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コンペ採用作品の制作プロセスを振り返る 【#KILLTUBE武器屋】

劇場アニメ『KILLTUBE』の公募企画  #KILLTUBE武器屋  にて、私がデザインした

「インプレゾン無礼討(ブレード)」

が採用されました!
ありがとうございます🙇‍♀️🙇‍♀️

この記事では、その制作プロセスを振り返ります。


そもそも #KILLTUBE武器屋 とは

2026年公開予定の劇場アニメ『KILLTUBE』。

その世界観は「2026年まで江戸時代が続いている日本で、侍たちが決闘配信に挑む」というもの。


そして #KILLTUBE武器屋 とは、
その劇中で登場する武器デザイン案の公募
でした。

採用される武器案は10個。

応募場所はX上、募集期間は2024年5月3日から同16日まで。募集を呼びかけるポストには、公式の作例も載っています。

そこで私が応募したのが、

「インプレゾン無礼討(ブレード)」です。 

インプレゾン無礼討(ブレード)

インプレゾン無礼討(ブレード)は、文字通り

「インプレゾンビをモチーフにした刀」です。

🧟‍♂️ チェンソーと鞭の2モードに変形
🧟‍♂️ 決闘配信のインプ数に応じて切れ味が変化
🧟‍♂️ 丸ノコが認証バッジ、チェンソーがリプ欄

本記事では、その制作プロセスを
5つの段階に分けて振り返ります。


▼1. 作例を分析

まずは求められている雰囲気を掴むため、
告知ポストに載っている公式作例をチェック。

公式作例(出典:https://x.com/KILLTUBEJP/status/1786369405225680926 閲覧日:2024/5/23)
公式作例(出典:https://x.com/KILLTUBEJP/status/1786369405225680926 閲覧日:2024/5/23)

すると、
デザインの方向性は2パターンに分けられる
と気づきました。

【パターンA】
日本的なモチーフを、シンプルに武器化する

・団扇扇風刀 👉 扇風機  を 日本刀 に
・紅舞傘刃  👉 傘&舞妓  を 鉄扇 に
・櫛ブレード 👉 櫛    を 大ナタ に

【パターンB】
通俗的なモチーフを、日本的な武器に絡める

・メントスコーラハンマー  👉  メントスコーラ   を 金槌 に
・キャッシュレス刀   👉  キャッシュレス決済 を 日本刀 に
・主人公の刀 👉  ステッカー     を 日本刀 に

その時点で投稿されていた応募作はパターンAが圧倒的に多く、

パターンB
「通俗的なモチーフを、日本的な武器に絡める」
は少なかった
ことから、

アイデアが被りにくいBの方向性で考えることにしました。

パターンBを選んだ理由はもう一つ。

その代表である公式作例
「メントスコーラハンマー」
が好きすぎたからです。

一番上がメントスコーラハンマー(出典:https://x.com/KILLTUBEJP/status/1786369405225680926 閲覧日:2024/5/23)

【メントスコーラハンマーのここが好き!】

🔻やりたいことが一目で伝わる見た目
 
(クソデカコーラをハンマーに)

🔻元ネタと結びついた武器のギミック
 
(メントスコーラの噴射で加速)

🔻思わず笑えるシュールなユーモア
 
(ネットミームそのものを武器化)

これら3つの要素にとてつもない魅力を感じ、
自分でもこんな武器を作りたい!
という思いでデザインを考え始めました。


▼2. 作例を踏襲

アイデアの出発点として参考にした「メントスコーラハンマー」。

その個人的魅力の一つ 
🔻思わず笑えるシュールなユーモア    は、
メントスコーラが〈ミーム〉だからこそ
生まれている味わいだと感じました。

よって、メントスコーラのような

・ソーシャルメディア上での知名度が高く、
・『KILLTUBE』のサイバーパンクな世界観に合い、
・「武器にできそう」なくらいアグレッシブなミーム

をいろいろと探った結果、たどり着いたのが

「インプレゾンビ」

です。

「インプレゾンビ」は
  いらすとや にもある

さらに、
メントスコーラハンマーが持つもう一つの魅力
🔻元ネタと結びついた武器のギミック
も踏襲したいと思ったため、
そのギミックを自分なりに分解し
以下のような図式にしました👇

