[感想]世界を魅了したインド映画「RRR」〜作品の魅力とヒット要因を探る〜

RRR関連の有料講座を受講したので感想を記録しておきます。
・タイトル 世界を魅了したインド映画『RRR』~作品の魅力とヒット要因を探る
・開催日 2023/6/25(日)※後日アーカイブ動画にて受講
・講師 松岡環先生
・主催 朝日カルチャーセンター名古屋
・受講料 一般なので3300円+設備費165円
・URL https://www.asahiculture.jp/course/nagoya/160487c7-bce8-9a41-9c00-6433833a3723

★総評


松岡先生の上品な語り口、インド映画における長年のご貢献には敬意を払いつつ、果たして受講者の大部分であるRRRのコアファンのニーズと合っていたのかは大いに疑問を持った。
おそらく松岡先生は数回しかご覧になっていないと思われた。コアファンは体感だが劇場で30~50回が平均で、配信開始からはもはや回数の問題ではなくなっているレベルで見ていると思う。(私は本日時点で劇場17回、自分が決して多い方でないのはわかっている。)
回数の問題ではないし、インド神話の研究者でもないので表現の細かい部分について質問しても筋違いであるとは思ったが、コアファンにとっては知っていることが多く、少し踏み込んだ質問をするとわからない、と言われてしまうのは有料の講座としては残念な印象をもった。映画の内容紹介とムービースターを見れば分かるようなプロモーション履歴をポイントにするならどうしてもそうなってしまうので、例えば、興行の推移やインド映画の現状または歴史においてどのような位置づけができるかという点をポイントにすれば松岡先生の叡智に触れることができて満足度がより高まったのではないかと思う。
ただ、この認知のずれの原因はおそらくファンダムの集合知に触れているかどうかの違いなので、松岡先生ご自身にはぴんとこないのかもしれない。集合知とはほぼTwitterで有力なアカウントをいくつフォローしているか、ということであると思う。まとまった資料・履歴としては何もないに等しくても、ファンダムの大多数がアンナとバイヤの違いを知っており、Dostiでツーリングをしたのも羊を追いかけたのもヤムナー川であることを知っている。もう少しちゃんと言えば、ファンダムの情報リテラシーが高く、貪欲で、今まで松岡先生が講座を開かなければ知りようもなかったことを勝手に知っているファンが、更に知識を深めようと集まったところに、初歩的な講座内容であったため、ニーズとずれが生じたように思われる。
結論としては、もっとコアなことをお聞きしたく、ぜひまた開催いただき、参加者置いてけぼりくらいの深い話をお伺いしたいものだと思う。次の機会に期待する。

