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息子とドーナツを作る休日

 息子から「ドーナツが食べたい」という突然のリクエストで休日にドーナツを作った。

 突然のことだったけれど、奇跡的に吊り戸棚の奥にホットケーキミックスが眠っていたので、これは消費できるチャンスと息子とは違う意味で前向きになった私は「じゃあ、ママと作ろう!」と息子以上のテンションで返した。

 ドーナツとは言っても、ホットケーキミックスを少し多めの油で揚げ焼きにし、上白糖をまぶしただけのものだ。粉や牛乳を混ぜるだけの作業だけれど息子は得意げだ。

 息子は私と違って片付けまでが料理だと知っている。私がドーナツを揚げている最中、小さな椅子の上に立ち、ボウルやスプーンを一生懸命洗っている。それは段々と泡と水を使った実験と化していき、シンク周りはびしょびしょになる。それでも片付けが大嫌いな私からすれば見習いたいところだ。

 輪っか状ではないドーナツを見て思いたったのか「あれ持ってきて、あれだよ、あーれ。さすやつ。」と言い、持っていったお箸でお団子のように器用にドーナツをさして食べていた。

 キッチンにいる間、不器用に作業する息子に何度も手を出したくなりながら、その気持ちを押し込め...押し込め...押し込め...、すぐそこまで出かけた「ママがやるね」を押し留め、見守った。ドーナツを作ることよりも大変だ。ドーナツと言っていいのかというほど簡単なドーナツを作っただけだけれど、息子の成長を感じるには十分な時間だった。

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