メントスコーラ
→ コーラの噴射
→ 金槌による打撃

これを抽象化すると
こうなります👇

〈何らかのミーム〉
→〈連想される物理運動〉
→〈連想される武器/攻撃手段〉

そして
「インプレゾンビ」に当てはめると
こうなります👇

インプレゾンビ
→ 連なる、群がる、纏わりつく、腐らせる
→ 鎖、チェンソー、鞭、腐食

したがって、

「チェンソーの鎖が展開して鞭に変形」
「巻き付いた対象に毒を注入して腐食」

というギミックを考えました。

ギミック図解

▼3. 課題を解決

【課題】チェンソーにする? 丸ノコにする?
ここまで決まった時点で、デザインラフとして
チェンソー案/丸ノコ案の2種類を描きましたが、
これらの案はどうにも一長一短でした。

【チェンソー案】

リプ欄をチェンソーにアレンジ

・長所:連なるリプが鞭へ変形することで、〈元ネタと結びついた武器のギミック〉が成立している
・短所:認証バッジが小さいため、遠目だとモチーフが伝わらない


【丸ノコ案】

認証バッジを丸ノコにアレンジ

・長所:認証バッジが大きいため、即座にモチーフが伝わる
・短所:丸ノコがたまたま認証バッジの形をしているに過ぎないため、〈元ネタと結びついた武器のギミック〉は期待できない

どちらも一長一短な二つの案、どうする?
ということで……

チェンソーと丸ノコを合体させました。

決定案

さらに、メントスコーラハンマーの個人的魅力
🔻やりたいことが一目で伝わる見た目
 も踏襲し

「ゾンビの生首に認証バッジが突き刺さっている」

という構図でモチーフがすぐ伝わるようにしました。


【課題】和風要素が薄くなってない?
江戸が舞台の作品ながら、気づくと「インプレゾンビ」やら「チェンソー」やら、和風要素がほぼ無くなっていたので、ここで一旦軌道を修正しました。

【解決策1】持ち手を日本刀っぽくする

持ち手
柄と鍔の解説

持ち手のディテールを日本刀の柄巻っぽくアレンジ
持ち手に鍔を追加。鍔迫り合いを可能にすることで、丸ノコ部分に「鍔迫り合いで使えるサブウェポン」としての意味を持たせました。


【解決策2】武器名に「無礼討ち」という語を入れる

・インプレゾンビの剣で「インプレゾンブレード」
→ 全部カタカナなので、和風要素を入れたい
→ 「切捨御免」の別名「無礼討ち」
→ これ、普通にそのままブレードと読めるんじゃ?
「インプレゾン無礼討(ブレード)」 という武器名が決定



▼4. 武器の完成

こうして煮詰めた構想を元に、
武器デザインが完成しました。

鋸形態 ⇄ 鞭形態

【ゾンビの目】

人間の視線は「目」を優先的に検知するので、見る者の視線を引きつけるためにゾンビの目をこちら側に向けました。かの有名な「振り向きゾンビ」のオマージュでもあります🧟‍♂️

【リポスト】
SNS繋がりで、「リポストのマーク」をレバーの基部とチェンソーの刀身に追加しました。
マークの矢印(🔄/🔃)は、それぞれレバー/チェンソーの回転方向と同じ向きになっています。

レバーの基部(🔄:グリーン部分)
チェンソーの刀身(🔃:ピンク部分)

▼5. 紹介用画像

#KILLTUBE武器屋 においては、
武器の紹介画像をXに投稿する
ことで応募完了となります。

この事実から、紹介画像は
効果的なプレゼン資料のつもりで
作るのが望ましいと考えました。

Xに投稿した紹介画像

【紹介画像の画角】
紹介画像はXの投稿として閲覧されるので、
スクロール中でも目に留まるように
X上でもっとも表示範囲が大きい画角
(アスペクト比が3:4の縦長画像1枚)
で作成しました。

タイムラインには3:4の範囲までが写り、タップするとその外側が見れる

載せ切れなかった解説は表示範囲の外側に記載。
この部分も見てもらえるよう、各部に「タップ推奨」と明記しました。


【画像内のレイアウト】
情報量を絞り、伝えたいことがスッと伝わるようにしました。
武器名・鋸形態・リプ欄の3点を最優先し、これ以外の情報は表示範囲外に回しています。