★細かいこと


※講義内容について秘匿が必要との指示は見受けられなかったため、引用の範囲でそのまま記載した部分もある。誤認があればご指摘いただきたい。
・権利表記について言及があったが、DVVのマルシー表記はブエノスアイレス条約より前の書き方であまりに古めかしいし間違っていると思う。少なくとも「ボギー大佐」の楽曲を保有しているわけがないのでAllRightsReservedは入れられないはず。慣習であまり検討されずに決まっているのではないかと思うので、今後の改善に期待する。(とか言ってたら宝塚の告知が出て、そこについてたマルシーは「"RRR" Directed by S.S.Rajamouli and all related character and elements」という注釈がついていた。これはしっくりくるけどじゃあ他のマルシーは何なの。)
・カルカッタからデリーに首都移転して間もないタイミングであるとは知らなかった。
・コメディアンを使うのはテルグ映画の伝統。
・世俗主義 どんな宗教でもかまわない国。ラージャマウリ監督は注意深く世俗主義の観点を入れ込んでいる。
・メインタイトルまで39分 インド映画では割とあるよ!そうだね!サーホーとかね!
・タラブックスのタラは星!タラクさん!
・石投男さんがシーク教徒であることを世俗主義とからめて解説されていたが、ラーイがシーク教徒だからという要素も大きいのではないかと思う。逆にシーク教徒であることを必然的にするために現実で捕まったのがもっと後のはずのラーイを捕まえたという筋であればうなずける。それにアムリットサルの虐殺直後のタイミングであるということもあるし、世俗主義だけを背景とするのは短絡的に思われた。
・アンチモン(アイライン)はスースーするらしい ターヴィーズ(ペンダント)は手につけるのが一般的らしい
・ビームとジェニーの間に恋愛感情があるかどうかは非常に議論の分かれるところなので安易に「一目惚れ」というワードは使ってほしくなかった。私も初見では一目ぼれだと思ったけど、見れば見るほど違う気がしてきている。
・独立旗としても実は「もどき」 少しアレンジしてある。まじか。
・ラッチュが逃げようとしていたという根拠は?ビーム達を追求させないためにラーマを害することが目的で、自分の逃亡まで狙っていたことは根拠がないのではないかと思う。監禁場所が自宅であるという根拠もないのでは…?ご自身の印象でお話されるのは自由だが、何しろファンダムの鑑賞回数がとんでもないことになっているので、根拠があるかどうかは確認されたほうがいいのではないかと思った。
・ゴーンド族にとって動物は友達というのは違うと思った。森の人で動物を家族、人間と同等の存在として尊重しているのは間違いないだろうけど、だからこそ全くなついていない現実も分かっていて、襲撃時は火でけしかけていた。言葉のあやというレベルかもしれないが。
・アヒンサーへの転向か??と思ったお気持ちは分かる。私も初見時はそう思った。しかしコムラム・ビームドは全くアヒンサーではない。めっちゃ殴る蹴るしている。あの歌を届ける=アヒンサー、ガーンディー主義というのは浅いように思われた。
・ヴェンカテスワルルババイを「仲間」と表現されていたのが気にかかった。階層シーンでも「叔父?」とハテナがついていたので、ヴェンカテスワルルババイを認識されていない。さすがに主要キャラクターなのでそうではないと思いたいが、認識されていないのであればいかがなものかと思った。
・ナートゥのリズムについて毒蛇のところで言及せず牢獄のシーンだけで言及するのは反復の美の解説として大きな抜けがあると思う。ことによると毒蛇のシーンがナートゥのリズムだとお気づきになっていないのでは…?
・山田先生と松岡先生の対談は有料でストリーミングしてください まじでおねがいします(台本もなしでいいと思います!)
・ラーマンビーマンで大歓声というところ、「あの格好」で出てくるのもそりゃあかっこいいけれども、そもそもシーンとしてアガるのもでかいと思いますね!!!!!演出の勝利。そうでなければそれこそ日本でウケない。
・円盤解説に沖田瑞穂先生参戦!!!!!まーーってましたーーーーーー!!!!! というか次の講座は山田松岡沖田天竺奇譚各先生の4人会がいいのではないでしょうか!!!!!ゲストは200回鑑賞のこずえさんをお招きできないものか なにその講座 プロモーターやりたい
・今までインドの劇場版で吹替はあまり歓迎されなかったが、マッキーから流れがかわり、バーフバリで一般化した。ラージャマウリなら見に行こうという期待感
・RRRやきごて!!!売って!!!
・DVVのジャヤジャヤの質問でどんな映像かちっともぴんと来ていらっしゃらなかったのが悲しかった。試写だけだとはいっていない可能性はあり…試写しかご覧になっていないということはないと思うけれども。
・ヒットの要因として日本独自というものは思い当たらないと仰っていたが、世界共通でうけた面と日本人だからうけた面と両方あると思われる。これについては自分で書く!
・パーティの時間…これはファンダムでは有名な謎なので、やはりファンダムとの距離感が気になる。(ジェニーが帰宅時に門番のトーマスにGood morningと言っているので、はてパーティは何時からやっていたのだ?という…)
・手を重ねる誓いのシーンと、火の馬車~ビームが車輪を受けるシーンについて何度もわからないと仰っていたのが残念だった。誓いのシーンはインド映画でよく出てくるジェスチャーであり、ジェスチャー自体をご存じないはずはない(最終的にはジェスチャー自体は理解されていた)が、映画のどこでやっていたかが分からなかったのだと思う。火の馬車はオリエントの展示の方が分からないということだったが、クリシュナの馬車だとアタリをつけてなにがしか解説をいただきたかったところ。車輪のモチーフについてはそれこそTwitterで素晴らしい解説を読んだ覚えがあるのだけど、見つけられていない…
・9つのラサは経済発展以降は入れなくてもいいという不文律ができた
・昔は検閲 今は検定 検定証は必ず最初に写さなければいけない
・愛国心高揚のために作られた映画ではないと断言してくださったのは良かった。全く同意見。
・劇場にかかる字幕の映画がないわけではないが、英語字幕で、どれだけ多くの人が読めるのかというかんじ。たしかに~

★むすび


繰り返すが、松岡先生を批判したいわけではなく、もっとディープな内容をお伺いしたかった。というのと沿う現状のRRRファンダムの課題として、RRRより前からいるファンがイベントを打つ場合、特に有料の場合、現状のファンダムの空気感をいかに読むかが重要ではないかと思う。ファンダムは生き物なので、まじめに相対しようとすれば注意深く観察する必要があるし、ファンダムの一員という感覚・共通意識がなければうまくいかない部分も出てくるように思う。(当たり前のことだが、上から目線の運営では決して20億を支えたファンの多くにはリーチできない。)もしかしたら日本で一番うまくリーチしているのはオタクの扱いに長けたムービックさんかもしれないけど、やはりインド文化という面ではひと味足りない気はしているので、まだまだまじめにリーチしてビジネスにする余地はあると思っている。と言いつつ自分でやる度胸がなくて申し訳ない。
とかいってたら宝塚きたよ!!!!!!!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?