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すべての人に美味しく飲んで頂ける酒造りをー安積蒸溜所探訪記ー

皆様ごきげんよう!有限会社エィコーンのカエです。これまでブログを書いてきたスガと同一人物です。今年から下の名前でやらせてもらいます😋改めましてよろしくお願い致します!

さて、今回は福島県郡山市にある、安積(あさか)蒸溜所にお邪魔してきました。Twitter界隈では #あずみじゃないよあさかだよ で有名(?)。実は私、同蒸溜所の原酒はあまり経験が無く、HPで得られた程度の知識で見学に臨んだのですが、ウイスキー造り同様、ご説明も懇切丁寧していただき、郡山の寒さは凍みれど、心温まるおもてなしをいただきました。(今まで巡った他の蒸溜所も同様ですが!😊)

新幹線の郡山駅からタクシーで15分程度!アクセス抜群
到着すると、広々としたロータリーに、「笹の川酒造」「安積蒸溜所」の大きな看板。
背後の蔵がこの酒蔵の持つ長い歴史を物語っています。

着くや否や、事務所の入っている建物の応接室に案内された我ら。今回は、シャチョー、セイシューさん、私の三名でお邪魔しました。そこでまず、会社概要と、見学の流れについてご説明頂きました。

酒造り、販売を始めたのは1765年。そして、米不足と、駐日米軍からの需要もあり、ウイスキーの製造免許を取得したのが、戦後間もない1946年。ポットスチルは無かったものの、焼酎用の設備で蒸溜を始めたそうです。

1983年には「チェリーウイスキー」の人気が絶頂に達します。「チェリーウイスキー」とは、安積の自社蒸溜モルト、国産他社モルト、輸入グレーンを使用したブレンデッドウイスキー。ウイスキー低迷期には、海外からバルクウイスキーを輸入する必要が無かった程、国産モルトが豊富に売買できる状況だったようで、「東北モルトウイスキー」(某宮城峡とのブレンデッド!!)なんかも販売されていたようです。今となっては考えられませんが、歴史は繰り返す…ことを考えると、将来的には同じような商品に出会える可能性もあるかも?!その時が楽しみでなりませんね。ウイスキーはまさにロマンの詰まった飲み物。

しかし、冬の時代到来。1986年にはウイスキーの蒸溜を休止します。その後は、貯蔵・熟成していたウイスキー原酒を少しずつ供給しながら、淡麗辛口の日本酒ブーム、続いて乙類焼酎のブーム到来。清酒、焼酎も製造していた笹の川酒造は、時代の波に乗るようにして、成長を遂げていきます。

そして創業250年周年記念事業の一環として、2015年、ポットスチルの再導入を決定。つまりはウイスキー蒸溜の再開です。これにはかの有名なベンチャーウイスキー・秩父蒸溜所の肥土社長からのアドバイスもありました。

肥土氏との出会いは遡ること2004年。明利酒類・加藤社長と、肥土氏のお父様が旧知の仲だったそうで、加藤社長から肥土伊知郎氏を紹介されたとのこと。肥土氏は当時、旧東亜酒造の余剰在庫で頭を抱えていました。笹の川酒造は、酒の文化の成熟に想いを馳せたとき、貴重なウイスキーが廃棄されるのはとても耐えがたいことだと考え、在庫の引取を承諾し、将来の在庫の販売方法についても意見交換を行ったのでした。

安積蒸溜所の蒸溜器の容量は、初溜釜が2000L、再溜釜は1000Lで1回の仕込みで出来るニューポットは200L。初溜釜の大きさは秩父蒸溜所第一蒸溜所のものと同じサイズです。これは、肥土氏が技術指導するにあたり、自社のものより大きなものについては責任をもって伝えられない、と述べられたことが背景にありました。その後も肥土氏は秩父から郡山まで何度も足を運び、ウイスキー造りのいろはについて指導されたそうです。

同じ酒造業者として、時に切磋琢磨し、窮地に陥った時には助け合う。お酒は結局のところ人が造るものであり、人の縁が造るものでもある、ということを再認識させられる美談ですね。

安積蒸溜所、製造棟の門。
門の前で記念撮影!

