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万年筆インクの3つの「Sh」

インクに塗れて過ごす日々の中で一度は自分でまとめたいと思った話。

万年筆インクも今や数え切れないほどたくさんの種類があり、単純に青やピンク、緑と表すことはできないほど多様な色が入手できるようになっています。
そしてインクの特徴・魅力は基本的な「色」そのもののみにあらず、と言う部分でも最近は色々進化しているようで。
インクを特徴付ける要素は色々ありますがその中でも話に上ることが多い、英語でいうところの「Shading」「Shimmer」「Sheen」についてちょっとずつ説明したいと思います。

Shading

Shadingはインクの濃淡を指します。大体のインクは多かれ少なかれなんらかの濃淡があると思いますがさらに入れて使う万年筆にも左右されます。
手持ちの万年筆だとラミーのサファリ極細に入れたインクはかなり激しく濃淡が出るので使い勝手の良さに反して入れるインクはちょっと限られてきます(個体によってニブの具合は変わるようですが)。

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(こないだのロバートオスターMorning Mistもラミーのサファリです)

基本的に濃淡に関してはインクに薄い部分が出来るというのがポイントだと思っています。なのでフローが常に潤沢な万年筆では濃淡は出にくいはず(濃ばっかりになるので)。

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(薄い箇所が良く見えるセーラーのMSニブ。インクは三光堂の鶴舞ブルー)

濃淡がきれいなインクといえばロバートオスターのCherry Blossom(下)と先ほどのMorning Mistあたりがお気に入りです。マイルドな色合いで濃い部分も薄い部分も良い色。

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Shimmer

Shimmerはインクに入っているラメのこと。万年筆インクでラメ入りのものは万年筆で使用することもできますがインクが詰まるなどのトラブルがあるためガラスペンなど「つけペン」タイプのペンで使う方が良いとされています

私がラメ入りの万年筆インクを万年筆で使う時には先人の経験とアドバイスを参考に以下に注意して使っています。

・分解して洗浄できる&フローが多い&お値段は高くないTWSBIの万年筆の1.1mmスタブでのみ使用
少量のみ使用(↑はピストン式ですが半分も入れたことない)
ニブを上にしてペンを立てておく
・1ヶ月、長くても2ヶ月くらいでなるべく使い切る
使い切ったらしっかり洗浄して次はラメじゃないインクを入れる

特に最後の点の関係で実際ラメ入りインクを使った回数はまだ多くないですが今の所トラブルはありません。ただインクの性質・ラメの質・万年筆との相性などの要素で色々変わり得るので「ラメ入り万年筆インクを万年筆で使う場合は自己責任」が基本ということで。(そして「万年筆用でないインク」は万年筆では使用厳禁です

万年筆にしろガラスペンにしろラメ入りのインクで書くときはラメがなるべく均等に出るように注意が必要です。書いている途中でもこまめにガラスペンならインク瓶の蓋を閉めて瓶自体を、万年筆なら軸をゆっくり傾けたりしてラメが沈殿しないようにしています。

あとインクで書いた時にラメがしっかり乗っても写真に撮るにはまた一つコツが必要なようで。明るいところで撮っても一部しかラメが写らないことも。がっつり専用の照明が必要になるのかな・・・

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(Ancient Songsインクの「Sea View(観滄海)」、晴れた昼間の通常照明。ちょっとはラメ見えるかな?)

ラメ入りインクは数が増えてきていて元々のインクの色+ラメの色+ラメの大きさなどで色々バリエーションがあります。
以前サンプルで持ってたダイアミンのEnchanted Oceanは紺に近い濃いベース色に銀色のラメが好きです。でもこれを試したときと比べて最近はもっと色々あるんでじっくり悩みたい。じっくり悩める贅沢いいですね。

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Sheen

Sheenはインクの元の色とは違う色が光る様に現れる遊色効果のことを指します。
例えばこんな感じ。

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(ブングボックスの4Bは元の紺色に深い赤のsheenで高級感があります)

青系のインクに赤く光るsheenがよく見られますが紫インクに黄色~金色のsheenなど色んな組み合わせが見られます。ちょっと珍しいパターンではロバートオスターのCaffe Cremaで茶色のインクに銀色~灰色のsheenが出来て苦みがいい感じになるのですが未だ写真に撮れたことはないです。

万年筆で字を書く際にsheenを上手く出すにはインク・万年筆・紙それぞれの要素が関係してきます。

インク:Shimmerと違って特に明記しているわけではなく出るインクは出るし出ないインクは出ない(サンプル画像で判断出来る場合も)。でもsheenで知られていないインクでも大量にドバッと出ると光ることも。
万年筆:Sheenはインクが溜まる部分に出やすいため太字でフローが多い方が良い。あと使い切り近くで煮詰まった状態の方がたくさんsheenが出る傾向も。
:Sheenはインクが溜まってゆっくり乾く際に出来るようなのでようなのでインクを吸収しにくい紙の方が出やすい(トモエリバーなど。今回の記事に載せてる写真はほぼトモエリバーで書いてます)

Shadingで主にインクの薄い部分がポイントなのと対照的にSheenはインクの濃い部分にできる傾向があります。実際万年筆で書くと筆を止めた部分に出やすいので文字の種類でいえばアルファベットやかな文字よりは漢字を書いた方がsheenが出やすいはず。
そもそもSheenとなる部分はインクの色を単純に同系色に濃くするのではなく別の色彩を加えて深みを与えるみたいな役割があるので紙の都合などでsheenとして光らなくても面白い濃淡が出来ます。

さらにSheenはインクが溜まってゆっくり乾く部分に出るので特に写真を撮るときなどは完全に乾いてからの方が綺麗に出ます。そしてsheenが出るインクは一般的に完全に乾いても摩擦に弱く、手で触れたりするとにじみやすいので注意。

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(ブングボックスのマタドールレッドで書いたのですが触った覚えがないようなところまで掠れてしまった例)

Sheenを写真に撮るのもまたちょっと工夫が要ります。基本的に晴れの昼でしっかり太陽光が望める環境でなるべく多く光るアングルを調整して、のみではこれが限界。やっぱり照明が必要かな・・・

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(ロバートオスターのBlue Water Ice。ほどほどに光るインクですが写真で再現しようとなると普通に撮るだけじゃダメみたいですね)

ただ先ほど書いたように染み込みにくい媒体の方がよくsheenするので下手に良い紙に書くよりこういうアクシデントの方がよく光るのはご愛敬。

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(別に情報いらないと思いますがおそらくセーラーの蒼天です(笑))

ShadingもShimmerもSheenも好みは人それぞれで、sheenがもてはやされるようになったのも最近のことみたいですが色々な楽しみ方ができるインクがたくさん増えて単純に楽しいですし、この3つの要素を傾向&対策することでどんなインクをいつどのペンで使うと良いかより分かってきました。あとは写真スキルですね・・・
素敵なインクが世の中にはたくさんあるのでその魅力を存分に楽しみたいと思います。