おもてに出な♪!!! (満面の笑顔)」

マサト&タカシ:「ひ、ひぇぇぇええ!!!!」

コスキ先生:「まだ自由時間じゃないんだよぉぉぉ♪」

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