さてさて、前置きが長くなりましたが、ここからは製造工程をご案内します!製造棟に入って真っ先に目に飛び込んできたのが、こちらの麦芽。

メインはクリスプ社(英国産)の麦芽を使用。
その他オーストラリア産、国産麦芽も一部使用。

生産の8割はノンピート麦芽。今期よりピーテッド麦芽の割合を増やす予定だそう。更にピーテッド麦芽はクリスプ社に50PPMを指定し納品してもらっているとのこと。

製造棟の中にも樽がずらり
かつてはグレープジュースも作っていたそうで…
こんな風に、至る所で笹の川酒造の歴史を垣間見ることができました。

そして、麦芽のすぐ奥にはミル(粉砕機)!
ディストーナー(麦芽以外の混入物(石や小枝など)を取り除く機械)は備えが無く、粉砕機の刃こぼれや故障を防止するため、粉砕前にはそうした混入物を丁寧に手で取り除きます。中には貝殻などの珍客も。

一度の粉砕(400kg)にかける時間はおよそ3時間。
午前中を粉砕に費やすイメージだそうです。

麦芽の粉砕具合は、ハスク2:グリッツ7:フラワー1の割合。毎朝粉砕作業前に計量し、調整。

粉砕された麦芽は、配管を通って奥の部屋のマッシュタン(糖化槽)へと送られます。

粉砕された麦芽が通る配管
左側の白い円柱形の物体がマッシュタン!
そして製造工程を丁寧にご説明くださる黒羽さん🥰
配管は全て地元の業者による特注品!

近隣の業者に配管を制作してもらったことで、不具合が生じた時に、気軽にメンテナンスに来てもらえる、または自分たちで近所のホームセンターでパーツを買い直し、修理できる、といったメリットがあるそうです!
ちなみに、マッシュタン、ポットスチルとも、三宅製作所製。

見学させて頂いたときは、ちょうどドラフ(麦芽の搾りかす)が排出されるところでした。
初めて見ました。ラッキー🥰
ちなみにこちらのドラフは近所の酪農農家で利用されているそうです。
お乳の出が良くなるんだとか~
麦汁。

安積蒸溜所では、麦汁の清澄度を厳しくチェックしています。清澄度が高い方が、よりエステリーで華やかな香りを期待できるそうです。麦汁にはメロンのような甘味があり、美味しくて飲み干してしまいました🥰ちなみにこのロゴ入りテイスティンググラス、普段はショップで購入できるようですが、今回はたまたま品切れで買えませんでした…😇

櫂入れ!日本酒造りでよく見られる光景。
ウイスキー造りにおいては珍しいのではないでしょうか?
酵母と麦汁を撹拌する作業です。

さあ、いよいよ蒸溜!

可愛らしく鎮座する蒸留器たち。
中央にはおなじみスピリッツセーフ

前述の通り、マッシュタンとポットスチルは三宅製作所製。なんと三宅製作所製の蒸溜器は、大手蒸溜所で一部導入されていましたが、小規模蒸溜所への導入は初めてだったとのこと!蒸留器の中の泡の位置が見えづらい、など、「愛おしい」使いにくさがあるそうです😂

この小窓から泡の位置を確認します。

初溜中は内部の醪が熱せられ泡が発生します。泡がネックの先のアーム部分を越えてしまうと蒸溜液に入り込んでしまうので、それを防ぐために蒸気量を調節しながら蒸溜するそうです。そのため、上の画像の小窓にライトを照らして、こまめに内部の確認を行うとのこと。現在では、ネックの反対側にも小窓が付いていて、そこから光が差し込み、ライトを当てなくても内部の状態が確認できるようになっている製品もあるそうですが、この使いにくさがあるからこそ、スタッフ一人一人が常に状態を気にかけ、「愛おしく」感じる、というメリットも!手間暇かけられ愛情を注がれて造られたウイスキー。そう思うと飲み手としてもテイスティングが一層楽しみになりますよね🤤

初溜液は約23%、再溜液はニューポットの仕上がりが約71%になるように製造。

さて、ようやく熟成庫のご紹介です。

樽 第一貯蔵庫
ガガ…ガガガガ……(という音はしませんでした)

第一貯蔵庫に入る前に、何やら背後に気配が…と思って振り返ると

巨大タンク!!!

かつて清酒造りに利用されていたタンク。年季入ってます。
隣の緑色の建物も原料用アルコール造りに使用していた連続式蒸溜器があるそうですが、現在は強度の関係で立ち入ることはできないとか。
ということで、貯蔵庫の中に入りまーす!

ラック式で約1000丁保管

熟成庫といえば、ダンネージ式(床に木の柱を寝かせて並べ、その間に樽を転がすようにして保管する方式)も有名ですが、安積蒸溜所はこのラック式のお陰で、近くの川が氾濫した際、樽は浸水から免れたそうです。よかったよかった。

イチローズモルトの樽!!

