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オケで弾いてヤバかった(?)ピアノパート5選

3月以来オケの仕事もなくピアノが入ってるオケ曲を聞いてもすっかり「聴く側」モードに入ってしまっています。
たまにiPodとかでオーケストラの音楽を流してそれに合わせてピアノパート弾くみたいな練習もするのですが最近ちょっとご無沙汰で(また近いうちにやろうかな)。

ただそういう練習をしたところでこれまでオケで弾いてきた曲の中でこれは手強かったという曲は大抵手元にパートが残ってないものばっかり。次うっかり難しい曲がいきなり来てしまったら適応できるかしらん、くらいにはオケ平和ボケしています。それより休みの小節が数えられなくなってる可能性もありますが。

そんな自分にオケの緊張感を思い出させるべく今回自分がオケで弾いた曲のなかで手強かった、いやそれ以上にヤバいと思った5曲を難易度順にまとめてみました。チェレスタでなく、もちろん協奏曲とかの類いでなくごく普通にオケの一員としてのピアノのパートから選びました。(なのでトゥーランガリラのチェレスタパートとかはないです)
最初の方は「ヤバい」と言われてもぴんとこないかもですが難易度は直線的でなくむしろ指数関数的に上がっているので傾斜に注意。

レベル1:レナード・バーンスタイン 「ウエスト・サイド・ストーリー」より交響的舞曲

あくまでも「レベル1」ですが、主にこの曲の有名さ・キャッチーさ・演奏頻度・全体の曲の楽しさと比較してみるとピアノパートは地味な苦労が多いイメージがあります。
まずチェレスタと掛け持ちで楽器間移動が速い部分もあるのでスムーズに移行できる楽器のセットアップから始まり、ページめくるにも忙しい箇所やノリでなんとかならない部分も少なからずありますし、ピアノ弾いてるだけにしては無駄に運動量が多いし、あんなに楽しいはずの「Mambo」でも結構余裕ないまま弾き続けていってるような感覚もあります。まあそれでも「マンボ!」は言いますし周りのみんなの雰囲気も合わせて楽しく弾いちゃうのですが。それでも焦りながら弾いてる部分が少なからずある曲。

レベル2:アーロン・コープランド クラリネット協奏曲

自分が弾かない楽器のレパートリーは本当に異国・異文化みたいな感覚があると常々思いますがこれもそうでしたね。こんな曲があるんだという新鮮さもそうですし、面白い曲なんですけどなんか音が多く、いわゆる伝統的なハーモニーでないのもトリッキーなパート。あと何と言ってもオケが小編成なのと曲の書かれ方の関係で自分の音が他の楽器の音と溶け合わず離れて飛び出てるみたいな感覚で不安になりやすかった記憶がすごくあります。同じコープランドの「アパラチアの春」の小編成バージョンも似たような感覚。

レベル3:セルゲイ・プロコフィエフ 交響曲第5番

なかなか「これこそレベル3!」とがっつり明確に言えるようなピアノパートではないのですが、ちょこちょこ弾きにくい部分があったりちょこちょこ数えにくい休みがあったり最後の最後で突然忙しくなったり、あと自分が弾いた時とにかく寒かったことまで合わせて地味に、でもかなり苦労する曲でした。あんな規模の交響曲ではちょっと珍しくピアノパートがほぼ最初から最後の最後まで稼働しているのでずっと気が抜けなくて、しかも集中力が一番試されるのが最終楽章という。プロコフィエフは何やってもなんらかの意味で難しい。

レベル4:エドガー・ヴァレーズ 「砂漠」

ここから大分本格的になってきます。この曲は大学に入ってすぐオケに呼ばれて弾くことになったのですが、その頃はオケピアノ経験も浅くまだ現代音楽の沼に近寄ってもいなかったのでその時点では本当にヤバく感じた音楽でした。
曲を聴いても何が何だかわからないし自分のパートを頑張って(数えて!)弾いても正解なのか全くわからないし周りは誰も知ってる人いないし(弦楽器無しの編成だったのが主因)、カルチャーショック以上の衝撃を受けた大学生活の始まりでした。
でもこの曲に出会ったのが後の現代音楽好きへの伏線みたいに効いているような気もしますし、ある程度弾いたら(分からないにしても)愛着が湧きましたし貴重な体験でした。

レベル5:ボフスラフ・マルティヌー オーボエ協奏曲

色々オケでピアノパート弾いてきましたがこの曲はなんか・・・ヤバいの別格でしたね。これに出会って「ピアノの練習さぼらず大学の頃と変わらないレベルで維持してきて良かった」と心の底から思いましたもん。
マルティヌーはピアノ弾いてるとなかなか出会わない作曲家ですが他のどんな作曲家とも結構離れてる作風で、その作風でオーボエ協奏曲とは思えないような音の多くてトリッキーなピアノパートを書いてくる諸々の理不尽さ。たまたま大学時代室内楽でマルティヌーのマドリガル・ソナタを弾いたことあるのですがそれでもなかなか指も耳も慣れない。とんだ手強い伏兵でした。今から振り返ってみても私のパートだけセミプロのオーケストラのレベルじゃない・・・

練習でもリハーサルでも本番でも(協奏曲ですから直前まで楽器に触れず舞台裏待機)散々苦労しましたが、でもやっぱり曲にもパートにも愛着は湧きました。第2楽章の途中でオーボエのソロとピアノだけで即興的(あくまでも「的」)に演奏する部分があって、ピアノというよりはハープシコードやツィンバロムみたいな、古楽や民族音楽みたいな雰囲気があり。相手は息する楽器なんで特に足引っ張れない緊張もあるながらもその新鮮な、ピアノのまた違った存在感と姿を存分に楽しみました。ただまた弾く機会が回ってきたら一旦「orz」状態になりますし楽しく弾ける自信は皆無です(迷わず承諾しますけど)。

もともとピアノって弾く音が多くて自分だけで世界が完結できる楽器なのでパートが単純だと極端につまらなくなりますし、あと弾く部分が少ないと舞台上で凍えたりもするので、そうなるくらいだったらパートは難しい方が基本ウェルカムです。あと自分は休符数えるのが単純に苦手なので待つよりは弾いてる方が気が楽。

そして難易度がどうとかソロがあるかとか関係なく弾いててオーケストラのサウンドの中で「意味がある」と感じられるパートがやっぱり弾き甲斐があるパートだと思うのですが、反面自分のパートしか気にする余裕がないくらい難しい曲はちょっとしんどい。主にマルティヌーの事ですが。
色々なオケ曲があってまだ弾いたことがないけど弾きたいピアノパートもたくさんありますし(バルトークの「中国の不思議な役人」も相当ヤバいそうですねー)、きっとマルティヌーやヴァレーズみたいなレアな伏兵に驚くこともたまにあると思いますがとりあえずどんなパートでもオケの一部になって弾ける日がくるのが楽しみです。それまで気を抜かずしっかり練習を。