【画像の背景】
他の応募作ではグレーやタンといった淡い背景が多かったため、その中で目立つようにイエローやライトブルーといった高彩色を用いてビビッドに仕上げました。


【ポストの文】

投稿時の文面

武器の概要を、

無限のリプで無礼討ち!
群がるゾンビのごとき剣

という2行のコピーにまとめました。一目でパラグラフが把握でき、一撃で武器の特徴が伝わるような段組みにしています。



おまけ:ボツ案

最後に、ボツ案にも触れておきます。

「インプレゾンビ」をモチーフに定めた際、
ラフよりも先に書いた構想メモはこんな感じでした👇

・インプレゾンブレード
インプレッションを集めることだけに特化した剣。
底辺killtuberでも一発逆転できる……という触れ込みで売られている、禁断のアイテム。

大物killtuberの武器を自動でスキャンし、即座に3Dプリント!
複製された「武器のゾンビ(ゾンブレード)」を、全自動で刀身に生やす。
このゾンビ武器は樹脂製の粗悪品であり、威力は本物に遠く及ばないため、そのぶん圧倒的な物量で補う。

樹脂が切れた場合は、自らの体組織で補うことも可能。贅肉、耳、指、目など、肉体を少しづつ捧げながら戦闘を続行できる。その光景は「生きながらにして死んでいる」と評され、凄惨極まりない見世物として莫大なインプレッションを生む。

使用者自身をもゾンビに変える剣、それがインプレゾンブレードである。

決定案と大きく異なるのが、
・「3Dプリンターによる増殖・模倣」
・「使用者自身をゾンビに変える」

という2つのギミックです。

チェーンソーのフレームがグニグニ曲がって3Dプリンターに変形する構想でした

これらの要素は、以下のように連想しました👇

・ゾンビ といえば「増殖」
・インプレゾンビ といえば「模倣」

→ 何もないところから武器を増殖させたり
 有名配信者の武器を模倣させたりするには?

3Dプリンターで武器を生成すればいい

→ 3Dプリンターの樹脂が切れたらどうする?

→「樹脂を自らの体組織で補う」という奥の手を設定し、「使用者自身がゾンビに変わる」という皮肉なドラマを展開する

これを思いついた時点では、
「要素同士がちゃんと連関してる!」
と手応えを感じていたのですが……


これらは完全に、机上の空論でした。

いざ実際にラフを描き始めると、
・武器デザインとして「3Dプリンター」や「ゾンビ化機能」を納得感のあるビジュアルに落とし込むのは死ぬほど難しい
・「武器生成機能」を設けると、もはや武器として “なんでもあり” になってしまう
という点で苦戦しまくり、結局どちらもボツに。

今になって振り返ると、この迷走の原因は
🔻元ネタと結びついた武器のギミック
に囚われ過ぎた結果、
🔻やりたいことが一目で伝わる見た目
を蔑ろにしてしまったから
だと気付かされます。

モチーフから連想された要素のうち、どれを捨て、どれを残すか。「インプレゾン無礼討」の制作プロセスは、そんな選択の連続でした。


まとめ

公募企画 #KILLTUBE武器屋 で採用された拙作「インプレゾン無礼討(ブレード)」の制作プロセスは、以下のようなものでした。

まずは公式の作例を観察し、
その構造を抽象化して図式化。
図式に独自の変数を代入し、
オリジナルのアイデアを構想。
作例の魅力的な部分を踏襲してラフを練り、
一つの考えに囚われすぎた場合は練り直す。
競合案と環境をリサーチして差別化を図り、
目に留まるプレゼンで見る者の記憶に残す。

私はここ5年ほど全くコンペに縁がなかったので、採用通知が本当に嬉しかったです。出す作品数を1つに絞った上で、その1つの攻撃力を研いで研いで研ぎ澄ませる思いでした。

この記事は、コンペで採用されるまでの思考の道筋をアーカイブし、一定の再現性を持たせるために書きました。どなたか一人でも糧になれば幸いです。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
KILLTUBE公開楽しみです!!!!2026年!!!!

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