TOB(株式公開買付)について-友好的TOBと同意なきTOB-
皆さま、こんにちは。
アクロポリス・アドバイザーズです。
今回は、本夏多発しており注目なさっている方も多いであろう、TOB(株式公開買付)について、理解を深めておきたい方に向けたNoteです。
初めてTOBという言葉を聞いた方も、TOBがどのような場面で使われるかを知りたい方にもおすすめです。
■TOBとは
TOB(Takeover Bid、株主公開買付)とは、ある企業や個人が上場会社等(有価証券報告書を提出しなければならない会社)の発行する株券等を大量に買い付け、その企業の経営権を取得する手続きを指します。
TOBは市場内の通常の取引とは異なります。
対象銘柄を保有している株主は、TOBの公告があり売却を希望する場合、通常の取引市場ではなく、公告に記載されている証券会社などに申し込み、取引所外で株式を売却します。
なぜTOBが市場外で取引されているのかと言うと、
市場内で大量に株式の買い付けが行われた場合、株価が高騰し、予定していた買付価格での取得が難しくなってしまう可能性があるためです。
また、一定以上、一定以下の株式を取得する必要がある場合、市場内での取引では買付予定数の下限や上限を設定することができません。
■友好的TOB・同意なきTOB(旧名称:敵対的TOB)とは
友好的TOB
友好的TOBとは、買収対象会社の取締役会の同意を得て行うTOBのことです。
近年アクティビストファンドが日本の企業の上場子会社を問題視したり、
実際にさまざまな企業で事業や子会社の再編・整理が行われていますが、
ここで用いられることもある手法が、ファンドの買収による上場廃止の際のTOBです。
例えば、日立製作所が売却した上場子会社、日立物流(現ロジスティード)は、度重なる協議をファンド側と行い、最終的には米投資ファンドのKKRによるTOBが成立し、一連の手続きを経て日立物流株は上場廃止となりました。
ここで用いられたのが、友好的TOBです。会社の戦略上、日立物流をファンドに売却することを決定したのは日立サイドで、もちろんこのTOBは取締役会の同意があります。
実際にこの案件に関する資料には、「HTSK 株式会社による当社株式に対する公開買付けに係る賛同の意見表明及び応募推奨に関するお知らせ」という言葉が含まれています。
【参考資料】
[ロジスティード]公開買付けに関するお知らせ
同意なきTOB(旧名称:敵対的TOB)
同意なきTOBとは、買収対象会社の取締役会の同意を得ないで行うTOBのことです。
旧名称で言う、「敵対的」という言葉の定義は少々曖昧で、
例えば、買収提案を受けた当初は、取締役会は反対していたものの、提案に係る買収条件が変更されるなどして、途中で取締役会がその買収提案を受け入れることとなった場合には、定義上は「敵対的買収」とは呼べないことになります。
つまり、最終的に取締役会の意見が表明されるまでは、ニュース記事などでも「同意なきTOB(敵対的TOB)となる可能性がある」などの文言で示されていることが多いです。
同意なきTOBで、大きく注目されたものの一つに、
不動産やホテルなどを手掛けるユニゾHDをめぐる一連のTOB騒動があります。
最初にHISが敵対的TOBを行なってから、ユニゾHDの従業員によるEBOが成立するまで、フォートレスとブラックストーンを含む4者がTOB合戦を繰り広げました。
【参考資料】
太田洋『敵対的買収とアクティビスト』
■最近のTOB
2023年8月:伊藤忠商事による伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)に対するTOB
友好的TOB
伊藤忠はCTC株を61.24%保有しており、CTCは伊藤忠の子会社でしたが、TOBを通じて非公開化を目指します。
伊藤忠グループの経営資源を迅速に活用し、CTCの持続的な成長を目的としています。
このTOBに対して、CTCは賛同意見を表明しているため、これは友好的TOBです。
【参考資料】
[CTC]公開買付けに関するお知らせ
2023年8月:フリークアウトHDによるUUUMに対するTOB
友好的TOB
広告・マーケティング事業などを手掛けるフリークアウトHDが、You Tuberのマネジメント会社、UUUMにTOBを実施し、連結子会社化(買付け予定の上限割合:65.00%)を目指します。
あわせて、UUUMとの資本業務提携も締結しました。
連結子会社化により、グループの企業価値向上のための施策を迅速かつ機動的に遂行することが可能になることから、フリークアウト及びUUUMの間で人材やノウハウ等の経営資源の相互補完・有効利用をより緊密に行うことができ、資本業務提携のシナジーを最大化することが目的です。
このTOBに対して、UUUMは賛同意見を表明しているため、これは友好的TOBです。
【参考資料】
[UUUM]公開買付けに関するお知らせ
2023年9月:ニデックによるTAKISAWAに対するTOB
同意なきTOBの可能性
ニデック(旧日本電産)工作機械メーカーのTAKISAWA(旧滝沢鉄工所)に買収提案をしました。
買付け予定数の下限は過半数であることから、連結子会社化を目指します。
ニデックが2021年に参入した工作機械の品ぞろえを広げることを目的としています。
現時点でTAKISAWAの取締役会は賛同していませんが、同意が得られなくてもTOBを開始するとのことなので、同意なきTOBとなる可能性があります。
TAKISAWA側は、当TOBに対する意見表明を、公開買付公告日である2023年9月14日の前日の9月13日に公表する予定です。
【参考資料】
[ニデック]公開買付けの開始予定に関するお知らせ(参考説明)
■おわりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
現在進行中のTOBは、JPX(日本取引所グループ)の「監理・整理銘柄一覧」などから、
その他TOBに関する資料は企業のHPやEDINETなどから見ることができるので、ぜひ興味ある方はご覧いただければと思います。
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