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1日15分の免疫学(122)自己免疫と移植15

胎盤と免疫抑制について(前回からの続き)

本「胎盤は、栄養素の枯渇により母親のT細胞抑制しているのかもしれない」
大林「胎盤って栄養たっぷりなイメージあるけど?」
本「母親と胎児の境界細胞ではインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼという酵素が高発現していて、これは必須アミノ酸トリプトファン枯渇させ、トリプトファン欠乏のT細胞反応性が低くなる
大林「ほぉ」
本「妊娠マウスでこの酵素を不活性化すると、アロである胎児は母体から急速に排除された」※allo:非自己
大林「効果てきめん!でもT細胞の反応性が低くなるのなら胎児を守るTregもだめになっちゃうのでは?大丈夫?」
本「子宮上皮細胞栄養芽細胞TGF- βIL-10を産生し、この組合せはエフェクターT細胞発生を抑制してiTreg分化を促進する」
大林「なんと!だから妊娠中Tregが増えるのか」
誘導性Treg(invitro induced Treg:iTレグ

◆復習メモ
サイトカイン(cytokine)
:細胞が分泌する低分子のタンパク質で生理活性物質の総称。細胞間の相互作用に関与する。cyto(細胞)+kine(作動因子※)の造語※kinein:「動く」(ギリシア語)に由来する

サイトカインの種類
ケモカイン(Chemokine):白血球(免疫細胞の総称)をケモカインの濃度の濃い方へ遊走させる(普段は血流等の流れに乗っている)。
※本によっては、サイトカインとケモカインは別項目となっている

インターフェロン(Interferon;IFN):感染等に対応するために分泌される糖タンパク質※。ウイルスの細胞内増殖も抑制する(※タンパク質を構成するアミノ酸の一部に糖鎖が結合したもの)

インターロイキン(Interleukin;IL)※見つかった順でナンバリング:リンパ球等が分泌するペプチド・タンパク質。免疫作用を誘導する。

腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor;TNF):その名の通り、腫瘍を壊死させる機能を持つ。

トランスフォーミング増殖因子β(Transforming Growth Factor-β:TGF-β)
:細胞増殖・分化を制御し、細胞死を促すことが知られているサイトカイン。

本「マウスでは、iTregが欠損するとTh1サイトカイン誘導と胎児吸収が促進する」
大林「胎児吸収とは?」
本「ヒトでの流産みたいなものだね」
大林「なるほど」

本「iTregでFoxP3発現を制御する遺伝子発現制御領域は有胎盤類にしかない。nTregでのFoxP3発現には必要ない。これはiTreg母親の胎児免疫寛容のために進化してきたとも考えられる」
大林「胎児を守るために…。先日読んだTreg本では、iTregにはFoxp3発現が不安定なものもあるって書いてたけど、胎児免疫寛容のために胸腺出身のnTreg以外にも必要になって現場でTregになったのがiTregなのかな……」

ここまでのまとめ

・移植は、MHCが一致していても他の遺伝的な違いによりアロ蛋白質のペプチドが提示されて移植片拒絶が起きる。
ほとんどの移植には全体的な免疫抑制が必要となり、レシピエントはがんと感染のリスクが高まる。
・これに対し、胎児は自然に起こるアロ(非自己)であるが、種の存続のため受容されねばならない。
胎児に対する免疫寛容を理解すれば移植のアロ移植片特異的な免疫寛容を誘導できるかもしれない。

大林「なるほどね~免疫と移植と胎児か」

第15章のまとめ

免疫系のエフェクター機能は、外来性の病原体にのみ向けられるべき。
・しかし、外来性蛋白質自己蛋白質化学的に類似していて、自己非自己の厳密な識別不可能

免疫系多層にわたる機序によって自己への免疫寛容維持し、自己非自己を区別する代替マーカーを用いている。
・これらの機序が破綻すると自己免疫疾患が発症する。
・単一の制御機構は日常的に破綻していると考えられるが、他の制御機構安全装置となっているので、多層にわたる破綻慢性化して自己免疫疾患が発症する。

自己免疫疾患遺伝的な素因が重要だが、一卵性双生児でも同じ自己免疫疾患を発症するとは限らないので環境要因(感染、毒素、偶然的な出来事など)も重要。

自己免疫疾患抗体T細胞両方が関与しうる。

・組織抗原への免疫応答については、移植片拒絶から多くのことが明らかにされてきた。
移植片拒絶において標的MHCマイナー組織適合抗原である。移植片拒絶と移植片対宿主病ではT細胞が主要なエフェクターで、抗体も寄与しうる。
MHC分子主要組織適合遺伝子複合体major histocompatibility complex。ほとんどの脊椎動物の細胞にあり、細胞表面に存在する細胞膜貫通型の糖タンパク分子。ヒトのMHCはHLAと呼ばれる(ヒト主要組織適合遺伝子複合体Human Leukocyte Antigen)
マイナー組織適合抗原minor histocompatibility antigen:MHCクラスⅠ分子やⅡ分子は、細胞内でつくられる自己蛋白質由来のペプチド提示する。この蛋白質が多型性を示すなら、同種でも異なる個体であれば異なるペプチドになる。このような蛋白質をマイナー組織適合抗原と呼ぶ。

感染に対する防御を維持しつつ、自己免疫疾患や移植片拒絶などの望ましくない反応を制御するには、免疫寛容の抑制的な機序の理解が必要となる。

大林「なるほどなぁ~いやはや、破綻しないように幾重にも安全装置が仕組まれているから解明も難しく、操作も難しいわけだ」

本「次回からは第16章 免疫応答の操作」
大林「ワワ、ついに最終章ですね!」
医系免疫学「待ってる」
大林「うっ…わーい更に厚くなるね!」

今度は1000ページ級だよ!どんどん厚くなるね!

今回はここまで!
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