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お題でプレイリストその13「...and keep on waltzing」

音楽を普段聴いたり弾いたりそしてバレエも少しやっていると世界には色んな踊りがあることを肌で感じますが、その中でもワルツは一大ジャンルというか代表的なというか他の種類の踊りとは違った(量的な意味で)存在感がある気がします。
楽曲としても実際に踊る作品、踊ることを特に意図していない作品どちらもたくさんありますし、様々な時代や国のワルツ作品があって名曲も多い。

ポピュラー文化になると2拍子・4拍子の楽曲が圧倒的に多くなるせいか3拍子から自然とワルツを連想させるケースも多くみられます。中にはタイトルや歌詞でワルツに言及して曲の途中だけ3拍子にしてワルツを匂わせたり。
国や時代によってワルツのスタイルも多様化し、踊らないワルツ、雰囲気だけのワルツが増えることでもはや現代では概念だけになっているのかも?
そんなことに思いを馳せてクラシック音楽の現代寄りの時代から様々なワルツを選んでみました。

このプレイリストの何曲かで分かるように人間以外の生き物もワルツを踊るというのも興味深い描写。バレエ作品だと結構ある表現だとは思いますがそうでない楽曲でも割とよくある擬人化の形のようですね。

ちなみにどうしてもロシア&ソヴィエト系統が多くなるのは2、3拍目が重めのロシア系のワルツが好きだから。Auerbachの前奏曲がいい例ですが風刺的なレベルで全部の拍が重くてもちゃんとワルツっぽいのは面白いですね。今回は入れなかったのですがプロコフィエフの交響曲第5番の第3楽章もだいぶ拡大解釈したワルツと見ることができないかな、と思っています。

今回選んだワルツを色々見ていると「二人で踊っている様子」「二人だけの世界」「過去を振り返る」が複数の作品に共通要素として現れる中、ワルツは二人で踊るものである前提で一人で踊っている(あるいは思い出や幽霊と踊っている)描写も出てくるのがものすごく興味深い。喜劇も悲劇もできるしファンタジーもサイコホラーもできるワルツという踊りの形式。

一応趣味で少しバレエなどやる人ではありますが自分にとっては「実用的でない」ワルツが魅力的。形式があくまでも形式でしかない、表現のベースとしてしか機能してないくらいが好きです(ワルツに限ったことではないですが)。
とにかく好きで入れたのがコシュキンの「アッシャー・ワルツ」だったり、Stephen Houghが「なぜWaltzing Matildaはワルツじゃないんだ」とアレンジした「Matilda's Waltz」、そしてラフマニノフの「交響的舞曲」の第2楽章はものすごく特別。ラフマニノフにとってのラスト・ワルツです。

バレエや社交ダンスがある限りワルツは存在し続けることは間違いないはずですが、もしもワルツが踊られなくなったとしてもクラシック音楽やポピュラー音楽の中で形骸となったワルツの幽霊が勝手に踊り続けるような気がしますし、その三拍子のリズムに合わせて身体が自然と動いたりするような気もします。元々は流行の踊り・音楽だったのでそういう経過をたどるのは納得ですが他にもそういうジャンルはあるのか気になるところ。
ワルツのように綺麗なかたちで「形ばかり」に変化(そしてある意味風化)していく音楽があれば見てみたいですね。