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香港に行った話

2019年11月24日。
選挙が終わり、民主派議員が8割を超えた。

香港人の大半が民主派を支持している事実が明らかとなり、デモ隊と警察の衝突も前ほどひどいものでなくなった。

そんな情報をツイッターでひろった。

どうしても会いたい知人が香港にいるため、私は10月の時点で格安航空券を購入していた。

その頃事態はどんどん悪化しているようであった。名門大学の敷地内でデモ隊と警察が激突し、黒い煙を上げているのを見ては、これは12月に行くことは無理かもしれないと思った。

知人に会いに行きたい気持ちと、香港を見ておきたい気持ちはあったが、今まで大規模なデモを直に目の当たりにしたことがなく、ただただビビっていた。

しかしニュースによると、また知人によるとどうやら近頃落ち着いているという。

行くしかない。

ただ、デモはまだまだ開催されているので、スケジュールを確認し彼らを避けて行動しようということになった。
また、全身黒くならぬように気をつかった(これはそこまで気を使わなくてもよかったかもしれない。彼らを象徴するのはぴたっとした黒いマスクをプラスすることだ、きっと。)

出発当日。香港行きフライトの待合所には、香港人らしき人や欧米風な人、日本人もそこそこいた。
私は、この状況で香港に行く日本人はどうしても用事のあるビジネスマンぐらいでないかと思っていたので、大学生ぐらいの女性や男性がいることに驚いた。お前ら、覚悟はできているのか。と問いかけたいぐらいに楽しそうであった。どうやらディズニーランドに行くらしいが、それでも、強いなと思う。
デモに関する情報を得たうえで、自分達のルートは大丈夫だと確認して遊びに行くのだ。彼らは遊ぶために覚悟を決めて仕上げてきている。心強い同志である。

そして無事香港に到着した。

入国審査が厳しくなっているかもしれないと思っていたが、あっという間に終わった。香港は想像以上にいつも通りなのではないか。

空港は入場が制限されていることもあり、デモ隊のような人はいない。

エアポートエクスプレスに乗り、香港島へ移動する。
がらんがらんであった。

香港島につき、知人と合流する。

まだ黒い人はいない。

タクシーでホテルのあたりに向かう。
町はいろんな国のルーツを感じる人々で溢れかえっている。観光客かもしれないし、住人かもしれない。様々な人が行き交うこの空気感はとても居心地がいい。

ホテルに行く前に、食べたかったワンタン麺(イエローヌードルにした。フォーも選べる)で腹ごしらえをする。

香港の人はおしゃべりをしながら食事するのが一般的なのかなとローカルな店内で感じた。

私たちは黙々とヌードルを啜っていたので店員の若い女の子がこちらをじっと見ていた。

ホテルにつく。

ホテルも多くが値下げされているので、いつもなら泊まれないようなところに宿泊することができる。

一休みしてから、徒歩で美術館へ。

ジョッキークラブが運営しているそうで、入場料無料で展示が見れた。

また、展示されている作品にらくがきがされているのを見た。

といってもめちゃくちゃにされてるわけではなく、上の写真のようにさりげなくデモを応援するもので、より作品として強いメッセージ性を帯びているようでもある。

そしてこの美術館で見た映像作品が面白かった。

HO RUI AN
Student Bodies

東アジア、東南アジアの経済発展と学生運動を描いたもの。
日本は作中序盤に登場する。高度経済成長と安保闘争について紹介されるのだが、以降は他のアジアの地域に経済成長のノウハウを伝え発展に貢献した、で終わる。日本はこの時点で過去になってしまったのではないかと、デモにより観光客が減っているとはいえにぎわい、多国籍な者で溢れる香港にいるのも相まって、強く感じた。
また、映像には韓国、シンガポール、タイなども登場するのだが、それらの繋がりがわかりやすく、なめらかに進んでいき、とてもよかった。歴史を学ぶ上で、日本だけで完結することなどありえないのだから、このようにいろんな国をさらりと交えて学ぶことができたら、と思った。今を生きる私たちには、何より大事な近代である。

そんなことを考えつつ、ハリウッドストリートと呼ばれ、欧米人が多く集まる街のイタリアンレストランで夜ご飯を食べ、ホテルへ帰った。

飛行機では日本人をみたが、この日街中に日本人は一人も見なかった。私も来るまではとてもびびっていたので気持ちは分かるが、すこし寂しい。

二日目。
観光名所、ビクトリアピークへ。
ホテルからトラム乗り場まで向かう途中に、行政長官の住まいを通りすぎる。

外壁はとても前のめりに攻撃的であった。
この下を歩くと頭がむずむずする。

トラムのチケット売り場はいつもであれば大行列ができていると聞いていたが、早朝だったこともあり、並ばずに購入できた。

トラムに乗り込む。

おそらくアメリカ人観光客の団体と乗り合わせる。このトラム、急傾斜をえいやと登っていくのだが、立ち上がって撮影するおじさんがいた。

ビクトリアピークからの眺めは、とても都会だった。
香港には細長くまっすぐ伸びているビルや、建築家が設計した複雑でいかついビルがあり、とてもビルである。私は高い建物に囲まれるのが苦手なので香港は楽しめないかもしれないと思っていたが、歩いてみると、意外と圧迫感はない。
それは、同じくらいたくましい緑がたくさんあるからだ。

街の隙間から溢れる緑。

その日は選挙後初の大規模なデモ行進があったため、ローカルなエリアに逃げることになっていた。

道中では、これからデモへ向かうであろう黒い服にマスクをつけた人々とたくさんすれ違った。
大学生ぐらいの群れ、父母と高校生ぐらいの息子二人、とびきりのおしゃれをしている中高生…
本気の人、ファッション感覚の人(彼らも本気だと思うが)など老若男女問わずたくさんの人が参加しているのだと、ツイッター等により知ってはいたが、実際に目があったりしながら彼らを見て、より切実に感じた。多くの香港人が納得のいく未来が待っていますようにと願った。

都心を離れるとデモの香りは全くせず、人々は穏やかに日常を過ごしていた。
都心とローカルの熱量の違い、ここまでくっきりとは。

そうして私は平和に弾丸香港旅を終えた。

帰路。知人が空港まで送ってくれたのだが、建物内にはパスポートと当日有効の航空券を持っていることを証明しなければ中へ入れないため、その審査の行列を横目に我々はお別れすることになった(入場口ではタクシーを捕まえてはいけないことになっているらしく、脱出するのは大変であったらしい。申し訳ない)。

私は職員にパスポートと航空会社からのメールを見せ、無事に空港内へ入ることができた。

日本行きフライトの待合所では、行きの時と違い日本人を見つけられなかった。また同志に会えるかなと思っていたが、帰りの飛行機はたくましい香港の若者がたくさんいた。
香港では、若者が現状を良くしたい気持ちで動いているのを感じ、その若者パワーに安心した。未来を支える存在、尊い。

おっかなびっくり決行した香港旅であったが、デモ隊と警察の衝突を見ることなく、しかし街中で香港人の強い意思を感じながら、アジアを考える旅となった。情報を集めつつ行動することは欠かせないが、実際に自分の目でみて、近づくことでしか得られない感情はやっぱりあるなあと思った。

とても良い体験をありがとう香港。
また行くよ香港。

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