見出し画像

笹の葉ラプソディ再認識 長門と星

お久しぶりです。

七夕ですね。例年通り笹の葉ラプソディを読み返しています。梅雨時ですが天の川が見られたらいいなぁと思います。

さて、今回は笹の葉ラプソディの考察です。タイトル通りテーマは長門と星について。前回の記事でも触れた内容ですが、今回も笹の葉を軸に少しだけ触れてみようかなと思います。

笹の葉のストーリーはそれ単体では完結せずに、涼宮ハルヒの消失を読むことで全ての伏線回収、全貌がわかるという構成で、それ自体が消失への導入になっています。しかし笹の葉と消失内では、回収されていない謎が一つあります。それが

朝比奈さん(大)はどうしてTPDDを掠め取ったのか。

です。

実は笹の葉、消失を通して笹の葉時点で長門宅に訪れることが決定的な伏線にはなっていないんです。確かに消失時の三年前に、笹の葉について言及することで長門宅を訪れてはいますが、その時も事情を説明すれば長門は家に入れてくれそうな気がします。

ではなぜ笹の葉時の三年前に、わざわざ長門の力で三年後へと帰還する必要があったのか。もっと言うならどうして長門と出会っておく必要があったのか。

その答えが既定事項という概念です。

ここの話は前回の考察で少しだけ触れましたね。長門の存在はハルヒとキョンが三年前に出会っていなければ確定しないという説です。前回は憤慨を考察するという内容だったので詳しくは省きましたが、今回はここを掘り下げていきましょう。

まず考えるべきは笹の葉の三年前への時間旅行は、未来人と情報統合思念体の関わる案件であることです。未来人は当然ですが、宇宙人サイドも長門が短冊を渡しているところからわかりますね。つまり三年前に行き、そこで朝比奈さんがTPDDをなくすという事象は未来人(朝比奈さん)のみに適応された既定事項ではなく、宇宙人(長門)にとっての既定事項でもあったということです。

長門にとってどうして三年前にキョン(と朝比奈さん)を自宅へと招き入れることが必要だったのでしょうか。

それの解答となるのが長門が三年前のキョンとの出会いによって誕生したのではないかという説ですね。

私はこの説を有力にするために、前回同様長門の小説、無題から引用を行います。

「空から白いものが落ちてきた。たくさんの、小さな、不安定な水の結晶。(中略)これを私の名前としよう。」(憤慨P79)

この白いものは普通に考えれば、「雪」です。しかし長門の名前は「有希」であって雪ではありません。それではこの空から落ちてくる白いものとはなにを指すのかを考えてみましょう。

突然ですが七夕といえば何をイメージするでしょうか。笹の葉、短冊、ソーメン。

やはり星、天の川ではないでしょうか。

今回の考察はずばり、無題のアレは星のことを指していたのではないかというものです。

順を追って説明しましょう。まず空から落ちる、白い小さな水の結晶は彗星のことです。彗星は小さな水を核としてできていることが知られています。それが大気圏突入の熱で燃え尽きることで白く輝くんですね。つまり無題の記述を彗星ととらえることが可能なわけです。

この説の良い点は、彗星というシンボルが、宇宙の情報生命体に造られハルヒ観察のために地球に送り込まれた長門と一致する点です。

しかし「これを私の名前としよう。」という部分に未だ謎が残ります。

そこで長門の「有希」という漢字に着目して考えます。

「希」この言葉は非常にまれという意味を持つ字です。これだけで彗星は非常にまれな現象!Q.E.D!としてしまいたくなりますがもう少し深く考えます。実は希という字はギリシャのことも指します。ギリシャの漢字表記、希臘の一文字を取っているものです。ギリシャといえばかの有名なギリシャ神話があります。ギリシャ神話、星。この共通点は星座です。星座はギリシャ神話を基に星々をつないだものです。七夕も、星に織姫と彦星の物語を作り願い事をするものですよね。私は、笹の葉で長門に星というモチーフを匂わせたかったのではないかなと考えています。宇宙人である長門には星に近しい印象を与える表現が、用いられるのではないかとも考えられます。それでも名前に関しては強引すぎますね。この辺で終わります。

しかしこの説を適応させると、なぜハルヒシリーズにとって超重要エピソードである笹の葉ラプソディが七夕を舞台にしたのかがなんとなくわかる気がします。

空に満点の星が輝く七夕。その日のことを語ったものが先ほど無題から引用した部分であるとするならば、長門という存在そのものが星であったということです。七夕の星といえば織姫と彦星。一度会ったら、その後長い間会うことのできない存在たち。つまり織姫は、三年前の長門とハルヒのことです。ハルヒと長門は、三年前にキョンという彦星に会う必要があった。しかしそれは時間という大きな隔たりがあるため不可能です。そこに登場するのが朝比奈さんというわけです。これを七夕内の表現に当てはめるなら、時間の流れが天の川、カササギ役が朝比奈さんですね。つまり笹の葉は無意味に七夕を話の舞台に持ってきているわけではなく、七夕の話を踏襲して人物の関係性を暗喩しているわけです。

三年前、キョンが708号室のインターホンを押し、「長門有希」の名前を口にした瞬間。それこそが長門が、地上に生まれた瞬間であると考えることができます。そして消失世界からの帰還には長門の存在が必要不可欠です。消失でキョンが長門の力を借りるには、笹の葉でこの既定事項を辿り、長門という存在を確定的なものにしなければなりません。そのため朝比奈さん(大)はTPDDを掠め取り、長門は短冊をキョンへと託す必要があったのです。


私は、ここにいる。それは三年後の織姫から、彦星へ宛てたメッセージだったのです。


すみません、本当はもう少し読み込んで丁寧にまとめたかったのですが、今回はメモ書きを簡単にまとめるという形になってしまいました。前回以上に強引ですがいつかもっとちゃんとした形でまとめたいと思います。それではまたっ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?