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主要国内機関投資家の議決権行使基準改訂動向①

皆さまこんにちは
アクロポリスアドバイザーズです。

3月も終わりに近づいており、もうすぐ6月の株主総会シーズンに入りますね。
そこで今回からは、主要国内機関投資家の議決権行使基準の改訂動向についてNoteにまとめていきたいと思います。

今回は野村アセットマネジメント(以後野村AMと表記)の改定動向について、議決権行使に関する方針などを踏まえてまとめていきたいと思います。


■野村AMによる議決権行使について

〇野村AMの議決権行使に関する方針

野村AMは体系的な議決権行使体制を構築しており、継続的な取り組みを可能としています。
運用における責任投資の基本方針及び日本企業に対する議決権行使基準は運用調査部門の責任投資に関する最高意思決定機関である責任投資委員会で決定しています。

(出典)https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy20231101.pdf

エンゲージメントについても積極的に行っており、エンゲージメントを通じて得られた投資先企業に関する情報を議決権行使基準の策定や、個別議案に対する判断にも活用しています。
またエスカレーションが必要と判断する場合は取締役選任議案に反映します。

(出典)https://www.nomura-am.co.jp/special/esg/pdf/vote_policy20231101.pdf


〇野村AMによる主な議決権行使基準改訂動向

①取締役会内のガバナンス強化

取締役会内の社外取締役の人数の最低水準を厳格化します。
従来:支配株主がいない場合は2名又は3分の1の多い方、支配株主がいる場合は過半数
今回:支配株主がいない場合は3分の1、支配株主がいる場合は過半数
24年11月以降:原則過半数(但し支配株主がいない会社において指名に関するガバナンスを整備している場合は 3分の1で良い)。

②役員報酬及び役員退職慰労金に係る議案

報酬ガバナンスが整備されていない場合(※)には一部の役員報酬及び役員退職慰労金に係る議案に反対しておりましたが、これを全ての役員報酬及び役員退職慰労金に係る議案に適用することとなりました。
役員退職慰労金に関しては社外取締役が過半数に満たない場合も反対という基準も新たに明記されました。

※報酬ガバナンスが整備されている場合とは「法定又は任意の指名委員会を設置し、 その委員に 2 名以上の社外取締役を含み、かつ委員のうち社内取締役の人数が社外取締役 の人数より少ない場合」のこと。この状態を満たしていない場合、整備されていないとされる。

③監査役会設置会社の取締役の任期

監査会設置会社において取締役の任期が2年の場合、会長・社長等の取締役再任に反対」という基準を新たに新設しました。

④取締役の人数に関する基準の新設

取締役会における議論の実効性を確保するために以下の基準を新設しました。
・モニタリング・ボードの要件︓取締役の人数が5名以上、20名未満
・取締役の選任︓取締役の人数が5 名未満又は20名以上の場合、会長・社長等の取締役再任に反対
・定款変更︓取締役の員数の上限を20名以上とする場合に反対

⑤TOPIX100構成企業に対し、ESG課題に対する取組を求める基準を新設

TOPIX100を構成する企業には日本企業のロールモデルとなることを期待し、以下の取組を求めるとのことです。
ESG課題を統合した情報開示
・気候変動
・実効的なスキルを有する社外取締役

2024 年 11 月以降、特に上記の取り組みが明らかに不十分と判断した場合、会長・社長等の取締役再任に反対するとのことです。

⑥エンゲージメントの状況を議決権行使に反映する基準について、反対する対象を会長・社長等とするとともに「エスカレーション」であることを明記


⑦監査役等へのエンゲージメント強化

株主価値を大きく毀損する行為を受け、再発防止策の実効性を確保するためには監査やリスク管理に関してエンゲージメントを行うことが有効と判断し、監査役へのエンゲージメントを強化するとのことです。

一方で従来上記のようなケースが起きた際に、監査役を減らした場合、会長・社長等の選任を反対する旨の基準がありましたが、こちらは削除するとのことです。

⑧株式の有利発行(株式報酬に該当する議案を除く)に関する判断基準を明記

株式の有利発行については、株式価値を向上させる効果が明確に示されている場合を除き、原則反対とのことです。
ただし、当該株式からの配当をESG課題の解決に資する活動の原資とすることを目的とする 第三者割当について、以下を全て満たす場合には原則として賛成するとのことです。

①議決権の希薄化率が 1%未満であること
②当該株式について議決権を行使しないこと
③買収防衛策を導入していないこと
④政策保有株式が「純資産の50%超(金融機関)又は投下資本の20%超(金 融機関以外)」に該当しないこと

■おわりに

本日は野村AMの議決権行使基準の改訂動向についてまとめました。

株主総会における機関投資家の行使判断は非常に重要です。
改訂動向を把握することで、機関投資家の考えの変化を知る事が出来ます。
それが機関投資家と相対する際、役に立つと思います。

本Noteが皆さまの企業価値向上の一助に繋がれば幸いです。

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