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第28回スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議について

皆様
こんにちは。

前回の第27回の会議から約1年がたち、2023年4月19日に第28回スチュワードシップ・コード(以降SWCと表記)及びコーポレートガバナンス・コード(以降CGCと表区)のフォローアップ会議が開催されました。
今回はこちらについてまとめていきたいと思います。

■前回の第27回のSWC会議の概要

●概要

・2022年6月11日のCGCの再改訂公表後の中間点検の位置づけ。
・持続的な成長に向けた課題および企業と投資家の対話に係る課題について述べています。

●開催背景/主な意見

<開催背景>

CGCの再改訂を受け、各企業のガバナンス改革の取り組みは進展。
具体的にはプライム市場上場企業の約8割が3分の1以上の独立社外取締役を選任、指名委員会を設置し、報酬委員会を設置済み(2018年時点では各々3割程度の対応状況)にまで進展しました。

このCGCの進展を受け、実証分析を実施したところ、指名・報酬委員会の設置等はROAを向上させるという示唆が得られる一方で、社外取締役については企業価値との間に有意な関係が見られない、と結論付ける研究結果となりました。

実際CGC対応を進める企業側からは、投資家からの要請を受けたCGCへの対応が形式的になっている恐れがあり、コード改訂やガバナンス改革が企業価値や『稼ぐ力』の向上に寄与しているのか検証が必要との意見もあります。

他方、機関投資家側は企業との充実した対話の実現に向けて、一層の改革が必要とのスタンス(特に積み上がり続ける現預金を、いかに持続的な成長に振り分けるかの対話が企業・投資家間で必要)で、企業側及び投資家側でCGC対応に対する認識に、まだまだ乖離があるのが実情です。

<主な意見>

・CGCは『コンプライ or エクスプレイン』のいずれかの対応を求めており、企業側はCGCを踏まえて自社の立場を表明する必要があると思う。

・浸透度を測る為にコードのコンプライ率をKPIに取って開示する事も大事ですが、開示結果を受けて企業側がプレッシャーを感じ、形式的な対応に終始する事態に陥っているのではと思う。

・CGCが細かくなりすぎているというフィードバックもありますが、CGCは原則主義の前提であるため、更なる細則化は避けた方が良い。
また、今後の改訂のタイミングも現在のサイクルと同様に3年に一度、定期点検するのが良いと思う。

・(独立社外取締役が過半数を占める企業はプライム市場上場企業の1割弱である事から)取締役会における独立社外取締役の割合は、引き続き増やしていくべき。またガバナンス改革が壁にぶつかっているのであれば、その大きな理由の一つは『担い手』の質の問題で、独立社外取締役と執行側の人材が各々レベルアップが必要ではないか。

・取締役会評価の中で社外取締役および取締役”個人”の評価を実施する様なプロセスを作ると良いのではないか(またはベストプラクティスとして、モデル社外取締役適格性基準を作成)。

資本配分決定の合理的根拠に関する開示、中核でない資産を保有する為の合理的な根拠に関する開示の改善(政策保有株含む)、資本コストに関する開示の向上が継続して必要だと思う
ただ、ウクライナ・ロシア戦争やコロナなど刻々と外部環境が変わっていく中、余剰資金の扱い方は社長・CEOが考えて取締役会の中で議論を行い、ある程度考えが纏まったら、投資家/市場に企業の置かれている状況に応じた余剰資金の使い方を説明していく事が大切。

【関連資料】
第27回スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議/事務局資料

■第28回のSWC会議の概要

●概要

・CG改革の実質化に向けた課題についての議論
・今後のコード改訂の在り方、改訂時期
・上記を踏まえたアクションプログラムの設定について

●開催背景/主な意見

<開催背景>

前回会議、ジャパンコーポレートガバナンスフォーラム及び機関投資家の実態調査から以下の3点が課題として公表されました。

①資本コストを踏まえた収益性/成長性を意識した経営の促進及び人的資本投資等サステイナビリティへの取組の促進
②委員会の実効性向上および独立社外取締役の質向上
③企業と投資家の対話に関する課題
 

前回会議で『CGCの細則化が改革の形骸化を招くおそれがある』との指摘がありましたが、どの様な考え方に基づいて取り組むべきか、そして改定時期のタイミングおよび適切な時期についても、再度議論が必要との認識がありり、上記課題に対するアクション・プログラムを設定し、フォローアップ会議で随時検証することについてのフィードバックを得るために開催されました。

<主な意見>

・資本コストの正確な理解に基づいて収益性を改善する事が大切です。
PBRを意識するあまり、自社株買い等に偏重した資本政策がとられるのは避けられるべきだと思う
経営陣・従業員に対する株式報酬活用に対するニーズが高まっていることから、必要な制度上の措置を講じるべきと思う。

・PBR1倍割れ、ROEが先進国の中で低位推移しているのは、上場することが目的化しているきらいがある。
市場環境整備として上場促進をすると共に退場の仕組みをより厳しく考える必要があるのではないか。

・IRなど企業と投資家との対話において表面的な財務上の話を超えて、事業収益向上の為に戦略的に何をやるのか(事業モデルをどうするのか、事業や機能ポートフォリオをどうするのか等)議論が出来る様にならなければならないと思う。
加えて人的資本やサステイナビリティ、多様性についても同様に議論できる土壌が必要と思う。

・CGCに基づき形式的に社外取締役の数を増やした結果、『とりあえずボードメンバーをやっている』系の人が残念ながら増えている。
社外取締役のサクセッションプランについても、手が付けられていない企業が多くあります。社外取締役”個々人”の評価を取締役会で行い、選任・再任に反映させるプロセスが必要。
また、社外取締役候補を選定するプロセスに業務執行者が関わっている事も望ましくないのではないと思う。

・基本的に細則化はこれ以上やらない方が良い。
企業側は形式的な対応に追われ、本当の意味でのガバナンスがおろそかになっているのではないかという懸念がある。
各企業の自律・自主性を重視した柔軟な制度設計にすべき。企業の経営戦略や考え方を丁寧にエクスプレインすることで、企業と投資家の建設的な対話が促進される。

上記のように様々な意見が交わされましたが、
アクション・プログラムについては参加メンバー全員賛同とのことでした。

●次回に向けて

本会議の意見に基づき、アクションプログラムを確定し、後日公表とのことです。

【関連資料】
第28回スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議/事務局資料

■(補足)CGを巡る東証の最近の取組み

参考までに本会議の参考資料内に、「コーポレート・ガバナンスを巡る東証の最近の取り組み」の掲載がされていたので、ポイントを抜粋いたします。

●ポイント

・資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の要請

JPX "コーポレート・ガバナンスを巡る東証の最近の取り組み" P5より抜粋


・株主との対話の推進と開示

JPX "コーポレート・ガバナンスを巡る東証の最近の取り組み" P8より抜粋


・建設的な対話に資する『エクスプレイン』のポイント、事例の共有

JPX "コーポレート・ガバナンスを巡る東証の最近の取り組み" P11より抜粋


・支配株主を有する上場会社における少数株主を適切に保護する為に、ガバナンスの在り方について、東証主催の研究会で議論を再開

【関連資料】
コーポレート・ガバナンスを巡る東証の最近の取り組み

本日は第28回SWC及びCGCのフォローアップ会議についてまとめました。
東証もそうですが、金融庁も本格的に日本の上場企業を変えようと動きが見えてきましたね。

この動きは海外機関投資家にも評価されているようで、ここ最近は、海外機関投資家による日本株投資が活発化しております。

「魅力ある日本企業が真に評価される」、その土壌が築かれつつある状況は弊社としても非常に嬉しく思います。



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