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細字 or (and) 中細?

また二択の話に辿り着いてしまいました。

以前の記事にも書いたかもしれませんが基本的に万年筆に関することは「好みの問題」に最終的に落ち着くことが多いです。でもその「好み」もある程度情報や経験を蓄積して形成されるもので、例えば始めて万年筆を買う時点ではまだわからないこともあると思います。
なので今回は一番使用頻度が高いと思われる細字と中細の字幅について自分なりにちょっと白黒つけてみようかなと思います。

ただここに書いてあることは人によってはその違いが気にならない場合もあるかもしれませんし、インクや紙のチョイスに左右されることもあるのであくまでもだいたいのガイドに。あとこれも些細なことですがアップした写真のノートはA罫です。
そしてここの「細字」「中細」は日本の万年筆の字幅ですが「海外の極細」の中には「日本の中細」に近いものもあります(「日本の中字」に近いものもあります)。これも色々左右されるのでだいたいのガイドに。

細字

日本の細字がなぜそもそも西洋の細字より細いかというと漢字という細かいパーツでできている文字を書くからと言われています。もちろん限界はありますが平均的な文字の大きさで一般的な漢字をノートなどに書くなら多少インクのフローが良くても潰れたり滲んだりしにくい、最悪ちょっと滲んでも潰れずにすむ、そんな字幅が日本の細字。
そして私が最初と2回目に万年筆を買ったとき、細字は手帳に使いやすい字幅というキーワードが2回とも説明に出てきました。
実際英字を手書きする人の間でも日本の細字や極細字などが人気な事にも手帳のような小さいサイズの紙に書くのに万年筆を使う人が増えたのが関係しているようです。
あとボールペンやシャープペンを使ってた人にとっても比較的似た感覚で使えるのも特に万年筆を使い始めの人には良い字幅かも。あとインクの性質にあんまり左右されずにインクの色の出が比較的均一なので仕事などにもある程度融通が利きやすかったり(とはいえ前も書きましたが仕事の手書きにびっくりするようなインクやペンを使ってる人もいるので仕事の性質によりけりではあると思います)。
さらに細字はどの万年筆メーカーでもスタンダードなラインアップの一員なので軸が選びたい放題なのも忘れちゃいけません。
総じて細字は日常の細々とした色々に広く使いいい字幅といえます。


あんまり拡大しないでいただきたいですが「潰れにくい」がだいたい伝わるかな。インクは色彩雫の月夜。

中細

(ちなみにですが私が使っているのはセーラーの中細です)
中細もまた日常的に使える範囲の字幅ですし、細字とそんなに使い勝手が違うわけではないんですが、それでも普段どっちも使っているとまた違う魅力があるなと感じます。
その名前の通り細字よりちょっと太い線が書けるニブなのですが、そのわずかな差で書き味がよりなめらかになったりインクの表情が豊かになるところはあるんじゃないかな。そう思ってるのは私だけじゃないはず。
特に少し薄めの濃淡がある程度出るインクで書くとその表情が見えてくると思います。そこからさらにインクをもっと楽しむためにもう少し大きい字を書いてみよう、ゆとりをもって書いてみようという意識が働く、みたいなことにも繋がったり。
あと中細で書くとちょっとくらいインクが滲んでも線が柔らかくなってそれはそれでまた良い味が出ます。それもまた表情のうち。
そのため中細は趣味の手書きをするのに特に向いているんじゃないか、そしてインクの魅力や書き味をさらに楽しむ「万年筆ライフをより充実させる」ニブなんじゃないかと思います。

黒っぽいインクだけど「ニュアンス」が出る。インクはロバートオスターThunderstorm。

一応参考までに中字もまた中細とは僅かな違いですがより英字用寄り、より趣味寄り、そしてよりインクを楽しむ用としてざっと考えています。

これでものびのび大きい字を書こうと努力していました。こういう色のインクだったら見えやすさでも中字以上が良さそうです。インクはロバートオスターのChartreuse。

ここまで読んでだいたいオチの想像はついたと思いますが、白黒つけるといっておきながらこれもやっぱり「or」じゃなくて「and」、つまり両方持って使い分けるのが一番良いというのが結論です。
大きな差があるわけではありませんが、それでも両方使うとそれぞれ別の良さがあることが実感できるので是非細字と中細をどっちも普段使いに加えてあげて素敵なインクで使ってみてください。