上の画像は、もちろん本物。第一貯蔵庫の中央奥、目立つ場所に大切に保管してありました。
東亜酒造のウイスキーを引き受けた樽は、第一貯蔵庫で保管していたそうですが、2007年にベンチャーウイスキーが改めて引き取りに来た際、記念にこの一樽を置いていかれたそうです。今では中身はほぼ安積のウイスキーですが、記念写真ならぬ記念樽っていうのも風情が漂いますよね~🥰

もともとは4段だったラック式を、3段に変更。
画像から、段の位置を変えたことが判るかと思います。

庫内の位置次第で熟成速度に大きな差があるため、定期的に状態を確認しては、配置のローテーションを行っているそうです。
特に、奥になればなるほど色が付きにくく、上層や入り口付近は熟成が早いのだとか。

この第一貯蔵庫は密閉性は低く、隙間風が吹くそうです。安積蒸溜所は盆地にあり、寒暖差が激しく、夏は庫内上段は40-50℃程度にまで気温が上がるそう。エンジェルズシェアは4-5%。そりゃ高くもなりますよね。一方冬は、磐梯颪が吹き付け、私たちが訪問した一月の半ばも外気温が7℃程度で、関東人としてはかなり寒く感じましたが、それでも「今日は暖かくて良い日です」と、案内してくださった一人の鈴木さんがおっしゃっていました。それだけ冬は寒いということなのでしょう…。ちなみに、寒暖差が激しいと、樽の膨張と収縮が起こり、樽材の中、奥にある成分まで、原酒に染み出しやすくなるそうです。

樽 第二貯蔵庫

こちらは断熱性の高い、新しい貯蔵庫!第一貯蔵庫とはまた違った熟成が進むという訳です。

2023年1月に発売したばかりの、「&4」のマリッジタンク

「&4」のマリッジタンクはアメリカンオーク製。名前の由来は、安積蒸溜酒原酒に加え(といってもかなりの割合が入っているとのこと)、日本以外の四大産地のウイスキー(スコッチ、アイリッシュ、アメリカン(もしくはバーボン)、カナディアンがブレンドされていること。うなぎのたれ方式でウイスキーが追加され、毎月3000本の出荷を目指しているそうです。

最大600丁入るところ、現在は450丁まで入っているとのこと
ウッドフォード・リザーブのカスクも!

利用されている樽は、バーボン樽7割、ミズナラ樽1割、その他(ワイン各種、アメリカンオーク新樽、シェリー各種)が2割を占めるとか。

次に、ボトリング・ラベリングの工程まで見せていただいちゃいました!

ボトリングの作業場
注入器
異物混入が無いか✓

ラベリングの機械については写真を撮り忘れました💦ごめんなさい💦💦

そして最後に、待ってました!テイスティング!!

これはアパレルセレクトショップBEAMSとコラボしたシングルカスク🥰

この他にも複数テイスティングさせて頂きました。笹の川酒造は、「万人受けする調和のとれた酒を造りたい」というポリシーをもとに造りを行っているそうですが、それがよく伝わってくる、バランスが良くて飲み飽きしないウイスキーばかりでした🤤さいくぅ!

テイスティングしながら、いろいろとお話も伺えました。

Q. 安積蒸溜所の強みや個性とは?
A. 設備が小規模であり限られた空間の中にあるため、セクションごとの壁が無い。三人のスタッフで製造しており、意識や情報共有がされやすく、一人一人が責任を持ち、同じビジョンで作業にあたることができます。生産ロットが少量であるため、小回りが利きやすく、新たなアプローチを試しやすいです。現段階では伝統的な造りで安積らしさを確立しつつありますが、今後新たな製造方法も試していく予定です。

Q. YAMAZAKURAはフランスを中心とした欧州で人気を博していると聞いておりますが、今後の海外展開について、ご計画等あればお聞かせください。
A. 現在各国への輸出をしておりますが、中でも欧州、オーストラリア、アメリカの割合が年々増加しています。今後も引き続き現在の取引先様を最優先にしながら、少しずつ東南アジア等への輸出も検討しております。

なるほど~。今後の益々のご活躍が楽しみです!
一飲み手としても、今後のリリースが待ち遠しくてなりません!!

ご丁寧にご案内くださった鈴木さん、黒羽さんには深く御礼申し上げます。ありがとうございました!


さて、長いブログとなりましたが、お楽しみいただけましたでしょうか?
安積ウイスキーを見かけられましたら、是非試してみてくださいね✨

YAMAZAKURAと安積蒸溜所&4


それではまた次のブログでお会いいたしましょう◎

今夜もスランジバー🥃