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チェレスタ取扱説明書 part 1

最初に一言。
ロックダウン前にオーケストラのリハーサルフルで一回出来てよかった!(汗)
万事うまく行けばロックダウンも短く済むと思いますが、それでも一回リハーサルできないだけでもセミプロ+初演作品という状況では結構影響があるので残念は残念です。といっても私自身はフルリハーサルが始まる3月までリハーサルに出なくていいのですが。

さて以前も書きましたが今回私はチェレスタという楽器を弾きます。外見はこんな感じ(この写真も撮れてよかった)。この個体は元々古い楽器を最近復元したもので、プロオケで見る楽器はもうちょっと大きい(そして音域も一オクターブ広い)です。

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小さいピアノみたいな鍵盤で演奏する楽器ですが中では弦ではなく鉄琴みたいな金属製の板をハンマーで叩く仕組みになっています。音もそんな感じで、有名なソロには映画ハリーポッターシリーズの「ヘドウィグのテーマ」やチャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」の「金平糖の精の踊り」がある、と言えばイメージしやすいでしょうか。
あと写真では見にくいですが下の方にはペダルが1つあってピアノの右ペダルと同じく踏むと音が響いて離すと止まる仕組み。音量やパートの性質を考慮してもだいたいいつもペダルを踏んで弾くことになります。

オーケストラで常に使われる楽器ではなく、主に20世紀以降に打楽器の一種として特定の音やイメージを狙って使われるチェレスタ。現代では打楽器奏者でなくピアノ奏者が呼ばれて弾くことも多いです。私も大学時代にそういう形でチェレスタに出会い、以来15年の間ちょこちょこオケに呼ばれて演奏してきました(卒業後の相棒は主に写真の個体ですが大学にも一つ置いてありました)。音量も表現力もピアノに到底敵わないちょっと気むずかしさのある楽器ですが(詳しくは後述)、長い付き合いの中でチェレスタに愛着が湧いてこの楽器のことを音楽を書く人・聴く人・弾く人にもっと知ってもらいたいということで(これで何度目かになりますが)この楽器の取説を書き残しておくことにしました。

まずは参考として作成したプレイリストを。

チェレスタが使われている作品で「この使い方が上手い、好きだ」と思う曲を集めてみました。相当頑張って主観で絞ったのでものすごく有名な曲が結構抜けてたりもしています。
音色がわかるよう先述したハリポタと金平糖の精から始めてみましたが、チェレスタが大きく取り上げられている曲はこの2曲とレスピーギの「カッコウ」くらいのもので、他は先ほど説明したように「打楽器の一種として特定の音やイメージを狙って使われる」ことが多く出番は極めて少ないです。(プレイリスト全体は5時間以上ありますがチェレスタが弾いてるのはもしかしたら合計でも20分もないんじゃないか、というレベル)。なのでプレイリストをずっと聴いてもなかなかチェレスタが出てこない曲もあります。一応音量的にもチェレスタが聞こえやすい録音を選んだつもりですが元々の音量の関係でちゃんと耳を澄ましてもどうしても聞こえにくい部分も。
プレイリストの中身について詳しくはpart 2で。

そしてチェレスタは出番が少なく音量もかなり小さいだけでなく音域も狭く、さらに音を積み重ねてもあんまり音量が増幅されないので作曲家側がちゃんと理解して考慮して使ってあげないとフルオケの音に埋もれることに。弾く側にもある程度工夫する余地はありますが(ピアノとはちょっと違った弾き方になったり)、そこの主な責任は作曲家の方にあるといっていいと思います。
(ちなみにハリポタのチェレスタソロはおそらくメル響所有のと同じく広めの音域で音がクリアに出て表現も含めピアノみたいに弾ける良い楽器を使ってそうですが経験上そうでない楽器の方が圧倒的に多いので・・・)

チェレスタと似たような楽器には鉄琴・ピアノ・ハープ・ビブラフォーンなどがありますがおおまかに言えばこんな感じで差別化できます。
・鉄琴:鉄琴の方が鋭く通る音が出る、チェレスタの方が周りの音と馴染みやすく機動力で勝る、低音域の使い方は両者全く違う
・ピアノ:音の数、音域、音量、華やかさ、表現力の豊かさなどではピアノが圧倒的、チェレスタにはピアノと違う独特な雰囲気があり小編成の中で使っても音が目立ち過ぎない
・ハープ:音量(高音域除く)、音域、表現の幅ではハープが優位、チェレスタの方が機動力が高い部分もあり弾ける音に融通が利く
・ビブラフォーン:音量・表現の幅・音の余韻の長さはビブラフォーン、音のクリアさ(特に高音域)や機動力ではチェレスタ

なのでオーケストラにおいて(ソロ楽器としてではなく)こういった周辺楽器(勝手にそう呼んでます)を使うときには作曲する側は違いと長所を知って求められる音、効果に合う楽器を選ぶ必要があります。
ただそれは必ずしも似たところのある楽器から一つだけを選ぶということではなく、チェレスタは上記の他のどの楽器と組み合わせるにも良い楽器だったりします。プレイリストにもいくつか面白い例(特にハープとの組み合わせ)を入れておきました。

・・・語り始めるとこうなるとだいたい予想はついてましたがここまででもう2000文字超えてしまいました。オーケストラにおけるチェレスタの使われ方や活かし方などプレイリストに含めた曲に絡めた詳しい話、自分が思うチェレスタの魅力については次の記事で。